講演情報

[27-O-O003-05]老人保健施設におけるリスクマネジャーの役割ヒヤリハットの様式改善による認識の変化について

山口県 末永 由美子 (老人保健施設はくあい)
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【はじめに】
令和3年の制度改定で介護保険施設におけるリスクマネジメントの強化が義務化された当施設は令和6年1月よりリスクマネジメント委員会を設け組織化され、令和6年4月より安全対策体制加算の算定が開始となった。リスクマネジャーの任務は、1.施設内に設置されたリスク管理のための各種委員会委員長を統括し、各種リスクや施設における対応策などについて検討・提言を行う。2.リスクマネジメント委員会の委員長を務め、委員会の運営を行う。3.施設の管理者に対して、施設におけるリスクに関する提言を行う。4.その他リスク防止に関する注意・啓発・広報などを行う。年2回開催している研修内容についても、現場にいかに虐待事故、転倒事故などに関する危機管理、リスク感性を持てるスタッフを増やせられるかが課題に上がった。今回、2度の研修会開催とインシデントレポートの様式変更を行い、スタッフ間のリスクに対する認識の差や今後の課題が明確になった。
【目的】
当施設には病院が併設されており、病院の医療事故対策委員とも連携が取れる環境にある。医療従事者は身近にリスクが潜在しており、リスクに対しての認識度が高い。老健内でのリスクは身体拘束が出来ない状態での転倒、転落事故がいかに防げるかが課題に上がる。この度、ヒヤリハットの記載様式の変更により、現場に発生しているヒヤリハットの共通認識を図る事により、スタッフのリスク感性を高め転倒事故が減少する今後の展望と課題を共に考察する。
【方法】
老人保健施設内の職員に向けての勉強会の開催(入所・通所・リハビリ・支援相談部・栄養課・事務部門)全部署からの参加を呼びかける。併設の病院の医療安全委員会と連携し研修内容の助言を受ける。テーマ「インシデントレポートの必要性について活用方法について・インシデントレポート記載をすることの大切さを考える」「ヒヤリハット記載・活用の方法について・インシデントレポートは何のために書くのか?」ヒヤリハットの記載様式変更について説明し、ハインリッヒの法則・300のヒヤリハットに、29の軽微・中等度の事故(インシデント)、1の重大な事故について。スイスチーズモデル(すべての防護壁の穴が重なり、つながることで事故は起こる)を用い説明。同じ事象を各部署で記入し検討していくことが必要(リスクを埋らせない)。発生した事案を早急に検討し検討内容をスタッフに周知する。レポートを書いた事で、組織は対策を検討し情報を共有する事で守られる事を研修で伝える。
【結果】
研修会は全部署からの参加がありスタッフのリスク感性の高さを感じた。レポートについては月ごとに分析され施設内の100件を超える件数が提出されているが、研修後に様式変更を行い提出件数が3倍に増えた部署があった。これがレポートの様式変更と部署管理者・スタッフのリスク感性の高さだと評価したい。1)アドラー心理学によれば、「モチベーションとは、日本語で、「動機づけ」と訳されます。モチベーションとは、目標達成に向けて、継続的に人(自分自身や他者)を駆り立てるパワーのことです。動機づけには、「外的動機づけ」と「内的動機づけ」の2種類があります。「外的動機づけ」と「内的動機づけ」とは、アメとムチのように、他者からの制限や刺激を与えられる動機づけです。それに対し、「内的動機づけ」は、自律的で内側から湧き出てくるような動機づけのことを言います。自律的であるとき、人は本当にしたいことをしており、興味を持って没頭していると感じているのです。」
研修を行い、ヒヤリハット報告書件数が増えた部署と、変化のない部署とに分かれたが、この部署間の差は何を意味するか考える必要がある。
【考察】
インシデントレポートの様式変更や研修の結果を踏まえ、この内発的動機づけが働いた部署では、意識の改革が行われた結果、ヒヤリハット報告書の件数が伸びたと考えられる。変化のない部署に関しては、意識の改革と動機づけが今後の課題である。考察の一つとして、部署の規模に違いがみられている。少数の部署である方が、多数の部署と比べて意識づけや情報共有もスムーズである印象がある。職員数が多ければ多いほど、自分の事として捉えることが困難になり、どこか人任せとなっているのかもしれない。結果として、レポート件数の数字として変化が起きないのかもしれない。レポート件数の提出件数の増加、情報共有が必要で課題となる。当施設では部署ごとで提出件数のバラツキがみられている。勉強会以前から、記載が面倒で「書いても意味がない」などの言葉が聞かれ活用方法に課題が上がる。ヒヤリハット記載がいかに転倒事故を減らせるか具体的に科学的に分析出来ないか検討したいと考える。今後、インシデントレポートの分析を元に環境整備・ICT化への取り組が合わせて必要である。現在、他部署間の交流や課題分析が出来ていない事が今後の課題である。委員会が集まる機会が持てないか、密な連携がとれないか、と意見がでた。現状では各部署の委員会で会議を行い、月1回リスクマネジメント委員会の会議の報告を行うが、この会議前に委員会活動を行い、連携を取ることが必要となる。
【おわりに】
リスクマネジメント委員会が設置されて1年半が経過した。リスクマネジャーに課せられる役割の大きさを認識している。研修の中で、事故や不備を隠ぺいする事の不利益についても学んだ。隠ぺいでなく、公表することによって自分自身や施設を守る事になるという事実を踏まえ、リスクマネジャーとして組織に必要とされる人材であり、当施設が今後も明るく透明性を持った老人保健施設であるよう努めていきたい。