講演情報

[27-O-O004-05]センサー機器の取り外しに関する職員の認識調査

東京都 齊藤 露草1, 真鍋 由美子1 (1.介護老人保健施設シーダ・ウォーク, 2.社会医療法人河北医療財団 河北総合病院)
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【はじめに】
当施設では、転倒予防策の一環として各種センサー機器を使用している。センサー機器の対象者は、心身機能や日々の生活状況、ヒヤリハット・インシデント発生時のカンファレンスをもとに選定している。しかしながら、実際に業務を行う中で、センサー機器の使用継続の判断にばらつきが見られている。生活上で転倒等のインシデントが発生した際に、介護職が家族対応を担う場面が多く、心理的負担を抱える一因となっている。また、転倒への不安等から、センサー機器の使用が継続されていくことで、センサー機器の使用者が増え、結果的に複数のセンサー機器が同時に作動することに繋がり、職員の業務負担増加の一因となっている様子が見受けられる。そこで、センサー機器の取り外しに対する職員の認識について、現状把握のためのアンケート調査を行い、統一された基準を作成するための取り組みを実施したため、ここに報告する。
【目的】
1)センサー機器の取り外しに関して、職員全体の認識を調査する。
2)センサー機器の取り外しに関して、職種やフロア、経験年数ごとの認識の差を調査する。
【方法】
介護職、看護職、リハ職を対象に、センサー機器の取り外しに関する明確な判断基準の有無や、不安の有無、改善点について、選択式(一部自由記述式)のアンケートを実施した。アンケートはGoogle Formsを用いて作成し、個人が特定されることのない無記名式であることを説明したうえで回答を求めた。統計解析にはSPSS Statistics v19(IBM社製)を用い、有意水準は5%とした。分析には、職員全体、職種別、フロア別、経験年数別での認識の差を確認するために、χ2検定を用いた。
【結果】
当施設の介護、看護、リハ職に対して行ったアンケートでは、該当者66名のうち、約8割にあたる54名からの回答が得られた。
1)職員全体の認識の傾向について、「センサー機器の取り外しに関して、カンファレンスを開催するルール以外に、明確な判断基準が施設内にありますか。」という質問に対して、「いいえ」あるいは「わからない」と回答した職員の割合は、全体の8割以上であった。「センサー機器の取り外しに関して、自分の判断に不安を感じることがありますか。」という質問に対して、「非常に不安を感じる」あるいは「ある程度不安を感じる」と回答した職員の割合は、全体の9割以上であった。また、「センサー機器の取り外し後、利用者の転倒リスクが増加したと感じることがありますか。」という質問に対して、「はい」と回答した職員の割合は約2割であった。その理由として、「センサー機器の数が足りず、転倒リスクが高い利用者のセンサー機器を取り外したことで、その後至ったケースを経験したため」、「職員が訪室して確認する回数が減ったため」という意見が挙げられた。さらに、センサー機器の取り外しに関して、職員の意見や経験を自由記述式で回答する質問では、「センサー機器を使用している利用者が多すぎることで職員の負担が増加している」といった意見が複数寄せられた。
2)職種、フロア、経験年数別での差について、センサー機器の取り外しに対する著明な認識の差はみられなかった。一方、「センサー機器の取り外しに関して、明確な判断基準が必要である」と回答した人数は、看護職より介護職の方が有意に多い結果となった。
【考察】
本調査により、センサー機器の取り外しに関する明確な判断基準が存在しないことが、職員にとって身体的・心理的な負担の一因となっている可能性が示唆された。また、職種やフロア、経験年数別で認識のずれは大きくない一方で、介護職と看護職とでは、明確な基準の必要性に対する認識に差がみられた。これは、センサー機器の取り扱いの頻度や、実際に家族へ説明する機会の頻度によって、改善すべきと感じている視点に差があることを示していると考えられる。特に介護職では、現場判断を求められる場面が多く、正確かつ効率的に業務を行うことができるよう、統一的な指針を必要としていることが推察される。したがって、現場の判断を個人や特定の職種の裁量に任せるのではなく、多職種の視点を踏まえチーム全体で納得した上で、効率的に判断ができるよう、共通の運用ルールが必要である。
【まとめ】
センサー機器の取り外しに関しては、誰が・いつ・どのような基準で判断を行うかが明確でない状態が続いており、現場職員に負担をもたらしている。本調査を通じて、特に介護職における身体的・心理的な負担や、現場での判断の難しさが課題として認識された。今後は、各職種がそれぞれの立場や業務内容を理解し合いながら、現場に即した基準づくりを進めていくことが重要である。多職種が協働して基準を作成し、それを全職員が共有・活用することで、判断の一貫性が保たれ、インシデント防止や家族対応の質向上にもつながると考えられる。加えて、職員が安心してケアにあたるための心理的安全性の向上にも活かされることが期待できる。明確な判断基準の整備は、安全なケアの提供だけでなく、職場全体の働きやすさやチーム力の向上、業務効率化に繋がるものであり、今後の重要な課題として、継続的な検討と改善が求められる。
本調査の結果を踏まえ、現在当施設では、センサー機器の取り外しに関する明確な基準を作成し、試運用を行っている。今後も継続して運用を行い、インシデントの発生状況や、職員の認識の変化に関して、効果判定を行っていきたい。