講演情報

[27-O-R003-07]在宅復帰率50%以上の達成と維持~いかに分母を減らすか~

静岡県 東 茂樹 (介護老人保健施設こみに)
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【はじめに】
当施設は2023年10月に在宅強化型老健、翌2024年6月に超強化型老健になり、以後これを維持している。法人内に医療機関を持たない独立型の当施設において、超強化型老健維持には在宅復帰率50%以上確保は必須の条件である。在宅復帰率を上げるには、分子となる在宅復帰者を増やす数々の方策を講じる(2024年の全老健大会で発表)と共に、分母を減らす、すなわち死亡退所者以外の退所者を減らすことが求められる。その際、他の老健施設や特養に移るご利用者をコントロールすることは難しいため、分母を減らすことは、取りも直さず病院への搬送者を減らすことであり、(1)施設で治療可能な疾患は施設で治療する、(2)高齢で体力的に脆弱な方は、ご家族と相談の上、施設で看取る、この二点が基本対策となる。
【当施設の取り組み】
当施設が加算型老健であった当時、経営的安定性を確保するためには、入所者数180名(ベッド占床率96.8%)を確保することが必要であり、6年前より肺炎や尿路感染症に対し、点滴による抗生剤治療を積極的に行い、占床率低下を防いだ。当初は、点滴治療に対する理解・協力は得にくく、サーフロー針の刺入は全て医師が行い、夜間に駆け付けることも度々あった。しかし、治療により病状が改善するご利用者が増えるにつれ、看護師の協力が得られるようになり、医師勤務時間外にも点滴を入れてくれる看護師が次第に増え、現在では開始時のみならず、刺し換えも行ってくれている。感染症治療では点滴治療に5~7日を要することが多く、点滴を継続できるか否かが治療完遂の大きなポイントになる。
現在、医師勤務時間外において、発熱(37.8度以上)や体調悪化時には、バイタルサインと指定したチェック項目を、いつ何時でも電話連絡し、必要なら、写真・動画をスマホに送るよう指示している。肺炎や尿路感染症で、救急搬送の必要はないと医師が判断した場合には、喀痰培養・尿培養を採り、点滴・抗生剤(CTRX)を開始する。また、糖尿病合併例では1日3回血糖値測定を行い、スライディングスケールによりヒューマリンRを投与している。
そのような体制において、2024年4月から2025年7月までの期間、所定疾患施設管理料II算定件数は118件(一人で複数の疾患罹患あり)であり、内訳は肺炎77、尿路感染症36、慢性心不全の急性増悪4、蜂窩織炎1であった。また、同期間の病院搬送は41名で、内訳は肺炎12(3名は発症直後搬送、9名は治療後搬送)、急性心不全5、イレウス5、大腿骨骨折5、尿路感染症2(治療後搬送)、虚血性大腸炎2、胆管炎2、高Ca血症2、その他6であった。なお、2024年1月から4月の間にクラスターが発生(新型コロナ2回、インフル1回)し、入所者50名のフロアーで点滴施行者が12名に達したこともあり、夜勤看護師の負荷は限界に近かった。
当施設では、入所時に、体調悪化の際に病院搬送を希望されるか否かを伺っているが、入所後、老衰や認知症の進行が顕著になった、嚥下機能低下がみられるようになった、あるいは肺炎や尿路感染症などに罹患した時点で、看取りについてご家族と相談の機会を設けている。この相談件数は増加傾向にあり、全63名を前期(2024年4月~12月)、後期(2025年1月~7月)に分けてみると、老衰・認知症進行(10、13)、肺炎(9、16)、尿路感染(1、1)、心不全(2、4)、その他(3、4)となっている。このうち、看取り相談の結果、ご家族の病院搬送希望により搬送した方は、全期間を通じて9名おられ、病院での治療を希望されるご家族は一定数おられる。一方、当初は搬送希望であったが、ご利用者の状態変化に伴い、看取り希望に変わるご家族もあり、ご家族のご希望をきめ細かく聴き取る対応が必要となる。
【まとめ】
在宅復帰率の分母を減らすべく、自施設で治療可能な疾患に対しては積極的に治療を行い、また病院搬送後の環境変化や検査・治療に伴う負荷が過大になると判断したご利用者には、ご家族と相談の上、当施設で治療と看取りを行い、病院搬送者を減らした。
分母を減らすには、自施設で可能な治療は積極的に行うという意識変革、点滴手技の向上、チームとしての協力体制、そして看取りまで任せていただける、ご家族との信頼関係醸成が必要である。