講演情報

[27-O-R003-05]今後の「在宅復帰超強化型老健」運営における一考察~11年間の退所先データ分析による退所先の変化~

大分県 佐藤 淳一, 牧 達朗, 大津 美穂 (介護老人保健施設 陽光苑)
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【はじめに】
 当苑は2013年10月から「在宅復帰強化型老健」として在宅復帰の取り組みの強化を始めた。また、利用者の退所先の傾向を把握するために「在宅復帰分類」を作成し、入所時から利用者の退所先の意向を明確にしている。この方向性の明確化は、入所中の利用者に対して“全職種が同じ方向を向いて支援ができる”という好効果をもたらしており、現在でも活用が続いている。今回は当分類の11年間の在宅復帰の傾向を洗い出し内部要因や外部要因を分析して、今後の老健としての在り方を考察する。
【在宅復帰分類】退所パターンを以下のA~Dまで分類
A『自宅復帰在宅サービス利用型』
B『自宅(在宅)と老健とのサイクル型』
 B1[季節サイクル型]
 B2[自宅老健サイクル型(1ケ月以上)]
 B3[自宅老健サイクル型(14日以上)]
 B4[在宅復帰施設老健サイクル型]
C『施設利用型』
 C1[在宅復帰型施設]
 C2[非在宅復帰型施設]
D『施設死亡(看取り含む)』
【取り組み】
 2014年度~2024年度の「在宅復帰分類」毎の変化をグラフ化にした。
【結果(傾向)と考察】
Aの『自宅復帰在宅サービス利用型』は、「在宅復帰強化型」が始まった年から順調に自宅退所が増えていたが、近年は自宅退所が困難なケースが増えている。
<自宅復帰困難理由>本人や家族を取り巻く環境の大きくな変化。
(1)独居世帯の増加や同居でも日中一人で過ごす時間が増加
⇒自宅で一人という環境に対して家族の不安が強く、ADLが自立まで改善しないと自宅に帰れないケースが増加している。
(2)自宅で見守りや介護が出来ない空白時間の存在
⇒空白時間に介護者不在の不安が強く、自宅復帰を妨げている。
(3)平均介護度の上昇
⇒”2.8(2014年度)→3.2(2024年度) と平均介護度が上がっているため、老健でリハビリしてもADL改善が見込める利用者が減少して、自宅退所も減少している。
(4)ADLに関係なく、病状の悪い利用者の増加
⇒自宅に帰ってから、病院に短期間での再入院が増えており家族の負担が増えている。
B『自宅(在宅)と老健とのサイクル型』は、B1~B4まで同じ傾向。「在宅復帰強化型」が始まった年から2年~3年は、当苑と自宅や在宅型施設とのサイクル利用が増えていたが、現在はほぼ無くなっている。
<サイクル利用減少の理由>
(1)サイクル利用者の様々な環境の変化
⇒2014年度の「在宅復帰強化型」取得の時には、陽光苑生活が長い利用者が多かった。そのため利用者本人や家族から『長く陽光苑で過ごしたい。陽光苑に帰ってきたい。』と云う希望が多かった。しかし、「在宅復帰強化型」取得以降、陽光苑の長期入所者が減少し、サイクル利用提案に賛同する利用者も減少した。
(2)サイクル利用者の高齢化
⇒本人がサイクルのできない身体状況になっている。
(3)認知症など精神の重度者の増加
⇒家や施設を行ったり来たりするのが難しい利用者が増加。
C『施設利用型』は、在宅型施設(C1)の退所が徐々に増え、最近は安定した退所 先になっている。非在宅型施設(C2)への退所は減少しているが、まだ一定の退所先である。
(1)物価高騰による利用料の値上がり
⇒在宅型施設の利用料が軒並み値上がりしており、「負担限度額認定」を受けている利用者との価格格差が広がっている。そのため、家族負担が増加しているため、「在宅型施設」への入所拒否の利用者が増加している。
⇒「本人の年金内の利用料」の希望が多く、家族の意向に添えない在宅型施設が増加して施設選択が難しくなっている。
(2)利用料の安い「特別養護老人ホーム」への入居希望者の増加
⇒「在宅復帰率」へ多大な影響を与えている。
D『施設死亡(看取り含む)』は、一時期減少していたが、近年、上昇傾向。
(1)利用者の入院を減らすための施策
⇒病院に入院しなくても陽光苑でできる処置を説明し、入院数の削減を図っている。
【まとめ】
 全国老人保健施設協会の理念では「介護老人保健施設は、~省略~また、家族や地域の人びと・機関と協力し、安心して自立した在宅 生活が続けられるよう支援します。」と謳われている。柱は「在宅(自宅)復帰支援」。しかし、昨今の家族の考え方や自宅の生活環境などの様々な変化から“自宅復帰”は厳しい環境になっている。また、物価高によって、“在宅型施設への入所”もままならない状況。更に病状の重度化の利用者か増え、リハビリが積極的に出来ないという課題も増加。病院入院者も増えている。このように“在宅(自宅)復帰”が難しくなっている環境下で、老健には何が求められているのか?今までの在宅復帰に中心的な役割を担っていた老健の影が薄れている。介護保険が始まって25年、様々な環境が変化している中、介護保険の中の老健の役割も変わっている。今、老健の存在意義が問われていると感じている。もう一度老健が、介護保険の中心施設としての役割の担うためには、これから老健がどのような施設に変わるべきかを考える時期に来ていると考えている。