講演情報
[27-O-O003-04]誤嚥・窒息発生時の対応力向上のための取り組みの評価~シミュレーション研修の有効性と課題より~
鳥取県 ○竹宮 早紀, 川田 昂, 山下 剛志, 馬野 浩次, 福谷 洋子 (介護老人保健施設 弓浜ゆうとぴあ)
【はじめに】介護老人保健施設弓浜ゆうとぴあ(以下当事業所とする)において、窒息による死亡事故が発生したことから、誤嚥・窒息のリスクアセスメントおよび予防策の実践とともに誤嚥・窒息発生時の対応力向上のための取り組みが最重要課題となった。そこで、利用者の入所当日の食事の場面で、言語聴覚士、管理栄養士、介護福祉士、介護員、リハビリセラピスト、看護師のいずれか2人以上で摂食・嚥下状況の評価を行い、食事形態の検討を行っている。また、食事時間には担当者を決めてホールで見守りラウンドを行い、摂食状況に関する問題の早期発見に努めている。誤嚥・窒息発生時の対応については、毎年BLSのOJTの際に行っているものの、実際の急変時の場面に遭遇したことのない職員が約8割を占めており、スキルに自信がなく、不安を抱く職員が多かった。そのため、シミュレーション研修を繰り返し実施し、スキルの向上を図った。本研修についてカークパトリックの4段階評価モデルに沿って評価し、シミュレーション研修の有効性と課題が明らかになったので報告する。【目的】誤嚥・窒息発生時のシミュレーション研修について、カークパトリックの4段階評価モデルに沿って評価し、研修の有効性と課題を明らかにする。【方法】対象者:当事業所職員41名(介護福祉士20名、介護員4名、看護師6名、リハビリセラピスト8名、ケアマネージャー1名、相談員2名。期間:2024年4月~2025年7月。シミュレーション研修の方法と研修評価について:※カークパトリックの4段階評価モデルとは、人材教育の効果を「反応」、「学習」、「行動」、「結果」の4段階で表すことによって、教育や研修の対象者の満足度や理解度、研修後の行動の変化や業績の向上度合いまで、総合的に評価できるものであり、今回の取り組みを本モデルに沿って評価する。1.5月:法人内の各事業所で毎年実施しているBLSシミュレーション研修の実践と評価表による評価実施。2.7月:5月の結果を振り返り、現場で即実践できるよう、シミュレーションシナリオを作成。4人が1グループとなって実践。各役割分担の明確化と救急対応の手順の詳細を示す計38項目の評価表に再構成した。評価は本研修担当の副主任による他者評価とし、項目ごとに実施できたら〇と記載した。3.9月:修正したシナリオと評価表に沿って第1回シミュレーション研修実施。4.研修に対する満足度調査実施。「学習」「反応」5. 11月:第2回シミュレーション研修実施。「学習」6.2025年1月:第3回シミュレーション研修実施。「学習」7.7月:研修開始1年経過後の受講者の実践状況と満足度についてアンケート実施。「反応」「行動」「結果」。対象は、※1年間は誤嚥・窒息に関する注意喚起や急変時対応の流れを明示したポスターやアクションカードを用いて朝礼時に唱和し、ポイントの理解と行動の意識化を図った。【結果】 カークパトリックの4段階評価モデルの1段階の反応(受講者は教育に対してどのような反応を示したか?)については、満足度調査により評価した。9月は自身の知識と実践について到達度に対する満足度を調査し、結果は65.3%であった。7月の最終アンケート結果では、5段階評価で「満足」が62.1%、「やや満足」が37.9%で両方の回答を合わせると100%であった。2段階の学習(どのような知識とスキルが身についたか?)については、研修時のチェックリストによる他者評価結果から評価した。1回目のスキル習得率は平均52.6%で、1回目は77.9%、3回目90.0%であった。3回目終了時点で習得率が低値だった項目は、ECGモニターの準備、酸素ボンベの準備、アクションカードの配布がいずれも36.6%であった。3段階の行動(受講者はどのように知識とスキルを仕事にいかしたか?)については、7月のアンケート結果から、実際に誤嚥・窒息や他の急変に遭遇した約3割の職員が、研修を思い出して、行動することができた、と回答があった。誤嚥・窒息場面の遭遇の有無にかかわらず、職員の多くが、今年もシミュレーション研修をしてほしい、と要望する声が多かった。4段階の結果(教育は組織と組織の目標にどのような効果をもたらしたか?)については、本研修開始後、1年の間に3件の誤嚥・窒息事故が発生したが、いずれも迅速に、吸引や背部叩打、ハイムリック等の処置を行い、状態が改善した。念のため病院受診した利用者もあったが、問題の指摘はなく研修の効果が確認できた。【考察】 事業所で窒息事故が発生したことから、職員は事故発生時の対応力の向上が喫緊の課題であると認識し、十分な動機付けとなっていたと考えられる。シミュレーション研修では、現場のベッドや救急カート、AEDなどの機器や物品を使用することにより、実践に即した行動がとれるため、実践に活かせる大変有効な研修である。本研修を行うことによって、いざという時に落ち着いて判断し、対応ができると考えられる。受講者からシミュレーション研修の要望が多かったことから、職員の関心が高く、実践に活かせると実感したことにより、スキルの向上に意欲的であることがわかった。未達成項目がある職員もいるため、定期的に研修を行い、習得していくことが必要である。研修開始後に誤嚥・窒息を発生した3事例はいずれも救急車を呼んでいなかった。当法人のマニュアルでは、手遅れにならないようすぐに119に連絡となっている。検査設備のない老健施設においては、その後の経過を考慮し、救急搬送することも大切である。研修後の評価を丁寧に行い、次の研修に活かすことが大切である。【結論】誤嚥・窒息発生時のシミュレーション研修は対応力向上に有効な研修であり、定期的に実施し、評価をしていくことが必要である。
