講演情報
[27-O-MB02-05]人生会議でアセスメント~ターミナルケアのニーズをキャッチ~
大阪府 ○山本 一哉 (松原徳洲苑)
【はじめに】当施設では以前からターミナルケアを提供している。ターミナルケア開始の為の状態説明(以下IC)を施設医師が行い、当施設でのターミナルケアを希望されるご本人やご家族の意向に沿ったケアを提供するのが当施設でのターミナルケア開始までの手続きとなる。対象となるご利用者の日々変化する状態を看護師からご家族に報告しているため、ICの段階で積極的な延命治療を希望されるご本人やご家族は多くはない。しかし、延命治療を選択しないという罪悪感に責められるご家族や、状況を受け入れられずどうすればいいのか結論を出せないままご本人が最期を迎えられ、ご家族として「何もしてあげられなかった」という終末を過ごされた事例も存在した。そこで、近い将来医師から終末期についてのICがあると想定されるご利用者家族に人生会議をケアマネジャーが行うという取り組みを当施設の「看取りの介護委員会」の協力を得て試みたので報告する。人生会議を活用したのは、終末期に近いご利用者とそのご家族のニーズを抽出するには既存のアセスメントツールでは不十分であり、人生会議の記録が終末期のニーズを反映するのに適していると考えたからである。【目的】ご利用者の状態変化からターミナルケア開始までにご家族様に方向性の検討と心の準備をしていただく時間を作り病状説明の際の心の痛みを軽減できる援助を行う。また、人生会議の記録をご利用者及びご家族とともに作成することで、具体的な終末期のニーズをケアプランに反映できるかを検証し、実用化することを目的とした。【方法】日々の申し送りから近い将来ターミナルケアに向けた病状説明が想定されるご利用者様家族に面談を実施し、小規模な人生会議を実施した。【経過】・事例1:A様 享年87歳男性 食事摂取量の激減から改善が見られず、老衰と全身衰弱による終末期にあると施設医師が判断したご利用者様。 施設医師からご家族へ病状説明を行い、当施設での看取りを希望されるか胃瘻造設等の治療を受けられ延命を望まれるかをご家族に判断していただくが、ご長男様は看取りを希望され、ご長女様は胃瘻造設や中心静脈栄養等の可能な限りの治療を希望されており、当日は結論に至らなかった。お元気だったころにご本人様は胃瘻造設を拒否されている。 4日後、ご家族様と再度面談を行い、ご長女様も看取りについて気持ちを定めつつあるがどうしても思い切りがつかない状態である。その間にもご本人様は衰弱が進んでいた。 IC1週間後、施設医師とご家族様の相談の結果、胃瘻造設が可能かどうか病院受診をすることとなる。ご本人は受診さえも拒否されていたがご家族の要望にて当日受診となる。 診察の結果、胃瘻造設の対象ではないとの診断で施設に戻られてからご本人の意向もあり、ご長女様もようやくターミナルケアを受け入れるに至ったが、受診の為の移動や検査でご本人様への身体的負担は大きかった。同日ターミナルケアのケアプランを作成しご家族に説明の後ケアの開始となるが、その翌日に永眠される。ターミナルケア開始後1日でのご逝去のため、ご家族はゆっくりと最期の時間をご本人様と過ごしていただくことができなかった。ご家族は判断に迷いすぎたことを後悔されており、施設としてもかける言葉が見つからなかった。・事例2:B様 89歳男性 脳幹梗塞を発症後にご入所された当初から、食事摂取量にムラがあり全身状態は芳しくなかった。 食事においては摂食後の嘔吐や意識消失等が見られたり順調に喫食されたりと状態変化を繰り返されていた。施設医師と看護職員を軸としたカンファレンスにおいてご家族へ病状説明と療養の方針の確認を行うため来苑いただく予定となる。ICの約3週間前にご長男様にお越しいただき、小康状態のタイミングで小規模な人生会議を開催した。ご長男様は迷っておられたが、人生会議のパンフレットを用いてご本人様の意向やご家族の気持ちを整理することで、ご本人様が元気だった頃に終末期は何もしないでほしいと希望していたことを話してくださり、ご長男様も「父の知っている人たちに囲まれて終末期を送るのは不安がなくて良い」と今後の療養の望むあり方を話していただけた。その結果施設医師の病状説明においては明確に方針を話すことができ、ご家族様の心の痛みも最小限でターミナルケアを始めることができた。【結果】人生会議を早期に行うことにより、ターミナルケア期をご本人にどう過ごしてもらいたいか、どう関わりたいかをご家族が時間をかけて考えることができるようになり、病状説明時においてもターミナルケアをスムーズに受け入れられることができた。包括的自立支援プログラムでは表現しきれない終末期のニーズを把握することでケアプランがご家族やご本人に寄り添ったものとして作ることができた。【考察とまとめ】人生会議は効果があった。ご利用者とご家族の死別というライフイベントの中でもストレス指数の高い場面をご本人・ご家族とともに乗り越える援助ができる手法であり、終末期をどう生きたいかというニーズを抽出することができた。今後の課題として、「どのタイミングで人生会議を開催するという明確な基準設定」や「ターミナルケア以外を希望された場合の柔軟かつ機敏な対応」等が考えられ、今後も継続して看取りの介護委員会とケアマネジャーで取り組んでいく必要がある。
