講演情報
[27-P-P101-06]定期カンファレンスにおける生成AI活用の取り組み業務効率化と質の向上を目指して
群馬県 ○星野 陸1, 小此木 直人2, 平形 佳之1, 井上 宏貴3, 深澤 浩1, 田中 志子1 (1.介護老人保健施設 大誠苑, 2.医療法人大誠会 内田病院, 3.(株)H&Mサービス)
【目的】介護業界では慢性的な人材不足が課題となっており、ICTやDXの導入が各施設で進んでいる。当施設では、介護現場における書類業務の時間削減と、ケアの質の維持・向上を目的として、生成AI(Claude)を活用した定期カンファレンスの効率化に取り組んだ。本研究では、AIによる課題抽出支援が、カンファレンスの時間短縮および質の均一化に寄与するかを検証した。【方法】研究対象・期間本研究は、当施設において利用者の入所後3ヶ月ごとに実施される多職種による定期カンファレンス(家族参加なし)を対象とし、2025年4月から5月にかけて実施した。対象期間中の取り組み前後での比較検討を行った。介入方法[取り組み前の従来方法] 事前準備として、担当職員が利用者のアセスメント情報(身体機能、認知機能、ADL、服薬状況、家族状況等)を専用のアセスメントシートに手作業で入力・整理していた。その後、定期カンファレンスの場において、多職種(介護職、看護師、リハビリテーションスタッフ、歯科衛生士、介護支援専門員)が集まり、各専門分野の視点からケア上の課題を抽出し、具体的な対策を検討・決定するという流れで実施していた。[取り組み後の新方法] 事前準備では、従来と同様にアセスメント情報をシートに入力した上で、要配慮個人情報(氏名、住所、生年月日等の個人識別情報)を適切に除去・匿名化処理を行った後、生成AI(Claude)にアセスメントシートを読み込ませた。AIが利用者の状態を総合的に分析し、自動で抽出・提案した課題リストと対策案をベースとして、多職種でカンファレンスを実施する方式に変更した。なお、AIによる提案はあくまで叩き台として活用し、最終的な判断は必ず各専門職が行うこととした。評価方法効果測定として、取り組み前(4月:17件)と取り組み後(5月:20件)の1件あたりのカンファレンスについて、準備時間および実際の会議所要時間を調査した。また、カンファレンスに参加する職員のうち、介護福祉士3名、理学療法士3名を対象として、半構造化インタビューによる聞き取り調査を実施し、カンファレンスの質の変化、業務負担感の変化、AI活用に対する意見や感想等について調査した。聞き取り調査は各職員につき約10分程度の個別面談形式で実施し、内容は職員の同意を得た上で記録した。【結果】カンファレンス時間に関する定量的結果カンファレンス1件あたりの準備時間について、取り組み後は生成AIにアセスメントシートを読み込ませ、結果を確認・整理する作業が新たに約5分程度増加していた。しかし、この準備時間の微増を上回る効果として、カンファレンス自体の所要時間は、従来の約25~30分から約15分へと短縮され、約40~50%の時間削減効果が確認された。質的変化に関する結果カンファレンスに参加する介護福祉士、理学療法士を対象とした聞き取り調査では、以下のような肯定的な意見が多数を占めた。「利用者ごとの課題が以前より明確に整理され、見落としがちな視点も含めて包括的に把握できるようになった」「文章化や課題の言語化が苦手だったが、AIに基本的な構造を作成してもらえることで、自分の専門性を活かした議論に集中できるようになった」「若手の職員(資格取得後3年目)でも、AIの提案を参考にしながら適切な視点で利用者の状態を把握できるようになった」といった回答が得られた。また、「話し合いの焦点が定まりやすくなり、脱線することなく建設的な議論ができるようになった」「各職種の専門的な意見が整理されて聞きやすくなった」との意見も見られ、会議の質的向上が示唆された。また「従来は各職種が個別に課題抽出を行っていたため、経験年数や専門性によって抽出される課題の範囲や深さに差があった。AIの支援により、一定の基準での課題抽出が可能となり、職員間の負担感の格差が軽減された」との報告があった。【考察】カンファレンス時間短縮の要因として、事前に生成AIが整理・提示した課題リストにより、会議の冒頭から議論の焦点が明確になり、各職種からの意見交換がより効率的に進められたことが挙げられる。本研究の結果から、生成AIの活用により、定期カンファレンスの業務負担を実質的に軽減しつつ、同時に質の担保および向上が図られることが実証された。特に、時間効率の改善と質的向上の両立という、従来は相反すると考えられていた要素が、AI技術の適切な活用により実現可能であることが示唆された。また本取り組みにおいては、個人情報保護を考慮し、適切な匿名化処理を施した上で生成AIを活用した。これにより、プライバシーの保護と業務効率化を両立させることができ、今後のAI活用の先行事例として意義があると考えられる。生成AIの活用により、各職種の専門性がより明確に整理され、互いの役割分担と協働がスムーズに進むようになった。これは単なる業務効率化を超えて、チームケアの質そのものの向上に寄与していると考えられる。【結論】本研究により、生成AIによる定期カンファレンスにおける課題抽出支援は、職種や経験年数にかかわらず、一定の質で課題抽出を行うことを可能とし、業務の均質化にも顕著な効果があることが確認された。また、時間効率の大幅な改善(約40~50%の時間短縮)と同時に、カンファレンスの質的向上も実現され、AI技術の適切な活用が介護現場の業務改善に大きく貢献する可能性が示された。今後は、より多くの事例での検証と、長期的な効果の持続性について継続的な調査を行うとともに、他の業務領域への応用可能性についても検討していく予定である。加えて、AI技術の進歩に合わせたシステムの継続的改善と、職員のAIリテラシー向上に向けた研修体制の整備も重要な課題として取り組んでいきたい。
