講演情報
[27-O-P203-01]“丁寧なケア”を文化にするために~接遇の仕組み化~
神奈川県 ○樂満 佑弘, 萩原 昭宏 (介護老人保健施設リハリゾートわかたけ)
【はじめに】
当法人、若竹大寿会は横浜市を中心に30施設を運営する社会福祉法人であり、「人を幸せにする」という経営理念のもと、職員一人ひとりが力を合わせ、人を大切にし、人が大切にされる社会の実現を目指している。職員の優しさ、質の高いサービス提供が最大の特徴である。当施設「リハリゾートわかたけ」は平成10年に開設された従来型多床室施設で、定員143床、2・3階にある居室を平均24床ずつ6ブロックに分け運営している。ユニット型施設のような明確な仕切りがなく、ブロック合同での活動や職員の行き来が多いため、相互性が良くも悪くも影響し合う環境となっている。協力体制が強くなる一方で、コミュニケーションや接遇面での慣れ合いが生じやすく、近年接遇面での乱れが目立つようになってきた。このため昨年度より施設全体で接遇向上に向けた取り組みを開始した。今回はその取り組み内容と具体的成果、今後の展望について報告する。
【目的】
接遇を整え、より丁寧で質の高いケアへ繋げることを目的とした。
【取り組み】
まず接遇改善のため、私を含む4名が日本接遇教育協会の介護接遇インストラクター養成講座を受講した。この講座では接遇知識だけでなく教え方まで学び、修了後は「接遇インストラクター」として施設内教育を担うことが可能となる。受講後、接遇インストラクター4名は会議を開き、接遇改善に向けて職員アンケートや聞き取り調査を実施。その結果、接遇の乱れの原因として
1法人内接遇研修は年1回のみで時間経過とともに忘れやすく定着しにくい。また研修日は固定であるため、勤務の都合で参加できない職員もおり、その場合は課題提出のみで済ませてしまう実態があった
2ご利用者様への接し方が親しさゆえに馴れ合いとなり、接遇の丁寧さが損なわれる傾向がある
3漫然と業務を遂行し、モチベーションが低下していることで接遇への意識が希薄化している
という3点が挙がった。
これらの課題を改善するため「接遇・表彰委員会」を設置。表彰を取り入れたのは、他職員から認められることでモチベーションが向上し、丁寧な接遇に繋がると考えたためである。委員会の取り組みは
1施設独自の接遇研修の開催
2職員同士で褒め合う「サンクスメッセージ」イベントの二本柱とした。
接遇研修は年3回、各回を4日間にわたり開催し、より多くの職員が参加できるよう工夫した。接遇は介護部のみの課題ではないため全職員必須とし、研修資料やスライド作成、告知も全て委員会メンバーが担当。当日は各回2名が講師を務めた。
第一回研修では身だしなみ、言葉遣い、空間理論をテーマに扱った。身だしなみは服装や髪型、名札、マスク着用時の注意点まで具体的に指導。言葉遣いでは尊敬語、謙譲語、丁寧語、クッション言葉を学習。空間理論では利用者に対し正面でなく斜め45度(情の空間)で傾聴することで安心感が得られることを共有した。またマスク越しでも笑顔が伝わるよう「ラッキー」と発音し目を細める練習も取り入れ、恥ずかしがりながらも楽しみ印象に残ったとの声が多く、業務でも意識して活用していると報告されている。
第二回研修は電話対応をテーマとし、事故発生時の家族連絡、ショートステイ退所後の忘れ物連絡、不足物品持参依頼など実務に即した事例をグループワーク形式で検討した。
第三回研修は「受容と共感」をテーマに掲げ、相手を評価や否定をせず肯定的に受け入れる「受容」、相手の見方や感じ方を自分のことのように感じ取る「共感」についてペアワーク形式で実際に体験を通して学べる内容とした。
研修はいずれも一方向的講義ではなくペアワークや他部署混合グループワークを取り入れ、参加者が主体的に考え発言できる内容にした。研修後アンケートでは「他部署の意見を聞けて視野が広がった」「楽しく学べた」など肯定的意見が多かった。
もうひとつの取り組みとして社内ツールTUNAGの「サンクスメッセージ」機能を活用し職員同士でほめ合うイベントを年3回開催。例えば「ご利用者様への対応が丁寧な職員」では、「聴力の弱い方には筆談やボディランゲージを取り入れ工夫していて感心しています。空き時間に身だしなみや居室環境も整えてくれてありがとうございます。」などの投稿があった。これらの投稿は全職員閲覧可能であり、接遇意識の向上や褒められた職員のモチベーションアップに繋がった。
【結果】
取り組みの効果測定として、2024年9月(委員会活動直後)と12月に実施したご家族様アンケート(各約50名)では、「職員は笑顔で対応しましたか」が95.9%から97.9%に、「知人にも勧めたい施設ですか」が85.4%から93.0%に増加、「いいえ」は2.4%から0%となった。また毎年行っている職員対象のストレスチェックでも約30項目中9割以上が前回より改善した。
以上の事から接遇インストラクターが行った活動が今回の結果につながったと考えられる。
【考察】
今回の取り組みを通して、接遇向上に一定の成果が見られたことがご家族様アンケート結果からも明らかとなり、職員のモチベーションアップ・いきいき度につながっていることがわかった。また、今後の研修内容について職員アンケートを実施したところ、「帰宅願望があるご利用者様への対応」「夜間ご家族様へ電話をする際の対応方法」など現場で役立つより実践的なテーマを求める声が多く寄せられた。今後もこれらニーズを研修に反映し、接遇力と実務力を高められる内容へと工夫を続ける予定である。今年度からは委員会メンバーに他部署職員も加え、多職種連携をより強化していく方針である。施設全体で接遇力を底上げすることで、職員一人ひとりのやりがいや達成感につなげ法人理念である「人を幸せにする」介護の実現と、地域社会から信頼され選ばれる施設づくりに貢献していきたいと考えている。
当法人、若竹大寿会は横浜市を中心に30施設を運営する社会福祉法人であり、「人を幸せにする」という経営理念のもと、職員一人ひとりが力を合わせ、人を大切にし、人が大切にされる社会の実現を目指している。職員の優しさ、質の高いサービス提供が最大の特徴である。当施設「リハリゾートわかたけ」は平成10年に開設された従来型多床室施設で、定員143床、2・3階にある居室を平均24床ずつ6ブロックに分け運営している。ユニット型施設のような明確な仕切りがなく、ブロック合同での活動や職員の行き来が多いため、相互性が良くも悪くも影響し合う環境となっている。協力体制が強くなる一方で、コミュニケーションや接遇面での慣れ合いが生じやすく、近年接遇面での乱れが目立つようになってきた。このため昨年度より施設全体で接遇向上に向けた取り組みを開始した。今回はその取り組み内容と具体的成果、今後の展望について報告する。
【目的】
接遇を整え、より丁寧で質の高いケアへ繋げることを目的とした。
【取り組み】
まず接遇改善のため、私を含む4名が日本接遇教育協会の介護接遇インストラクター養成講座を受講した。この講座では接遇知識だけでなく教え方まで学び、修了後は「接遇インストラクター」として施設内教育を担うことが可能となる。受講後、接遇インストラクター4名は会議を開き、接遇改善に向けて職員アンケートや聞き取り調査を実施。その結果、接遇の乱れの原因として
1法人内接遇研修は年1回のみで時間経過とともに忘れやすく定着しにくい。また研修日は固定であるため、勤務の都合で参加できない職員もおり、その場合は課題提出のみで済ませてしまう実態があった
2ご利用者様への接し方が親しさゆえに馴れ合いとなり、接遇の丁寧さが損なわれる傾向がある
3漫然と業務を遂行し、モチベーションが低下していることで接遇への意識が希薄化している
という3点が挙がった。
これらの課題を改善するため「接遇・表彰委員会」を設置。表彰を取り入れたのは、他職員から認められることでモチベーションが向上し、丁寧な接遇に繋がると考えたためである。委員会の取り組みは
1施設独自の接遇研修の開催
2職員同士で褒め合う「サンクスメッセージ」イベントの二本柱とした。
接遇研修は年3回、各回を4日間にわたり開催し、より多くの職員が参加できるよう工夫した。接遇は介護部のみの課題ではないため全職員必須とし、研修資料やスライド作成、告知も全て委員会メンバーが担当。当日は各回2名が講師を務めた。
第一回研修では身だしなみ、言葉遣い、空間理論をテーマに扱った。身だしなみは服装や髪型、名札、マスク着用時の注意点まで具体的に指導。言葉遣いでは尊敬語、謙譲語、丁寧語、クッション言葉を学習。空間理論では利用者に対し正面でなく斜め45度(情の空間)で傾聴することで安心感が得られることを共有した。またマスク越しでも笑顔が伝わるよう「ラッキー」と発音し目を細める練習も取り入れ、恥ずかしがりながらも楽しみ印象に残ったとの声が多く、業務でも意識して活用していると報告されている。
第二回研修は電話対応をテーマとし、事故発生時の家族連絡、ショートステイ退所後の忘れ物連絡、不足物品持参依頼など実務に即した事例をグループワーク形式で検討した。
第三回研修は「受容と共感」をテーマに掲げ、相手を評価や否定をせず肯定的に受け入れる「受容」、相手の見方や感じ方を自分のことのように感じ取る「共感」についてペアワーク形式で実際に体験を通して学べる内容とした。
研修はいずれも一方向的講義ではなくペアワークや他部署混合グループワークを取り入れ、参加者が主体的に考え発言できる内容にした。研修後アンケートでは「他部署の意見を聞けて視野が広がった」「楽しく学べた」など肯定的意見が多かった。
もうひとつの取り組みとして社内ツールTUNAGの「サンクスメッセージ」機能を活用し職員同士でほめ合うイベントを年3回開催。例えば「ご利用者様への対応が丁寧な職員」では、「聴力の弱い方には筆談やボディランゲージを取り入れ工夫していて感心しています。空き時間に身だしなみや居室環境も整えてくれてありがとうございます。」などの投稿があった。これらの投稿は全職員閲覧可能であり、接遇意識の向上や褒められた職員のモチベーションアップに繋がった。
【結果】
取り組みの効果測定として、2024年9月(委員会活動直後)と12月に実施したご家族様アンケート(各約50名)では、「職員は笑顔で対応しましたか」が95.9%から97.9%に、「知人にも勧めたい施設ですか」が85.4%から93.0%に増加、「いいえ」は2.4%から0%となった。また毎年行っている職員対象のストレスチェックでも約30項目中9割以上が前回より改善した。
以上の事から接遇インストラクターが行った活動が今回の結果につながったと考えられる。
【考察】
今回の取り組みを通して、接遇向上に一定の成果が見られたことがご家族様アンケート結果からも明らかとなり、職員のモチベーションアップ・いきいき度につながっていることがわかった。また、今後の研修内容について職員アンケートを実施したところ、「帰宅願望があるご利用者様への対応」「夜間ご家族様へ電話をする際の対応方法」など現場で役立つより実践的なテーマを求める声が多く寄せられた。今後もこれらニーズを研修に反映し、接遇力と実務力を高められる内容へと工夫を続ける予定である。今年度からは委員会メンバーに他部署職員も加え、多職種連携をより強化していく方針である。施設全体で接遇力を底上げすることで、職員一人ひとりのやりがいや達成感につなげ法人理念である「人を幸せにする」介護の実現と、地域社会から信頼され選ばれる施設づくりに貢献していきたいと考えている。
