講演情報

[27-O-O004-03]今日もご安全にいきましょう~一丸となって介護事故防止に取り組むために~

岡山県 川崎 昌美, 岩瀬 晋作, 金藤 美香, 岡本 直子, 向川 紀子 (老人保健施設いるかの家リハビリテーションセンター)
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【目的】
2000年代以降、介護施設におけるリスクマネジメント・危機管理体制の整備と強化が社会的に強く求められるようになった。2021年以降は特に、インシデントやアクシデントの未然防止、再発防止に向けた組織的な取り組みが必須とされている。当施設においても、ヒヤリハットメモやインシデント報告を全職員で共有し、原因究明や再発防止策の検討を行う体制を構築してきた。しかし、同じような事故やヒヤリハット事例が繰り返されることがあり、職員の危機意識の温度差も課題となっていた。
こうした現状を踏まえ、リスクマネジメント・危機管理について今一度職員の理解と意識を高め、実効性のある改善活動に繋げるべく、現場職員を対象とした勉強会の実施と、その効果の可視化・課題抽出を目的にアンケート調査を実施した。職員から得られた多様な意見や改善案を現場に反映させることで、ヒヤリハットやインシデントの共有・カンファレンスを活性化し、リスクマネジメントへの職員一人ひとりの参画意識を高めることを目指している。
【方法】
従来は各部署の代表者が集まるリスクマネジメント委員会での研修・議論が中心だったが、今回の取り組みでは各部署ごとに、より現場に即した単位でのリスクマネジメント勉強会を2025年8月にユニット型職員が全員参加できるように3回実施した。また、勉強会終了後には職員全員を対象に無記名アンケートを実施し、勉強会の評価や日常業務でのリスク感受性・情報共有の課題等について自由記述式で意見を収集した。
さらに、ヒヤリハットメモの記載欄に「考えられる危険予測」を追加し、種類別に色分け、職員全員が容易に閲覧・記入できる場所へ掲示し、確認した職員はチェック欄へサインをする新たな運用も開始。朝の申し送り時にはリーダーがヒヤリハットメモを読み上げ、事故発生時のカンファレンスではICTや見守りカメラの映像を活用しながら情報を共有する体制を強化した。
【成績】
勉強会参加者19名中17名(89.5%)が「勉強会に参加し、とても良い勉強になった」と回答。「再認識することができた」「日常業務の些細な点で事故防止ができると実感した」など、危機意識の再強化に繋がったとの感想が得られた。ヒヤリハットメモの新運用については、「危険予測を書くことで今後起こりうる事態への心構えができる」「利用者の行動パターンや他の職員の視点・対応方法を知ることができる」といった前向きな意見が多数寄せられた。また、情報共有方法に関しては「より見やすい場所への掲示」「サインによる確認」「申し送り簿や朝の申し送りでの報告徹底」「事故発生時の迅速なカンファレンス開催」「ICTやラインワークスによる情報伝達強化」など、現場視点の実践的な提案が挙げられ、職員間の意識改革が進みつつあることが示されている。
ヒヤリハット・インシデント事例の掲示場所やメモの色分け、朝の読み上げ等の新たな運用も、実際の現場で定着し始め、職員間の気付き・意識の共有度が向上しインシデント発生時には見守りカメラ映像の活用により原因分析や再発防止策の討論が活発となり、職員からの改善案・注意喚起の掲示も増加した。
【考察】
危機意識やリスク感受性は、日常業務の忙しさや経験年数によって徐々に薄れていく傾向がある。今回の取り組みでは、部署単位での繰り返しの勉強会・具体的な事例検討・実践的な意見交換・アンケート調査によって、職員が「自分ごと」としてリスクマネジメントに取り組む土壌が再形成された。加えて、ヒヤリハットメモの掲示場所・フォーマット改善や、ICTの積極活用が現場の情報伝達や意思統一を大きく促進した。
インシデントやヒヤリハットを一時的な反省に終わらせず、全職員で「どのようにしたら未然防止に繋げられるか」を継続的に議論・可視化・共有する仕組みが、リスクマネジメント・危機意識につながったと考えられる。
今後は職員間の情報共有やサイン運用・ICT活用・カンファレンス定例化等をさらに推進し、現場に即したPDCAサイクルを回し続けることで、より高い安心・安全の提供に向けた継続的改善を目指す。
【結論】
今回の一連の取り組みにより、当施設ではリスクマネジメントに対する職員一人ひとりの危機意識の再強化・実践的なスキル向上が認められた。ヒヤリハットやインシデント事例の積極的な収集・可視化、朝の読み上げやカンファレンスでのICT活用等を通じて、事故防止への具体的なアクションが現場全体に根付きつつあり、今後も現場の声や職員の気付きを柔軟に取り入れながら、継続的な勉強会と改善活動を重ね、利用者様に安心・安全な環境を提供できる施設づくりを全職員一丸となって進めていく。