講演情報
[27-P-CO01-05]単独型老健2施設の入院退所者の特徴と今後の取り組み
宮城県 ○佐藤 尚子1, 佐藤 友賀1, 濱尾 恵江2, 佐藤 将章2 (1.介護老人保健施設なとり, 2.介護老人保健施設あだたら)
【はじめに】当グループ内2つの単独型介護老人保健施設(以下老健)では、入院による施設退所率が2023年度は44.4%、33.7%であり2024年度はさらなる増加が予測された。突然のベッド空床は稼働率を下げ経営上の課題となっている。そこで2つの老健での入院退所者の特徴を明らかにし、入院退所を減らす為に看護師が出来る取り組みを考察したので報告する。
【研究の背景】厚生労働省社会保険審議会の令和5年資料によると老健では退所者の33.3%が医療機関へ退所しており、介護施設・福祉施設からの急性期病院への入院は誤嚥性肺炎が全体の14%、尿路感染症が5.1%、うっ血性心不全が4.6%とされている。そして医療提供機能について、まずは自施設の職員の対応力の向上を図ったうえで、自施設で対応可能な範囲を超えた場合に外部の医療機関と連携して対応に当たるべきと指摘している。2つの老健での入院退所者について年齢、性別、介護度、診断名などは把握されているが、外部医療機関への入院の経緯や特徴は明らかになっていない。
【研究方法】入院による施設退所者<入院群>と継続して施設入所していた者<非入院群>を比較した。非入院群は老健Aが2フロア中の1フロア、老健Bが3フロア中の2フロアを対象とした。期間は老健Aが2024年12月~2025年2月、老健Bが2025年3月~5月のそれぞれ3か月で、年齢、性別、介護度、BMI、血清アルブミン、入院までの経過をカルテより収集した。またADL評価としてバーセルインデックス(以下BI)を、意欲の評価にVitality index(以下VI)を用い入院群は退所2週間前の状態で、非入院群は最終月の状態で評価した。2群の比較は統計ソフトEZRを用い性別はカイ二乗検定、その他はMann-WhitneyU検定を行った。
【結果】老健Aの入院群は男性8名、女性14名の計22名だった。非入院群は男性5名、女性28名の計33名だった。入院時診断名は、肺炎6名(27.2%)、老衰3名、骨折3名、消化管出血2名、心不全・胆のう炎・脳出血・腸閉塞・気胸・脱水症各1名、不明が2名だった。13名(59.1%)が救急搬送され、外部受診の直接的契機はSpo2の低下8件(36.4%)が最多だった。また新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)に起因したものは6件(27.3%)だった。期間中の入院退所率は75.9%で入院群と非入院群の比較では有意差は無かったが、経管栄養者(入院群2名、非入院群7名)を除き比較するとBIで有意差を認めた(P<0.05)。
一方、老健Bの入院群は男性10名、女性9名の計19名、非入院群は、男性14名、女性25名の計39名だった。肺炎9名(47.4%)、心不全3名、胆管炎2名、尿路感染症2名、脳出血1名、栄養管理目的入院2名だった。11名(57.9%)が救急搬送され、外部受診の契機はSpo2の低下9件(47.4%)が最多だった。COVID-19に起因した入院は3件(15.8%)だった。期間中の入院退所率は39.7%だった。2群を比較すると介護度(P<0.05)、BI(P<0.01)、VI(P<0.01)、血性アルブミン値(P<0.01)で有意差を認めた。
老健A、Bとも症状発現から0~14日で入院しており、脳出血(意識障害)、消化管出血は0日、胆管炎・胆のう炎は0~1日、肺炎は0~10日、骨折は0~7日、心不全は3~14日だった。また看護師の記録では、肺炎の入院でも呼吸数の記録はほとんどなく、測定する看護師は限定されているかまたは入院当日のみ記録されていた。
【考察】老健AではCOVID-19に関連したもの、また老衰による全身の機能低下に伴うものが特徴と考えられた。2群間すべての対象者を比較すると有意差はなく入院の予測は難しいが、経管栄養者を除いた比較ではBIに有意な差があり、ADL能力の維持向上が入院を少なくする可能性が示された。なおCOVID-19流行期には体調不良や隔離などによる活動制限でADL能力が低下しやすいため、より一層の観察看護が必要と考えられる。また今後は本人家族や地域医療ニーズを満たすため施設での看取りを積極的に行っていく必要性が高いと考えられる。
そして老健BではADLと意欲、血清アルブミン値が低いと入院の傾向が高かった。自立の促進と意欲の向上を支援し、また栄養状態の維持改善に向け口腔・嚥下機能の評価や治療を多職種と連携し進めていくことが重要と考えられる。
また先行研究では、早期発見・介入により重症化を防ぐことのできる急性疾患に対する、入院に至る前のケアの質と終末期の意思決定支援が適切であれば高齢者施設からの病院搬送や入院を減らせる可能性があると述べられている。しかし2つの施設では、緊急度の高い疾患は適切にトリアージされていたが、その他はSpo2の低下を判断材料とし搬送されることが多くみられた。看護師は肺炎が想定される場合でも呼吸数を測定していないことが多く、重症化の兆候を初期にキャッチできなかった可能性がある。呼吸数は酸素化と換気の指標で重症感染症を疑うqSOFAにも必要な項目とされる。早期治療につなげるためにも急性疾患のマネジメントとして呼吸数の測定は習慣化した方がよいと考えられる。
今回の研究では、2つの老健とも肺炎による入院が最も多く、他施設事例と同様の結果であった。肺炎予防には口腔ケアやリハビリテーション、薬剤整理、アドバンスケアプランニングなど対策は多岐にわたる。看護師は日頃より積極的にコミュニケーションを図り多職種と心身機能の変化や客観的データを共有し、タイムリーに改善策を協議し重症化の予防を図ることが望まれる。
【おわりに】研究期間では肺炎が最多で老衰による入院も見られた。多職種とともに肺炎予防、ADL能力の維持向上、看取り機能の充足を行うことが入院退所を減少させる可能性があると示唆された。さらに看護師が重症化を適切に判断できれば、施設内もしくは外部医療機関での検査・治療移行を進め、早期治療により入院退所者を減らす一助となることができると考えられた。
【研究の背景】厚生労働省社会保険審議会の令和5年資料によると老健では退所者の33.3%が医療機関へ退所しており、介護施設・福祉施設からの急性期病院への入院は誤嚥性肺炎が全体の14%、尿路感染症が5.1%、うっ血性心不全が4.6%とされている。そして医療提供機能について、まずは自施設の職員の対応力の向上を図ったうえで、自施設で対応可能な範囲を超えた場合に外部の医療機関と連携して対応に当たるべきと指摘している。2つの老健での入院退所者について年齢、性別、介護度、診断名などは把握されているが、外部医療機関への入院の経緯や特徴は明らかになっていない。
【研究方法】入院による施設退所者<入院群>と継続して施設入所していた者<非入院群>を比較した。非入院群は老健Aが2フロア中の1フロア、老健Bが3フロア中の2フロアを対象とした。期間は老健Aが2024年12月~2025年2月、老健Bが2025年3月~5月のそれぞれ3か月で、年齢、性別、介護度、BMI、血清アルブミン、入院までの経過をカルテより収集した。またADL評価としてバーセルインデックス(以下BI)を、意欲の評価にVitality index(以下VI)を用い入院群は退所2週間前の状態で、非入院群は最終月の状態で評価した。2群の比較は統計ソフトEZRを用い性別はカイ二乗検定、その他はMann-WhitneyU検定を行った。
【結果】老健Aの入院群は男性8名、女性14名の計22名だった。非入院群は男性5名、女性28名の計33名だった。入院時診断名は、肺炎6名(27.2%)、老衰3名、骨折3名、消化管出血2名、心不全・胆のう炎・脳出血・腸閉塞・気胸・脱水症各1名、不明が2名だった。13名(59.1%)が救急搬送され、外部受診の直接的契機はSpo2の低下8件(36.4%)が最多だった。また新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)に起因したものは6件(27.3%)だった。期間中の入院退所率は75.9%で入院群と非入院群の比較では有意差は無かったが、経管栄養者(入院群2名、非入院群7名)を除き比較するとBIで有意差を認めた(P<0.05)。
一方、老健Bの入院群は男性10名、女性9名の計19名、非入院群は、男性14名、女性25名の計39名だった。肺炎9名(47.4%)、心不全3名、胆管炎2名、尿路感染症2名、脳出血1名、栄養管理目的入院2名だった。11名(57.9%)が救急搬送され、外部受診の契機はSpo2の低下9件(47.4%)が最多だった。COVID-19に起因した入院は3件(15.8%)だった。期間中の入院退所率は39.7%だった。2群を比較すると介護度(P<0.05)、BI(P<0.01)、VI(P<0.01)、血性アルブミン値(P<0.01)で有意差を認めた。
老健A、Bとも症状発現から0~14日で入院しており、脳出血(意識障害)、消化管出血は0日、胆管炎・胆のう炎は0~1日、肺炎は0~10日、骨折は0~7日、心不全は3~14日だった。また看護師の記録では、肺炎の入院でも呼吸数の記録はほとんどなく、測定する看護師は限定されているかまたは入院当日のみ記録されていた。
【考察】老健AではCOVID-19に関連したもの、また老衰による全身の機能低下に伴うものが特徴と考えられた。2群間すべての対象者を比較すると有意差はなく入院の予測は難しいが、経管栄養者を除いた比較ではBIに有意な差があり、ADL能力の維持向上が入院を少なくする可能性が示された。なおCOVID-19流行期には体調不良や隔離などによる活動制限でADL能力が低下しやすいため、より一層の観察看護が必要と考えられる。また今後は本人家族や地域医療ニーズを満たすため施設での看取りを積極的に行っていく必要性が高いと考えられる。
そして老健BではADLと意欲、血清アルブミン値が低いと入院の傾向が高かった。自立の促進と意欲の向上を支援し、また栄養状態の維持改善に向け口腔・嚥下機能の評価や治療を多職種と連携し進めていくことが重要と考えられる。
また先行研究では、早期発見・介入により重症化を防ぐことのできる急性疾患に対する、入院に至る前のケアの質と終末期の意思決定支援が適切であれば高齢者施設からの病院搬送や入院を減らせる可能性があると述べられている。しかし2つの施設では、緊急度の高い疾患は適切にトリアージされていたが、その他はSpo2の低下を判断材料とし搬送されることが多くみられた。看護師は肺炎が想定される場合でも呼吸数を測定していないことが多く、重症化の兆候を初期にキャッチできなかった可能性がある。呼吸数は酸素化と換気の指標で重症感染症を疑うqSOFAにも必要な項目とされる。早期治療につなげるためにも急性疾患のマネジメントとして呼吸数の測定は習慣化した方がよいと考えられる。
今回の研究では、2つの老健とも肺炎による入院が最も多く、他施設事例と同様の結果であった。肺炎予防には口腔ケアやリハビリテーション、薬剤整理、アドバンスケアプランニングなど対策は多岐にわたる。看護師は日頃より積極的にコミュニケーションを図り多職種と心身機能の変化や客観的データを共有し、タイムリーに改善策を協議し重症化の予防を図ることが望まれる。
【おわりに】研究期間では肺炎が最多で老衰による入院も見られた。多職種とともに肺炎予防、ADL能力の維持向上、看取り機能の充足を行うことが入院退所を減少させる可能性があると示唆された。さらに看護師が重症化を適切に判断できれば、施設内もしくは外部医療機関での検査・治療移行を進め、早期治療により入院退所者を減らす一助となることができると考えられた。
