講演情報

[27-P-CO01-08]リハビリ・介護職における足底の障害の現状調査

東京都 良井 健二1, 小川 康恭1, 盆子原 秀三2, 吉田 吏江3 (1.介護老人保健施設蓮根ひまわり苑, 2.SBC東京医療大学, 3.翠会ヘルスケアグループ精神医学研究所)
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【はじめに】
当老人保健施設において職員が足底筋膜炎により休職を余儀なくされるケースが発生した。医療・介護の現場において職業病として認知度の高い腰痛に比べ、これまで注目されることの少なかった足底の痛み等の障害についてその現状を調査する事は有意義と考えた。
【目的】
介護老人保健施設等の介護施設では業務上職員の筋骨格系の負担が大きくなりやすい。特に腰痛や頸肩腕障害には歴史があり既に様々な研究が行われ効果的な対策も多数提案されている。しかしながら足底筋膜炎等による足部の痛みの障害とリハビリや介護業務との関連については現状ほとんど注目されていない。介護施設が良好な職場環境を構築し持続的なサービスの向上を図るためには足底筋膜炎の発症による休職等を防止することが重要である。
【方法】
(1)リハビリ・介護職員を対象とし足底筋膜炎を中心とする足の痛み等の障害及び性差がそれらに及ぼす影響についてアンケート調査を実施。主な質問項目は年齢、性別、体重、職種、経験年数、スポーツ経験、ランニング習慣、業務中の履物、足底の痛みの有無(いつ頃からか、痛みの継続性、痛みの場面、痛みの出る作業、その重量負荷および頻度、医療機関等の受診や処置、足底以外の痛み、既往症、痛み以外の神経症状の有無とした。
(2)模擬的な移乗介助作業動作を動画撮影し加速度計による2次元解析を行い足底の痛みの発症メカニズムを調査した。
【結果】
(1)配布45名中回答が29名。性別の内訳は男性13名、女性15名、不明1名。職種別ではリハビリ職6名、介護職23名。これまでに足底の痛みを経験したものは11名、内2名が現在も痛みが継続していた。痛みを経験した11名のうち医療機関を受診した者は3名であった。年齢では男性は30~49歳の層に痛みのある者が分布し11名中5名と約半数に痛みを経験していた。女性は50~60歳以上の層で6名中3名と半数で痛みを経験する結果であった。体重では男性は80kg以上の層で3人中2名の痛み有りが確認され、女性は50kg以上の層は6人中4名に痛みが有り50kg以下の層に比べ明らかに高い割合となっていた。痛みの出る場面では起床時が3名、通勤中が4名、業務中6名、業務後5名安静時3名(複数回答)。痛みの出る業務は移乗介助4名、排泄介助3名、入浴介助3名、歩行介助3名(複数回答)。更に痛みのでる業務の負荷と頻度に対する質問では負荷大4名(頻繁1名、時々3名、ほぼ無し0名)負荷中0名、負荷小2名(頻繁1名、時々1名、ほぼ無し0名)であった。足底の痛みを有する11名中6名で他の身体部位にも痛みを有しており腰背部3名、膝関節5名(複数回答)に痛みを有する者が多かった。足底筋膜炎との関連が指摘されるランニング習慣のある者は0名、履物もスニーカー9名、ナースシューズ2名と足底の痛みとの関係では低リスクのものを選択していた。
(2) 介助者は片脚半歩前位から体幹重心(第6胸椎)はいったん後方に移動した後に大きく前方へ移動し被介助者を持ち上げる準備の体勢となる。その後、体幹重心は下降すると共に後方へ移動することで被介助者の離殿が起こっていた。これは半歩前スクワット動作と類似した動作パターンであった。
【考察】
介護施設で働くリハビリ・介護職を対象としたアンケート調査では足底の痛みを経験したものは29名中11人(約38%)であり、一般の足底筋膜炎の有病率(約10%)と比較し高い割合を示した。日々の業務を通じ経験的に感じる印象と比べてもより多くの者が足底の痛みを感じながら業務に臨んでいる現状がデータとして確認できた。足底筋膜炎のリスク要因であるランニング習慣を有する者は無く、業務中の履物にも配慮している者が多いことから、痛みの原因として体重や介助場面で繰り返される重量負荷などの業務負担が関わっている可能性が示唆された。男性は女性に比べ若い年齢層で痛みを発症する傾向があり痛みの割合が高まる体重層も男女差が確認され、対応策を講じる上で参考とし得ると考えた。また移乗介助の動作解析では半歩前スクワット動作と類似の動作パターンが抽出され、先行研究では半歩前スクワットでは両足揃えてのスクワットに比べ前側の足に約1.5倍の膝伸展モーメントが生じるとされており、この負荷により前側の足底筋膜に強い張力が加わることが足底の痛みに関わっている可能性を考えた。一般的に推奨される足を前後に開き相手に近づく事で体幹前傾を軽減する移乗介助姿勢は腰痛防止には効果的だが前側の足の負担を増大し足底筋膜炎の発症に繋がる可能性が示唆された。これは足底の痛みを有する者の中には、足底部以外の痛みも有する者が多く特に腰背部と膝関節の痛みを有する者が多いというアンケート結果とも整合していた。今後はアンケート調査を進めサンプル数を増やし、動作解析では足底に掛かる圧の直接計測等による分析を行いリハビリ・介護業務と足底の痛みの関連性を調査する必要があると考えた。