講演情報

[27-O-M001-07]“誤薬”を減らして安心安全な老健運営を!~日本老年薬学会の提言を受けて~

愛知県 佐藤 友香 (老人保健施設ジョイステイ)
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【はじめに】
老人保健施設ジョイステイでは、2018年度の介護報酬改定を機に「5ヶ年計画」を策定し、戦略的に老健の役割強化を推進してきた。2018年4月の「加算型」が、同年6月には「強化型」となり、2019年10月には「超強化型」を獲得することができた。
在宅復帰を目指す活動が活性化する一方、誤薬に関わるインシデント・アクシデントは、毎年一定数発生しており撲滅できていない。今回、日本老年薬学会が2024年5月に発表した「高齢者施設の服薬簡素化提言(以下『提言』という)を受け、施設内の運用面・職場体制等の多方面から検討することで、提言の導入を決定した。その結果として、誤薬のインシデント・アクシデント件数に変化はなかったが、職員の工数低減及び利用者さまの不満低減等が図られたため、その内容を報告する。

【高齢者施設の服薬簡素化提言】
■提言1 服薬回数を減らすことには多くのメリットがある
服薬回数を減らすと、誤薬リスクの低下と医療安全の向上に加えて、入所者/入居者にとっては服薬負担の軽減と服薬アドヒアランスの向上、施設職員にとっては与薬負担の軽減と勤務の平準化が期待できる。
■提言2 服薬は昼1回に:昼にまとめられる場合は積極的に検討する
施設職員の多い昼の時間帯に服薬を集約することで、さらなるメリットが期待できる。ただし、昼服用に適さない薬剤もあり、また療養場所が変わったときには再度の見直しが必要になるなど制限もある。

【現状把握】
(1)誤薬件数の推移(アクシデント・インシデント)
 ・2019年度(17件)・2020年度(35件)・2021年度(15件)・2022年度(16件)・2023年度(12件)であった。
 ・毎年15件前後の誤薬件数が確認された。なお2020年度の件数が多い点は、新型コロナの施設内クラスターが初めて発生し、現場混乱時に発生したものである。
(2)服薬している利用者数(これ以降「90床のうち、平均稼働80名」とした場合)
 ・朝(80名)・昼(30名)・夕(70名)
(3)服薬に係る職員の工数/1日当
 ・朝(50分)・昼(10分)・夕(30分)
 ※朝・夕は、看護師2名が3フロアを順番に担当。昼は、看護師3名がそれぞれ1つのフロアを同時間帯に担当。
(4)服薬業務のながれ
1)フロア担当看護師が、配薬車から薬を取り出し、配薬BOXへ利用者さま毎にセット
2)看護師2名(1名は介護士の場合あり)で、利用者さまの氏名・薬の用法・錠数と処方せんを確認
3)配薬時間には、利用者さまの氏名を確認後、用法を確認
4)利用者さまの手のひらに薬を乗せ(又は口腔内に入れ)て、利用者さまの服薬を確認

【取組み内容】
(1)施設内の合意形成
 ・提言内容について、施設内の医師・看護師を始め多職種に説明し、施設全体として提言内容に沿った取り組みを行うことを確認
 ・また具体的な取り組み内容・確認方法等も作成した上で、全職員で合意
(2)服薬の減量
 ・医師には改めて(減薬の目線で)処方内容を確認いただく
 ・他方、昨年度に施設内で策定した下剤の使用基準に基づき、下剤の使用状況を確認
 ・上記2点から該当する利用者さまの減薬を実施
(3)服薬を昼へ集約
 ・医師及び薬剤師とも連携し、朝と夕の服薬を昼に集約できるか否かを検討
 ・上記から該当する利用者さまについて、服薬を昼に集約
  (同一薬剤の1日3回の服薬や、昼以外が推奨される服薬は、昼への集約は行わない)
(4)参考:服薬業務のながれ
 ・今回の活動中に業務のながれは変更していない

【効果】
(1)誤薬の件数(対策実施後の2024年8月以降)
 ・2024年8月~2025年6月までの月平均の件数:1.0件(対策前:1.2件)
 ・件数自体の低減効果は確認されなかった。要因として、2024年6月から処方方法を協力医療機関の薬局から、調剤薬局への委託へ変更したことが想定されている。現在は、変更後1年以上経過しているため、今後誤薬件数を改めて確認していく予定である。
(2)服薬の減量
 ・80名中10名が減量
 ・10名の平均値として、1名当り1~2種類(及び1~2錠)の減量
(3)服薬を昼へ集約
 ・80名中43名が昼に集約
 ・朝(80名→50名)・昼(30名→73名)・夕(70名→40名)
(4)職員の工数
 ・40分/日の低減
 ・朝(50分→15分)・昼(10分→20分)・夕(30分→15分)
(5)その他の効果
1)服薬時間の短縮により、利用者さまの待ち時間が短縮され、「薬はまだなの」等の不満意見が解消(縮小)
2)同、服薬を待てず、口腔ケア等に動く利用者さまに対する服薬の無駄(人を探して服薬)が解消
3)同、食後の口腔ケア時間が早まり、介護士業務がスムーズに終了
4)主観的であるが、看護師の精神的な負担感が減少

【考察・所感】
今回、「高齢者施設の服薬簡素化提言」の発表という変化点を逃さず捉え、施設全体として提言内容を導入した。その結果、誤薬件数の低減は確認されなかったものの、利用者さまの減薬・職員の工数低減及び複数の副次効果を確認できた。
看護師として服薬業務は精神的な負担感が大きく、特に職員数の少ない朝・夕では、その負担感は増大していた。今回、利用者さまの服薬を職員数の多い昼に集約できたことは、看護師業務全般の質の向上に寄与できたと考える。更に看護師業務に余裕ができたことで、介護士業務の支援も可能となった。この体制によって、多職種が今まで以上に協力することが実現可能となり、施設全体のケアの質向上に寄与できたと考えている。
今後も「支援します!その人らしい生活と家族の笑顔」というジョイステイの基本理念を実現するために、医療・介護の最新情報を収集するアンテナを高く張り、多職種と協働していきたい。