講演情報
[27-O-P202-04]言葉の壁、心で越えた!ドキドキからワクワクへ
静岡県 ○山田 啓美, 有馬 生英 (介護老人保健施設こみに)
【はじめに】
介護人材の確保は、全国の介護施設に共通する大きな課題であり、外国人介護人材の受け入れはその有効な対策のひとつである。しかし現場では、「言葉は通じるのか」「仕事は任せられるのか」「職員の負担が増えるのではないか」といった漠然とした不安が根強く、受け入れに踏み切れない施設も少なくない。
私たちはそうした不安を払拭し、外国人介護人材が安心して働ける環境を整えるため、実践を重ねながら「育成マニュアル」を作成して支援体制を整備した。
本報告では、その準備から定着支援に至るまでの具体的な取組みを紹介する。
【入所前準備と職員意識の醸成】
受け入れの成否を左右するのは、法人全体としての受け入れ意識の有無である。そこで私たちは、“寄付”と“共感”の二つを柱として準備を進めた。
(1)寄付
まず、生活家電や日用品(冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、タオル、衣類など)をリストアップし、職員に寄付を募った。この取組みにより、職員が実習生の生活環境を自分ごととして考えるきっかけとなり、実習生への興味や関心も自然に生まれた。寄付を通じて職場全体に“迎える雰囲気”が醸成されたことを実感した。
(2)Webミーティング
採用から来日までの期間(半年~1年程度)を活かし、月1回のWebミーティングを実施した。役職者だけでなく、日頃関わる一般職員の参加を促した。
実習生には毎回、日本語の表現や介護に関する基本知識をテーマとした課題に取り組んでもらい、それに対して丁寧なフィードバックを行うことで、学びの質を高めるとともに、双方向的な関係性構築につながった。
画面越しとはいえ顔を見て話すことで、「どんな人が来るのか」という不安が「早く一緒に働きたい」という期待に変わっていった。
(3)生活マナー
文化的背景や生活マナーの違いをまとめた資料を作成し、各部署で共有した。交通ルール、ゴミ出し、寮生活のルール、宗教上の配慮点などをあらかじめ確認し、部署内の会議で話題にすることで、職員の受け入れ意識の向上にもつながった。
また、実習生に対しても来日後すぐに、生活面での基本的なマナーやルールを丁寧に説明する時間を設けた。交通マナー、近隣住民との関わり方、ゴミ出しのルールなど、日本での生活に必要な内容を具体的な事例やイラストを用いてわかりやすく伝えるよう努めた。
このような取り組みにより、実習生自身が安心して日常生活を送れるだけでなく、地域や職場においてもトラブルの未然防止につながっている。
【入所後オリエンテーション】
来日直後は、生活環境の変化に加え、言葉や文化の違いから強い不安を感じやすい。そのため、私たちは“すぐに働かせない”という方針を採り、最初の2~3週間はオリエンテーションと職場慣れに専念する期間とした。
(1)自己紹介カード
まず取り組んだのは、自己紹介カードの作成である。氏名・年齢・趣味・好きな食べ物・日本で行きたい場所など、実習生の人柄が伝わる内容を記載しフロアに掲示した。これにより、職員や利用者からの声かけが増え、自然なコミュニケーションが生まれた。
(2)フロア見学・体験実習
各フロアの見学や軽度な体験実習を通じて、「施設を知る」「利用者と接する」「雰囲気に慣れる」ことを目的にした導入期間を設けた。
実際の介助業務は段階的に進めることで、無理なく理解を深めることができ、指導側も実習生の技術レベルや得意不得意を把握する機会となった。
また実習期間中、職員は積極的に実習生に母国語で話しかけたり、簡単な挨拶などを教わる事で相互の文化理解を深める姿勢を示した。
【入社後1~3ヶ月】
入社後1~3ヶ月の期間は、実習生にとって現場での実務に徐々に慣れていく重要なステップである。この期間は、先輩職員とペアを組みながら、段階的に業務に取り組み、少しずつ自立を促すフェーズと位置づけた。
初期は、配膳・下膳、移乗や排泄介助などの基本的な業務から始め、習熟度や理解度に応じて業務内容を調整した。実習生の体格や体力、日本語理解力にも個人差があるため、業務の割り振りや指導者の配置にも柔軟性を持たせた。
【日本語学習サポートの充実】
実習生の多くは日本語能力試験(JLPT)N4相当で来日するが、業務に必要な日本語レベルは高いものが求められる。
当施設では月2回、業務後に学習時間を設け、介護テキストや現場で使う言葉を題材に日本語学習を支援し、学んだ言葉をすぐに現場で使えるよう、実践的な内容に重きを置いた。
また、次の目標としてN3合格を掲げることで、実習2号への移行や本人の自信にもつながるモチベーション維持の一助としている。
【生活指導員の配置と役割】
実習生の多くが「分かりました」「大丈夫です」と返答する場面は珍しくない。しかし、これは必ずしも内容を理解していることを意味せず、曖昧なまま進んでしまうリスクもある。
当施設では、生活指導員を1名配置し、生活面・精神面・学習面の支援を一貫して行っている。相談窓口としてだけでなく、日々の声かけや学習サポートにも関わり、「この人に相談すれば大丈夫」という安心感を築くことを重視している。小さな声を拾い、寄り添う姿勢が、定着率や職場内での信頼形成に直結している。
【おわりに】
外国人介護人材の受け入れは、「人を育てる」ことに留まらず、「私たち自身が育てられる」貴重な経験でもある。異文化に触れながら協働する中で、職員一人ひとりの価値観や対応力が磨かれ、施設全体の成長にもつながっている。
今後も当法人の理念である「寄り添う心と温かな手」を大切にしながら、外国人実習生とともに成長できる職場づくりを進めたい。
私たちの取り組みが、受け入れを迷っている施設の一歩を後押しするきっかけとなれば幸いである。
介護人材の確保は、全国の介護施設に共通する大きな課題であり、外国人介護人材の受け入れはその有効な対策のひとつである。しかし現場では、「言葉は通じるのか」「仕事は任せられるのか」「職員の負担が増えるのではないか」といった漠然とした不安が根強く、受け入れに踏み切れない施設も少なくない。
私たちはそうした不安を払拭し、外国人介護人材が安心して働ける環境を整えるため、実践を重ねながら「育成マニュアル」を作成して支援体制を整備した。
本報告では、その準備から定着支援に至るまでの具体的な取組みを紹介する。
【入所前準備と職員意識の醸成】
受け入れの成否を左右するのは、法人全体としての受け入れ意識の有無である。そこで私たちは、“寄付”と“共感”の二つを柱として準備を進めた。
(1)寄付
まず、生活家電や日用品(冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、タオル、衣類など)をリストアップし、職員に寄付を募った。この取組みにより、職員が実習生の生活環境を自分ごととして考えるきっかけとなり、実習生への興味や関心も自然に生まれた。寄付を通じて職場全体に“迎える雰囲気”が醸成されたことを実感した。
(2)Webミーティング
採用から来日までの期間(半年~1年程度)を活かし、月1回のWebミーティングを実施した。役職者だけでなく、日頃関わる一般職員の参加を促した。
実習生には毎回、日本語の表現や介護に関する基本知識をテーマとした課題に取り組んでもらい、それに対して丁寧なフィードバックを行うことで、学びの質を高めるとともに、双方向的な関係性構築につながった。
画面越しとはいえ顔を見て話すことで、「どんな人が来るのか」という不安が「早く一緒に働きたい」という期待に変わっていった。
(3)生活マナー
文化的背景や生活マナーの違いをまとめた資料を作成し、各部署で共有した。交通ルール、ゴミ出し、寮生活のルール、宗教上の配慮点などをあらかじめ確認し、部署内の会議で話題にすることで、職員の受け入れ意識の向上にもつながった。
また、実習生に対しても来日後すぐに、生活面での基本的なマナーやルールを丁寧に説明する時間を設けた。交通マナー、近隣住民との関わり方、ゴミ出しのルールなど、日本での生活に必要な内容を具体的な事例やイラストを用いてわかりやすく伝えるよう努めた。
このような取り組みにより、実習生自身が安心して日常生活を送れるだけでなく、地域や職場においてもトラブルの未然防止につながっている。
【入所後オリエンテーション】
来日直後は、生活環境の変化に加え、言葉や文化の違いから強い不安を感じやすい。そのため、私たちは“すぐに働かせない”という方針を採り、最初の2~3週間はオリエンテーションと職場慣れに専念する期間とした。
(1)自己紹介カード
まず取り組んだのは、自己紹介カードの作成である。氏名・年齢・趣味・好きな食べ物・日本で行きたい場所など、実習生の人柄が伝わる内容を記載しフロアに掲示した。これにより、職員や利用者からの声かけが増え、自然なコミュニケーションが生まれた。
(2)フロア見学・体験実習
各フロアの見学や軽度な体験実習を通じて、「施設を知る」「利用者と接する」「雰囲気に慣れる」ことを目的にした導入期間を設けた。
実際の介助業務は段階的に進めることで、無理なく理解を深めることができ、指導側も実習生の技術レベルや得意不得意を把握する機会となった。
また実習期間中、職員は積極的に実習生に母国語で話しかけたり、簡単な挨拶などを教わる事で相互の文化理解を深める姿勢を示した。
【入社後1~3ヶ月】
入社後1~3ヶ月の期間は、実習生にとって現場での実務に徐々に慣れていく重要なステップである。この期間は、先輩職員とペアを組みながら、段階的に業務に取り組み、少しずつ自立を促すフェーズと位置づけた。
初期は、配膳・下膳、移乗や排泄介助などの基本的な業務から始め、習熟度や理解度に応じて業務内容を調整した。実習生の体格や体力、日本語理解力にも個人差があるため、業務の割り振りや指導者の配置にも柔軟性を持たせた。
【日本語学習サポートの充実】
実習生の多くは日本語能力試験(JLPT)N4相当で来日するが、業務に必要な日本語レベルは高いものが求められる。
当施設では月2回、業務後に学習時間を設け、介護テキストや現場で使う言葉を題材に日本語学習を支援し、学んだ言葉をすぐに現場で使えるよう、実践的な内容に重きを置いた。
また、次の目標としてN3合格を掲げることで、実習2号への移行や本人の自信にもつながるモチベーション維持の一助としている。
【生活指導員の配置と役割】
実習生の多くが「分かりました」「大丈夫です」と返答する場面は珍しくない。しかし、これは必ずしも内容を理解していることを意味せず、曖昧なまま進んでしまうリスクもある。
当施設では、生活指導員を1名配置し、生活面・精神面・学習面の支援を一貫して行っている。相談窓口としてだけでなく、日々の声かけや学習サポートにも関わり、「この人に相談すれば大丈夫」という安心感を築くことを重視している。小さな声を拾い、寄り添う姿勢が、定着率や職場内での信頼形成に直結している。
【おわりに】
外国人介護人材の受け入れは、「人を育てる」ことに留まらず、「私たち自身が育てられる」貴重な経験でもある。異文化に触れながら協働する中で、職員一人ひとりの価値観や対応力が磨かれ、施設全体の成長にもつながっている。
今後も当法人の理念である「寄り添う心と温かな手」を大切にしながら、外国人実習生とともに成長できる職場づくりを進めたい。
私たちの取り組みが、受け入れを迷っている施設の一歩を後押しするきっかけとなれば幸いである。
