講演情報

[27-O-O003-07]パーテーション設置による個室化対策での感染予防

東京都 才田 光子, 林 良信 (介護老人保健施設ハートランド・ぐらんぱぐらんま)
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はじめに
当施設は入所者数100名の施設で、入所フロアが2フロアあり1フロア50名となっている。1フロアの間取りは、多床室16部屋(うち四人部屋7部屋、二人部屋9部屋)、個室4部屋からなっている。令和4年4月に、初めてコロナ罹患者が発生、この時から、パーテーション設置に至るまで計5回の発生があった。施設でのコロナ対策を手探りで進めていく中で、罹患者を隔離しゾーニングするということが、多くの利用者を随時居室移動させていくことにつながり、利用者と職員の罹患者数が増大することとなった。その結果、施設や職員、利用者やその家族に多大な疲労とダメージを与えることになった。この対策として実施したパーテーションの設置前後で、コロナ感染の拡大状況に明確な差が見られたので、ここに報告する。

取り組み
令和4年のコロナ感染発生から、当施設でも独自にマニュアルを作成し感染対策を周知、実行していった。しかし、感染拡大のスピードは衰えることはなかった。そのため罹患者が増えるたびに、職員の疲労とストレスは増えていった。
令和5年度に東京都の「高齢者施設等の感染対策設備推進事業」の交付を受け、令和6年2月から3月にかけて個室化のためのパーテーション設営を実施した。当初、個室以外の全部屋を個室化する予定であったが、各フロアの四人部屋のうち3部屋は扇状の形をした部屋になっており、そのため構造上間仕切りするのが困難で、扇状の四人部屋だけは個室化することができなかった。それ以外の部屋はすべて個室化できることとなり、同年4月にはパーテーションが完成した。またその年、コロナが5類に移行された。同年8月、個室化して初めてのコロナ発生となったが、それから現在に至るまで計3回のコロナ発生となっている。
当施設のコロナの経過を詳しく見るため、令和4年2月から、令和7年2月までの利用者の罹患者数、職員罹患者数、1日最大新規発症人数、発症~解除の日数、1日平均罹患者数をグラフ化してみた。

結果
感染対策推進事業の補助金交付は令和5年度が最後の補助金事業となった。その限られた期間の中で、当初予定していた全部屋の個室化は当施設特有の構造上の問題があり、かなりハードルが高いものとなった。様々検討した結果、扇状の多床室だけは間仕切りが困難との判断から、それらの部屋以外の設置となった。
設置後、介護者からは間仕切りが邪魔して、車いすやポータブルトイレがきちんと置けないなどの声が上がった。しかし、いざコロナが発生すると、パーテーションで同室者との接触が遮断できるため、介護者も慌てることなく感染対策が実施できた。個室化できなかった多床室でコロナが発生した場合、できるだけベッド回りを移動式パーテーションやカーテンなどで隔離し、対応していった。令和7年のコロナ発生の時には、看護介護いずれも、何をしなければいけないか、次は何をやるのか、この利用者に対してはどういうレイアウトや感染対策をしなければならないのか、など落ち着いて対応できていた。間仕切りで車いすやポータブルトイレが置きづらかった事も、利用者の個別性を考えて配置する事で職員が順応することができた。
グラフ化した結果、やはりパーテーションが設置後のコロナ感染罹患者数は、利用者、職員ともに減少している。直近のコロナ感染では1日の最大新規利用者数も少ないため、コロナ発生時慌てて感染グッズを用意したり、予防策を講じたりする必要もなくなっていた。

考察
施設にはベッド上でじっとしている利用者ばかりではない。感染していても徘徊される方(居室で安静にできない方)、また個人レベルにおける感染予防策の対応が困難な方(マスクを継続して着用できない方)など高齢者施設特有の感染拡大の要因がある。対応として、それぞれの利用者の性格やADLなどに配慮しながらのできる範囲の隔離となると、その分介護者の負担は増える。上記の拡大要因に対する対応は難しい。要因のもう1つは、発熱者やコロナ罹患者が出た際、隔離対応のための居室移動もかえって感染拡大の原因になった。そのため、なるべく利用者を動かさずにそのベッドで隔離して療養してもらうことが、拡大させない要件の1つであると考えた。
感染症対策設備整備推進事業は介護施設等における多床室の個室化に要する改修費支援事業で、感染が疑われる利用者同士のスペースを空間的に分離できるよう、多床室を個室化するための改修事業となっている。
今回、居室移動しないで隔離するための打開策は、支援事業を利用することで対応できていたのではないかと考察する。実際、パーテーション設置前後のコロナ履歴をグラフ化したところ、感染拡大軽減が明らかになった。
パーテーション設置前の令和5年9月、第9波の時の感染者数は利用者数63名、職員16名、1日平均罹患者数12名で過去最高値となった。その分、職員のマンパワー不足もかなりものだった。その後個室化が決定し、いざ設置工事開始となったが、設置工事に伴う準備として利用者やベッド、家具の移動など、利用者や職員にとってかなりの負担と不満がでてきていた。
しかし、個室化後、居室内もきれいになり、いざコロナが発生しても、戸をとじることで感染対策の環境が作れるようになったことは、結果的に介護者の心理的ストレスや身体的な負担の軽減になったと考察する。

終わりに
コロナ感染時の感染対策は、発生時当初と現在とで変更点は多いが、一番大事なのは標準予防策である。感染拡大防止策の、第1の方法である。しかし、高齢者施設は、認知症利用者も多数いる中、施設特有の構造もあるため、十分な拡大防止策がとれないのが現状である。その手立ての1つが今回の個室化であった。
感染対策に対する数々の課題が残る中、1つでも課題を打開できるよう努力していきたいと思う。