講演情報

[27-O-M001-03]施設入所中に発生した悪性腫瘍について入所中の高齢者に発生した悪性腫瘍の治療と予後

北海道 小池 能宣 (介護老人保健施設けあ・ばんけい)
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【目的】介護老人保健施設(以下老健)に入所中の高齢者に悪性腫瘍が発生すると、認知症や合併疾患のために治療法の選択に悩むことが多い。今回、当施設の入所者に発症した悪性腫瘍12例について検討し、最適の治療方針とは何かを見出すことを目的とした。【対象と方法】2017年6月~2025年5月の8年間に、当施設入所中に発症した悪性腫瘍12例について、年齢、性別、主訴、診断・治療と経過、予後などについて検討した。【結果】12例の年齢は80歳代3例、90歳代9例で、性別は男性7例・女性5例であった。疾患は消化器系4例(胃癌2、直腸癌1、胆管癌1)、泌尿器系3例(膀胱癌2、前立腺癌1)、呼吸器系2例(肺癌1、気管支癌1)、乳癌1例、子宮癌1例、皮膚癌1例であった。治療は何らかの治療を行ったものが4例(根治術2、姑息的治療2)、無治療が8例で、予後は腫瘍関連死3例、他病死7例(老衰6、脳梗塞1)、生存中2例であった。【症例】症例1:90歳、男性。主訴:貧血。進行胃癌の診断で幽門側胃切除術を行うも、術後の体力低下と認知症の進行から4か月後に肺炎で死亡。症例2:89歳、男性。主訴:血便。精査で進行直腸癌の診断。家族の希望で無治療のまま経過観察し2年後に老衰で死亡。症例3:91歳、女性。主訴:右乳腺腫瘍。乳癌の診断で右単純乳房切除術を施行。術後経過は良好であったが、2年後に脳梗塞で死亡。症例4:92歳、男性。腹部大動脈瘤術後follow upの超音波で膀胱癌を発見。無治療で3年後に老衰で死亡。症例5:97歳、女性。主訴:血性帯下。精査で子宮頸癌の診断。無治療で2年に老衰で死亡。症例6:89歳、女性。主訴:経口摂取困難。胃瘻造設前の内視鏡検査で胃癌の診断。胃瘻造設が不能で、経口摂取できないまま4か月後に肺炎で死亡。症例7:96歳、男性。主訴:突然の呼吸不全。呼吸器内科に緊急搬送し、気管支癌の診断。治療に至らず10日後に死亡。症例8:95歳、男性。主訴:排尿障害。精査で前立腺癌。ホルモン療法で一時排尿可能となったが、しだいに排尿困難が進み1年6カ月後に膀胱瘻を造設。発症の2年後に老衰で死亡。症例9:94歳、女性。主訴:左手背の皮膚潰瘍。精査で有棘細胞癌。家族が手術を希望されず軟膏処置のみで経過観察。皮膚癌はしだいに増大し3年後に強い疼痛が出現。疼痛管理のために病院に転院するも3か月後に老衰で死亡。症例10:95歳、男性。主訴:黄疸。精査で肝門部胆管癌の診断。胆管ステントを挿入の上、現在まで4か月経過観察中。症例11:82歳、男性。健診で肺の異常陰影を指摘され、精査で両側肺癌の診断。無治療で1年6カ月生存中。症例12:94歳、女性。主訴:血尿。精査で膀胱癌・左尿管癌の診断。無治療のまま3か月後に老衰で死亡。   【考案】症例1(胃癌)症例6(胃癌)、症例7(気管支癌)は腫瘍関連死と考えられ、とくに症例1は術後早期に衰弱して肺炎で死亡したことから高齢者に対する侵襲の大きい手術の可否について考えさせられた。症例3(乳癌)は侵襲の少ない手術が奏功した後に他病死し、症例8(前立腺癌)は一時ホルモン療法が奏功した。症例10(肝門部胆管癌)はステントにより減黄され小康を保っているが予後は不良と思われる。症例2(直腸癌)、症例4(膀胱癌)、症例5(子宮癌)、症例9(皮膚癌)、症例11(肺癌)、症例12(膀胱癌・左尿管癌)は、本人またはご家族が治療を希望されず経過観察のみでほぼ寿命を全うされたか生存中である。【結果】老健の入所者に発生した悪性腫瘍については、腫瘍の種類と進行度、認知症の程度、合併疾患により治療法の選択に迷うことが多いが、認知症高齢者においてはできるだけ低侵襲の治療選択をすべきで、無治療の経過観察も生命予後に有効であった。