講演情報

[27-O-M001-06]公立超強化型老健における入所者像の経年変化入所者の高齢化・重度化を示す7年間の多面的分析

長野県 城下 智, 藤田 千恵, 山本 悠希, 上條 拓也, 樋沢 昌美, 渡邊 知幸 (依田窪老人保健施設いこい)
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【背景】介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目指す要介護高齢者に対して医療・看護・介護・リハビリテーションを一体的に提供する中間施設として制度設計され、地域包括ケアシステムの中核としての機能が期待されている。中でも「超強化型老健」は、医師・看護職・リハビリ職の手厚い配置と、在宅復帰支援の実績により定義され、医療・介護両面での対応力が重視される類型である。超高齢化・人口減少が進行する地方部においては、地域住民の最終的な療養先としての役割も担いつつあり、現場では高度化・重度化した入所者への対応が求められている。本研究では、中山間地域に立地し、広域行政組合が運営する公立の超強化型老健(入所定員70床)における入所者の実態について、2018年から2024年の7年間にわたる経年変化を、年齢・要介護度・自立度・認知症自立度の4側面から分析し、その特徴と傾向を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は2018年1月から2024年12月にかけて新規に入所した全利用者1,367名。入所時の年齢、要介護度、自立度(厚労省ADL区分に準拠:支援-C2をスコア0-8に換算)、認知症自立度(0-IVをスコア0-6に換算)を取得し、各年ごとの分布を分析した。年齢については中央値および90歳以上の構成比を算出し、年次間の比較にはマンホイットニーU検定とカイ二乗検定を用いた。介護度、自立度、認知症自立度は、スコア別構成割合を年次変化についてカイ二乗検定で統計解析を行った。【結果】年齢の中央値は2018-2021年が90歳、2022-2024年は91歳であり、2018年から2024年にかけて有意に上昇しており(p=0.0012)、90歳以上の入所者の割合は2018年:51.8%から2024年:65.2%へ有意に増加していた(p=0.0138)。要介護度では、要介護4・5の重度者が2018年:33.8%から2024年:50.9%へと増加し、年を追うごとに重度者の構成比が高まっていた(p<0.001)。自立度では、スコア≦4(A2以下)が2018年:62.6%から2024年:50.2%へ減少し、逆にスコア5以上(B1-C2)は2018年:37.4%から2024年:49.8%へと増加していた。平均スコアも4.04から4.46へと上昇し、自立度の全体的な低下が示唆された(p<0.001)。認知症自立度については、スコア3(IIb)以下の軽度者が2018年:49.0%から2024年:77.7%へと有意に増加していた。さらに、スコア6(IV)も0.7%から9.1%へと上昇しており、認知症に関しては“軽度化と重度化の二極化”傾向が認められた(p<0.001)。【考察】本施設においては、年齢の高齢化、身体機能の重度化、認知症の二極化という明確なトレンドが7年間で進行しており、特に90歳以上の割合の増加と重度要介護者の増加は、施設機能の再定義を迫る変化といえる。要介護4・5が半数を超える状況では、従来の“中間施設”という役割を超えて、ほぼ医療型施設に近い水準のケアが求められる。一方で、認知症軽度者の増加は在宅支援の不全を反映している可能性があり、本人・家族支援体制や地域包括支援のあり方を再検討する必要がある。また、分析対象は延べ1,367名にのぼり、地域における老健の役割と限界、さらには今後の地域医療・介護政策のあり方に対する重要な示唆を提供するものである。超高齢社会において、超強化型老健は単なる中継地点ではなく、地域包括ケアの“最終拠点”としての位置づけが強まりつつある。