講演情報

[27-O-M001-05]介護老人保健施設入所者の摂食嚥下機能評価について

群馬県 戸谷 麻衣子, 矢嶋 美恵子, 高玉 真光 (群馬老人保健センター陽光苑)
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<はじめに>
高齢者において摂食嚥下機能は栄養状態の改善や口腔機能の維持、フレイル予防などQOLの向上・維持のために重要な機能である。摂食嚥下および口腔状況の評価方法については様々な方法があるが、施設における評価の際には多職種での評価が必要となるため簡便で正確な評価が可能な方法が重要となる。当施設では新たな取り組みとして、利用者の口腔衛生状態を含めた摂食嚥下機能や栄養状態などを複合的に評価するため、KTバランスチャートによる評価を取り入れている。KTバランスチャートは、4つの視点からなる13項目の項目を5段階で評価することにより摂食嚥下障害について複合的に評価し、多職種で情報共有をすることができる評価方法であり、特別な道具を必要としない簡便な方法である。今回我々は介護老人保健施設の一般棟と認知症専門棟の入所者を対象として第一回目の評価を行い、その結果から口腔衛生状態と嚥下機能の項目を中心に検討を行ったので報告する。
<目的>
KTバランスチャートを用い、口腔衛生状態および歯科治療の必要性と嚥下機能の評価結果について検討することで、介護老人保健施設の一般棟と認知症専門棟における入所者の口腔状況と摂食嚥下機能についての傾向を明らかにし、今後の対応や多職種連携に役立つデータを得ることを目的とした。
<対象と方法>
介護老人保健施設群馬老人保健センター陽光苑の入所者(一般棟41名、認知症専門棟38名)を対象とし、令和7年4月1日~6月30日までの期間にKTバランスチャートの13項目について調査した。調査を行った職種は歯科医師、看護師、言語聴覚士、介護士、栄養士で各項目を専門分野に応じて分担して行った。評価には特定非営利法人口から食べる幸せを守る会のKTバランスチャートを用いた。
<結果>
対象者の性別内訳は一般棟では男性10名、女性31名、認知症専門棟では男性10名女性28名だった。
KTバランスチャートの評価項目4口腔状態については一般棟では評価1(口腔衛生が著しく不良で、歯や義歯に歯科治療が必要)1名(2.4%)、評価2(口腔衛生が不良で、歯や義歯に歯科治療が必要)8名(19.5%)、評価3(口腔衛生は改善しているが、歯や義歯の治療は必要)3名(7.3%)、評価4(口腔衛生は良好だが、歯や義歯の治療は必要)7名(17.1%)、評価5(口腔衛生は良好で、歯や義歯の治療は必要としない)22名(53.7%)で評価値の中央値は5であった。認知症専門棟では評価1が1名(2.6%)、評価2が17名(44.7%)、評価3が2名(5.3%)、評価4が1名(2.6%)、評価5が17名(44.7%)で評価値の中央値は3であった。
次に、評価項目7嚥下については、一般棟では評価1(嚥下できない、頻回のむせ、呼吸促拍、重度の誤嚥)2名(4.9%)、評価2(嚥下は可能だが、むせや咽頭残留、呼吸変化を伴う)1名(2.4%)、評価3(嚥下は可能だが、むせ・咽頭残留・複数回嚥下・湿性嗄声のいずれかを伴うが、呼吸変化はなし)4名(9.8%)、評価4(嚥下可能で、むせはない、咽頭残留はあるかもしれないが、処理可能、良好な呼吸)7名(17.1%)、評価5(嚥下可能で、むせ・咽頭残留はなく、良好な呼吸)27名(65.9%)、評価値の中央値は5であった。認知症専門棟では評価1が1名(2.6%)、評価2が1名(2.6%)、評価3が2名(5.3%)、評価4が10名(26.3%)、評価5が24名(63.2%)で評価値の中央値5であった。
口腔と嚥下の値の関連については、一般棟では口腔衛生状態の評価値が良好なほど嚥下機能の評価値も良好な傾向があった。認知症専門棟では嚥下の評価値が5であっても口腔状態の評価値は2と口腔状態について低評価値の者が12名という結果となった。
<考察>
口腔状態の項目について、認知症専門棟では評価2(口腔衛生が不良で、歯や義歯に歯科治療が必要)が17名(44.7%)と一般棟の8名(19.5%)を上回り、同項目の中央値も、認知症専門棟が3一般棟は5と口腔状態の評価値について低値であり、一般棟と比較して、認知症専門棟の入所者の方が、口腔衛生状態が不良で歯科治療を要する者の割合が多いことが明らかとなった。
一方で嚥下の項目については明らかな差はなく評価の中央値も両群で同値であった。これらより今回の結果からは、嚥下機能については一般棟と認知症専門棟では傾向に大きな差は認めなかった。
また口腔状態の評価値と嚥下の評価値の関連については、認知症専門棟の入所者において、嚥下の機能が良好な場合も口腔状態の評価が不良な事例を多数認め、摂食嚥下機能が良好な利用者であっても口腔内の状態には注意を要する場合があると考えられた。
今回の結果から、介護老人保健施設の入所者の口腔状況が明らかとなり、特に認知症専門棟の入所者では摂食嚥下障害への対応に加え口腔衛生状態や歯科受診の必要性について考慮する必要があると推察された。また、KTバランスチャートを用いることで多方面からの摂食嚥下機能の評価が可能であると思われた。