講演情報
[27-O-P201-03]高齢者施設看護師に対する目標管理の導入・実施の効果
新潟県 ○小田 祐子1 (1.介護老人保健施設 千歳園, 2.介護老人保健施設 千歳園, 3.介護老人保健施設 千歳園)
【はじめに】
目標管理制度(以下目標管理)は、ドラッカーが提示した組織のマネジメント手法であり、「組織の目標と個人の目標を一致させ、個人を動機づけながら組織の力を最大限に発揮していくための手法」と定義される1)。日本では、日本医療機能評価機構が評価項目に「看護部の目標管理が行われている」を盛り込んだ影響もあり、1999年以降、自律型看護職員の育成や組織活性化のマネジメントツールとして導入する医療機関が増加した。高橋(2010)2)松下(2015)3)らの先行研究でも目標管理導入による成果や職務満足度につながる報告がされている。そこで、当園の看護部でも令和5年から目標管理を導入・実施した。
【目的】
当園の看護部が導入・実施した目標管理が、看護師にどのような効果をもたらしたか調査する。
【方法】
期間 1期目 令和5年4月から令和6年3月 2期目 令和6年4月から令和7年3月
対象 当園に勤務している看護師10名中、2年間継続して目標管理を実施した6名
方法 目標管理実施前後に、専門職としての自律性について14項目、職務満足度について11項目のアンケートを実施し、アンケートの点数の増減を調査する。
【結果】
目標管理実施内容
・1期目開始前に、看護師長が看護師全員に資料を用い、個別に目標管理を導入する目的、方法を説明した。
・施設独自の目標管理シートを作成し、看護師に記入してもらった。そのシートを用いて1期目、2期目とも6月に1回目の面談、2回目は10月、3回目は3月に実施した。面談時間は一人当たり平均20分程度であった。2期目3回目の面談時に、目標管理を経験してどうだったか聞き取りを行った。
・目標設定に不慣れな職員には、自分のやりたいこと、目指す姿を話してもらい、会話の中から本人に気が付いてもらった
・職場での役割について説明した。
・目標が達成した職員、未達成でも行動変容がみられた職員を称賛した。
・自己目標の内容は、担当利用者に関すること、部会(委員会)での自分の役割について、リスク管理などが多く、他に自己研鑽に関する内容もあった。
・前職での目標管理の経験者は6名中3名、未経験者は3名。
・1期目に個人目標を達成したのは6名中4名 2期目に達成したのは6名中3名。
アンケートの結果
(専門職としての自律性)
・看護師全体でアンケート項目14項目中12項目が実施後の点数が増加した。・個人では実施後のアンケート点数が増加したのは3名。うち未経験者は2名で2名とも他の看護師より点数の伸びが良かった。・実施前後でアンケートの点数に変化がなかったのは3名。うち2名は経験者だった。
(職務満足度)
・看護師全体でアンケート項目11項目中6項目が実施後の点数が増加した。・実施後のアンケート点数が増加したのは4名。うち未経験者は3名。・実施前後でアンケートの点数に変化がなかったのは2名。2名とも経験者だった。・個人目標の達成度合いとアンケート結果に関連は見られなかった。
聞き取りの結果
・漫然と仕事をすることが無くなった・自ら行動して目標が達成すると達成感がある。達成感があると次への意欲が出る・期待されていることやプラスの評価をもらうとやる気が出てきた・シートに記入し、文字にすることで意識して仕事ができた・自分のやりたいことをうまく文章にできなかったが、アドバイスをもらい目標が明確になった・何となく仕事をするとか、与えられた仕事をする感じではなく自ら動いて仕事をしていた・前職でもやっていたので変化はなかった・働く意欲につながった・結果的には目標を挙げることができたが、一人で考えている時は難しいと思った
【考察】
アンケート結果から、看護師全体で「専門職としての自律性」の項目が向上しており、特に未経験者でその伸びが大きかった。これは、目標管理を通じて自身の役割や目標が明確になり、能動的に業務に取り組む意識が高まったことを示唆している。「職務満足度」に関しても、看護師全体で改善が見られ、ここでも未経験者が効果を実感している傾向が見られた。「期待されていることやプラスの評価をもらうとやる気が出てきた」「日々のモチベーションを保つのに有効だった」といった声は、目標管理が職務に対するポジティブな感情を生む事に貢献したといえる。一方で、経験者の中には、実施前後でアンケート点数に変化が見られなかった職員がいた。これは、「前職でもやっていたので変化はなかった」という声のように、既に自律性や職務満足度がある程度高い水準にあり、新たな刺激が少なかったと考えられる。運用と導入は、個別の導入説明と継続的な面談が目標管理の効果を高めたと考えられる。特に、目標設定に不慣れな職員に対して、自分のやりたいこと、目指す姿を話してもらうなど個別のアドバイスが有効であった。また、目標が達成した職員、未達成でも行動変容がみられた職員を称賛したことは、達成感や次への意欲に繋がり、定期的なフィードバックと承認が、職員のモチベーション維持に寄与していると推察される。以上のことから当園で実施した目標管理は、看護師の自律性、職務満足に影響を与え、効果があったと考えられる。
【終わりに】
現在、当園では看護部の効果を受けて今年度から施設全体で目標管理に取り組み始めた。今後は、目標管理が組織全体の目標達成にどのように貢献しているかをより詳細に分析して行きたいと考える。
引用・参考文献
1)F. Drucker(1974)/野田一夫,村上恒夫監(1993)マネジメント-課題・責任・実践(上)(下)
2)高橋澄子、平井さよ子、飯島佐知子、賀沢屋貴(2010)病院看護組織での目標管理の導入による効果を明らかにする.日本看護管理学会誌、14(2).49-58
3) 松下由美子、田中彰子、吉田文子、竹中久美子、杉本君代、雨宮久子、山本寛(2015)病院看護部門における目標管理制度の取り組みの実態.山梨県立看護学部研究ジャーナルVol.1.29-35
目標管理制度(以下目標管理)は、ドラッカーが提示した組織のマネジメント手法であり、「組織の目標と個人の目標を一致させ、個人を動機づけながら組織の力を最大限に発揮していくための手法」と定義される1)。日本では、日本医療機能評価機構が評価項目に「看護部の目標管理が行われている」を盛り込んだ影響もあり、1999年以降、自律型看護職員の育成や組織活性化のマネジメントツールとして導入する医療機関が増加した。高橋(2010)2)松下(2015)3)らの先行研究でも目標管理導入による成果や職務満足度につながる報告がされている。そこで、当園の看護部でも令和5年から目標管理を導入・実施した。
【目的】
当園の看護部が導入・実施した目標管理が、看護師にどのような効果をもたらしたか調査する。
【方法】
期間 1期目 令和5年4月から令和6年3月 2期目 令和6年4月から令和7年3月
対象 当園に勤務している看護師10名中、2年間継続して目標管理を実施した6名
方法 目標管理実施前後に、専門職としての自律性について14項目、職務満足度について11項目のアンケートを実施し、アンケートの点数の増減を調査する。
【結果】
目標管理実施内容
・1期目開始前に、看護師長が看護師全員に資料を用い、個別に目標管理を導入する目的、方法を説明した。
・施設独自の目標管理シートを作成し、看護師に記入してもらった。そのシートを用いて1期目、2期目とも6月に1回目の面談、2回目は10月、3回目は3月に実施した。面談時間は一人当たり平均20分程度であった。2期目3回目の面談時に、目標管理を経験してどうだったか聞き取りを行った。
・目標設定に不慣れな職員には、自分のやりたいこと、目指す姿を話してもらい、会話の中から本人に気が付いてもらった
・職場での役割について説明した。
・目標が達成した職員、未達成でも行動変容がみられた職員を称賛した。
・自己目標の内容は、担当利用者に関すること、部会(委員会)での自分の役割について、リスク管理などが多く、他に自己研鑽に関する内容もあった。
・前職での目標管理の経験者は6名中3名、未経験者は3名。
・1期目に個人目標を達成したのは6名中4名 2期目に達成したのは6名中3名。
アンケートの結果
(専門職としての自律性)
・看護師全体でアンケート項目14項目中12項目が実施後の点数が増加した。・個人では実施後のアンケート点数が増加したのは3名。うち未経験者は2名で2名とも他の看護師より点数の伸びが良かった。・実施前後でアンケートの点数に変化がなかったのは3名。うち2名は経験者だった。
(職務満足度)
・看護師全体でアンケート項目11項目中6項目が実施後の点数が増加した。・実施後のアンケート点数が増加したのは4名。うち未経験者は3名。・実施前後でアンケートの点数に変化がなかったのは2名。2名とも経験者だった。・個人目標の達成度合いとアンケート結果に関連は見られなかった。
聞き取りの結果
・漫然と仕事をすることが無くなった・自ら行動して目標が達成すると達成感がある。達成感があると次への意欲が出る・期待されていることやプラスの評価をもらうとやる気が出てきた・シートに記入し、文字にすることで意識して仕事ができた・自分のやりたいことをうまく文章にできなかったが、アドバイスをもらい目標が明確になった・何となく仕事をするとか、与えられた仕事をする感じではなく自ら動いて仕事をしていた・前職でもやっていたので変化はなかった・働く意欲につながった・結果的には目標を挙げることができたが、一人で考えている時は難しいと思った
【考察】
アンケート結果から、看護師全体で「専門職としての自律性」の項目が向上しており、特に未経験者でその伸びが大きかった。これは、目標管理を通じて自身の役割や目標が明確になり、能動的に業務に取り組む意識が高まったことを示唆している。「職務満足度」に関しても、看護師全体で改善が見られ、ここでも未経験者が効果を実感している傾向が見られた。「期待されていることやプラスの評価をもらうとやる気が出てきた」「日々のモチベーションを保つのに有効だった」といった声は、目標管理が職務に対するポジティブな感情を生む事に貢献したといえる。一方で、経験者の中には、実施前後でアンケート点数に変化が見られなかった職員がいた。これは、「前職でもやっていたので変化はなかった」という声のように、既に自律性や職務満足度がある程度高い水準にあり、新たな刺激が少なかったと考えられる。運用と導入は、個別の導入説明と継続的な面談が目標管理の効果を高めたと考えられる。特に、目標設定に不慣れな職員に対して、自分のやりたいこと、目指す姿を話してもらうなど個別のアドバイスが有効であった。また、目標が達成した職員、未達成でも行動変容がみられた職員を称賛したことは、達成感や次への意欲に繋がり、定期的なフィードバックと承認が、職員のモチベーション維持に寄与していると推察される。以上のことから当園で実施した目標管理は、看護師の自律性、職務満足に影響を与え、効果があったと考えられる。
【終わりに】
現在、当園では看護部の効果を受けて今年度から施設全体で目標管理に取り組み始めた。今後は、目標管理が組織全体の目標達成にどのように貢献しているかをより詳細に分析して行きたいと考える。
引用・参考文献
1)F. Drucker(1974)/野田一夫,村上恒夫監(1993)マネジメント-課題・責任・実践(上)(下)
2)高橋澄子、平井さよ子、飯島佐知子、賀沢屋貴(2010)病院看護組織での目標管理の導入による効果を明らかにする.日本看護管理学会誌、14(2).49-58
3) 松下由美子、田中彰子、吉田文子、竹中久美子、杉本君代、雨宮久子、山本寛(2015)病院看護部門における目標管理制度の取り組みの実態.山梨県立看護学部研究ジャーナルVol.1.29-35
