講演情報
[27-O-O003-01]ICT機器・福祉用具の導入と転倒事故減少への取り組み
広島県 ○永里 優介 (介護老人保健施設三滝ひまわり)
1.はじめに介護老人保健施設(以下「老健施設」)における自立支援は、利用者の尊厳を守り、可能な限り自立した日常生活を取り戻すための重要な使命である。一方で、転倒・転落事故は大きな課題となっており、骨折を伴う重大事故は寝たきりや要介護度の進行を招き、早急な対策が求められる。本報告は、当施設が強化型・超強化型への移行に伴い、増加傾向にあった転倒・転落事故がICT機器、福祉用具の導入を機にどのように改善したかを報告するものである。2.背景と課題当施設では以前より、センサーマット、離床センサー、赤外線センサー等を実装してきたが、強化型・超強化型への移行により利用者の入れ替わりが増え、居室・トイレの順に転倒・転落事故が多発していた。従来からあるICT機器の限界、居室・トイレ環境を調整する為の福祉用具が不十分であったほか、職員による事故リスクの評価が経験則に偏っており、事故の予防策が場当たり的であった。また、利用者の身体・認知機能の変化を定量的に捉える手段が不足していたことも、事故の未然防止を困難にしていた。3.取り組みの概要(1)新たなICT機器・福祉用具の導入、選定新たに見守りカメラ、センサー類などのICT機器、ベストサポート手すり、ベストポジションバー、歩行器などの福祉用具を購入。新規入所時の訪問で自宅環境を把握し、自宅でも設置できるベストサポート手すり、ベストポジションバーなどの福祉用具を施設の居室・トイレに導入。転倒リスクの高い方には見守りカメラ、行動に合わせたセンサー類を導入し、夜間や居室での行動を把握できる体制を構築した。共有トイレの手すりの種類、位置を再度検討、取り付けを行い、転倒リスクの高い方に身体機能面に合わせたトイレへの誘導を行った。(2)アセスメント能力の向上と多職種連携事故後の対応にとどまらず、事故の「兆候」の段階でリスクに気づけるよう、職員研修を定期的に実施。医師・看護師・介護士・栄養士・リハビリ職で構成する多職種カンファレンスの開催し、行動パターンや身体機能、服薬状況などを共有し、アセスメントの精度を高めた。具体例として、「起居動作・ベッド横ポータブルトイレへの移乗・トイレ動作は自立、トイレ以外でベッド周囲から離れる場合は介助」といった動作ごとの区分けを行い、必要に応じてICT機器や福祉用具を適切な位置に設置した。(3)事故発生時の原因分析と統計管理事故発生時は利用者からの聞き取り、職員による転倒時の再現画像の確認、必要であれば現場検証を行い、PMシェル(問題・原因・対策)を用いた再発防止策の検討を行った。併せて、事故リスクの記録・分析が可能なほのぼのソフトを導入し、各階での事故の統計を取りまとめ、転倒ハイリスク者、転倒多発場所・時間帯を可視化、職員間で共有を行った。4.結果と評価上記の取り組みを段階的に進めた結果、2020年に197件あった転倒・転落事故が2024年度には89件に減少した。その中で重大事故は2020年度に13件あったが、2024年度には8件に減少した。また、ICT機器、福祉用具を導入後の居室での転倒・転落事故件数は導入前比で約48%減少、トイレでも40%減少し、モニタリングの効果が顕著に現れた。多職種による定例アセスメントにより、個別支援計画の質も向上し、利用者の生活全般の安全性と活動量の向上にも繋がった。5. 考察転倒・転落事故の予防には、福祉用具やICT機器といったハード面の整備だけでなく、職員のアセスメント能力、事故の統計分析といったソフト面の強化が不可欠である。当施設の取り組みは、福祉用具、ICT機器を設置することで転倒・転落事故の軽減に繋がったと思っていた。しかし、要因を詳しく調べていくと、統計分析、アセスメントから適切な福祉用具、ICT機器を選定するなど環境面を整えることで自立度の向上に繋がり、身体機能、意欲の向上といった相乗効果がみられ、結果として転倒・転落の予防に大きな成果を上げていると考える。
