講演情報
[27-P-STR1-02]眠りSCANを活用した生活リズム改善の一例
広島県 ○村木 克彰, 北木 弥生, 田村 昌恵, 佐伯 奏美, 升田 翼, 渡部 恵美 (介護老人保健施設 はまな荘)
はじめに
介護施設において、利用者のQOLの維持・向上が重要な課題とされている。特に睡眠不足や睡眠の質の低下は身体的・精神的健康や活動、QOLに大きな影響を与える。 当施設は、令和6年度に生産性向上を目的に眠りSCANを導入した。眠りSCANは、ベッドに設置したセンサーにより体動(呼吸・心拍など)を測定でき、負荷をかけることなく睡眠状態を把握することが可能な装置である。施設への導入後、良質な睡眠の確保のため眠りSCANの活用方法の検討を行った。今回、睡眠障害のある利用者に対し、眠りSCANから得られるデータを基に睡眠・活動に影響を与える要因を分析し、ケア介入を行い生活リズムの改善に繋がった症例を経験したので報告する。
目的
A氏は90歳代の男性、10年前にアルツハイマー型認知症の診断を受けた。介護保険は要介護2、認知症高齢者日常生活自立度は3aである。4年前から当施設を利用し、在宅と施設を行き来する生活をしている。A氏は、見当識障害により時間や場所を認識する事が難しい状態である。また、夜間は臥床してもすぐに起き上がることや、入眠が夜明けになり十分に睡眠ができていない状況が続いていた。A氏の生活リズムの改善を図る目的で、眠り SCAN を活用し睡眠状況の把握と分析を行った。
方法
1. 眠りSCANを確認し、睡眠状況を把握1週間毎に眠りSCANから睡眠状況(睡眠時間、睡眠潜時、睡眠効率)中途覚醒し起き上がった回数を調査した。
2.老人看護専門看護師ヘコンサルテーション睡眠障害の要因を探るため1)睡眠・覚醒状況を24時間を通してモニタリングを行う2)自宅での睡眠環境や1日の過ごし方を確認する3)生活歴を確認する、以上の3点について情報収集をしてはどうかとアドバイスを受けた。
3.多職種でケアプランを検討し、実施
結果
A氏の睡眠状況を眠り SCAN を用い確認した結果、睡眠時間は42分~5時間23分で平均睡眠時間は1時間39分、睡眠潜時は3時間26分、睡眠効率は27%、中途覚醒は1日10回程度であった。中途覚醒時は「仕事に行く」と言って起き上がるなど、見当識障害による混乱も見られた。一般的な高齢者の平均睡眠時間は5~7時間とされる中で、A氏の平均睡眠時間は著しく短く、睡眠効率も低いため十分な休息が確保できていない状態であった。十分な休息が得られないことにより、日中の傾眠や疲労感、精神的な不安定さに繋がっていると考えられ、A氏が心身の安定を保ち、安心して過ごせるようにするためには、24時間の生活リズムを見直し、夜間の睡眠を確保できるような介入が必要であると考えた。
まず、家族に自宅での睡眠環境や1日の過ごし方を確認したところ自宅では家族と談笑して過ごし、21~22時に就寝し、テレビを付けたままで朝まで睡眠できているとのことであった。次に、A氏と家族へ生活歴についての情報収集を行った。A氏は、日勤と夜勤のある車関係の仕事に従事しており、休日は日曜大工やパンを焼き来客者に振る舞い、手先が器用で社交的な性格であったようである。これらの情報を基に、A氏の嗜好や趣味を取り入れたケアプランを多職種で検討した。
日中はジェンガや黒髭ゲーム、折り紙等を個別に実施し、入眠前にリラックス効果のある波の音などの動画を流すなど試してみた。20時に睡眠薬を内服し、22時には臥床できるように調整した。さらに、時間の見当識に働きかけるためにリアリティオリエンテーション(以下RO)を始め、同時に職員全員がROを適切に実施できるように教育も行った。
以上の取り組みを実施した結果、睡眠時間は2時間49分~8時間19分時で平均睡眠時間は4時間36分、睡眠潜時は1時間14分、睡眠効率は55%、中途覚醒は1日2回程度と睡眠状況の改善がみられた。睡眠時間が増えることで活動時に覚醒している時間が増え、個別活動では他利用者に手本を見せるなど交流を楽しむ姿がみられた。また、施設職員はA氏が「仕事に行く」と訴えた際、仕事の話をすることやROで対応した。A氏に時間や場所が認識できるように状況を伝えることで、A氏は混乱することなく穏やかに過ごすことが増えた。
考察
眠りSCANを導入するまでは、夜間の睡眠状況を職員が個々で判断し、睡眠が十分に図れているのか確証が持てなかったが、眠りSCANを活用することで睡眠時間と睡眠の質が可視化され、睡眠状況を客観的に把握することができた。今後も、利用者の睡眠の質を維持・向上できるように、効果的に眠りSCANを活用していく。
今回、一日の睡眠・覚醒状況を把握し、本人の嗜好や生活歴を基に個別性のある活動を取り入れることで、生活リズムの改善に繋がり、他利用者との交流を通し、笑顔で楽しんでいるA氏のありのままの姿を見ることができた。利用者の嗜好や生活歴を知ることでその人らしい生活を支援するための有用な情報を得る可能性があり、これまでどのような人生を歩んできたか、どのようなことを好み楽しむ方か等、一人一人の利用者に関心を寄せ人となりを確認し、それらの情報を多職種で共有することを心掛ける必要がある。さらに認知症の症状を的確に把握し、症状に応じた対応を職員全員が実施したことにより、生活の中での混乱や不安を生じることなく生活が送れ、生活リズムを整えることに繋がったと考えられる。認知症の方は、記憶障害や見当識障害等に伴い状況の理解が難しく、職員の対応により混乱しBPSDが出現することもあるため、施設職員が統一したケアを実践できるように継続的な教育や、個々に応じた対応を多職種で検討しケアを実施することが重要である。
おわりに
本事例を通し利用者の嗜好や生活歴等を把握し、それらを取り入れた個別ケアを実践することが重要であると認識できた。 今後も、眠りSCAN を効果的に活用し、睡眠・覚醒に影響を与えている要因を分析し、QOLの維持・向上に向けた支援を行い、その人らしい生活が送れるような実践を継続していきたい。
介護施設において、利用者のQOLの維持・向上が重要な課題とされている。特に睡眠不足や睡眠の質の低下は身体的・精神的健康や活動、QOLに大きな影響を与える。 当施設は、令和6年度に生産性向上を目的に眠りSCANを導入した。眠りSCANは、ベッドに設置したセンサーにより体動(呼吸・心拍など)を測定でき、負荷をかけることなく睡眠状態を把握することが可能な装置である。施設への導入後、良質な睡眠の確保のため眠りSCANの活用方法の検討を行った。今回、睡眠障害のある利用者に対し、眠りSCANから得られるデータを基に睡眠・活動に影響を与える要因を分析し、ケア介入を行い生活リズムの改善に繋がった症例を経験したので報告する。
目的
A氏は90歳代の男性、10年前にアルツハイマー型認知症の診断を受けた。介護保険は要介護2、認知症高齢者日常生活自立度は3aである。4年前から当施設を利用し、在宅と施設を行き来する生活をしている。A氏は、見当識障害により時間や場所を認識する事が難しい状態である。また、夜間は臥床してもすぐに起き上がることや、入眠が夜明けになり十分に睡眠ができていない状況が続いていた。A氏の生活リズムの改善を図る目的で、眠り SCAN を活用し睡眠状況の把握と分析を行った。
方法
1. 眠りSCANを確認し、睡眠状況を把握1週間毎に眠りSCANから睡眠状況(睡眠時間、睡眠潜時、睡眠効率)中途覚醒し起き上がった回数を調査した。
2.老人看護専門看護師ヘコンサルテーション睡眠障害の要因を探るため1)睡眠・覚醒状況を24時間を通してモニタリングを行う2)自宅での睡眠環境や1日の過ごし方を確認する3)生活歴を確認する、以上の3点について情報収集をしてはどうかとアドバイスを受けた。
3.多職種でケアプランを検討し、実施
結果
A氏の睡眠状況を眠り SCAN を用い確認した結果、睡眠時間は42分~5時間23分で平均睡眠時間は1時間39分、睡眠潜時は3時間26分、睡眠効率は27%、中途覚醒は1日10回程度であった。中途覚醒時は「仕事に行く」と言って起き上がるなど、見当識障害による混乱も見られた。一般的な高齢者の平均睡眠時間は5~7時間とされる中で、A氏の平均睡眠時間は著しく短く、睡眠効率も低いため十分な休息が確保できていない状態であった。十分な休息が得られないことにより、日中の傾眠や疲労感、精神的な不安定さに繋がっていると考えられ、A氏が心身の安定を保ち、安心して過ごせるようにするためには、24時間の生活リズムを見直し、夜間の睡眠を確保できるような介入が必要であると考えた。
まず、家族に自宅での睡眠環境や1日の過ごし方を確認したところ自宅では家族と談笑して過ごし、21~22時に就寝し、テレビを付けたままで朝まで睡眠できているとのことであった。次に、A氏と家族へ生活歴についての情報収集を行った。A氏は、日勤と夜勤のある車関係の仕事に従事しており、休日は日曜大工やパンを焼き来客者に振る舞い、手先が器用で社交的な性格であったようである。これらの情報を基に、A氏の嗜好や趣味を取り入れたケアプランを多職種で検討した。
日中はジェンガや黒髭ゲーム、折り紙等を個別に実施し、入眠前にリラックス効果のある波の音などの動画を流すなど試してみた。20時に睡眠薬を内服し、22時には臥床できるように調整した。さらに、時間の見当識に働きかけるためにリアリティオリエンテーション(以下RO)を始め、同時に職員全員がROを適切に実施できるように教育も行った。
以上の取り組みを実施した結果、睡眠時間は2時間49分~8時間19分時で平均睡眠時間は4時間36分、睡眠潜時は1時間14分、睡眠効率は55%、中途覚醒は1日2回程度と睡眠状況の改善がみられた。睡眠時間が増えることで活動時に覚醒している時間が増え、個別活動では他利用者に手本を見せるなど交流を楽しむ姿がみられた。また、施設職員はA氏が「仕事に行く」と訴えた際、仕事の話をすることやROで対応した。A氏に時間や場所が認識できるように状況を伝えることで、A氏は混乱することなく穏やかに過ごすことが増えた。
考察
眠りSCANを導入するまでは、夜間の睡眠状況を職員が個々で判断し、睡眠が十分に図れているのか確証が持てなかったが、眠りSCANを活用することで睡眠時間と睡眠の質が可視化され、睡眠状況を客観的に把握することができた。今後も、利用者の睡眠の質を維持・向上できるように、効果的に眠りSCANを活用していく。
今回、一日の睡眠・覚醒状況を把握し、本人の嗜好や生活歴を基に個別性のある活動を取り入れることで、生活リズムの改善に繋がり、他利用者との交流を通し、笑顔で楽しんでいるA氏のありのままの姿を見ることができた。利用者の嗜好や生活歴を知ることでその人らしい生活を支援するための有用な情報を得る可能性があり、これまでどのような人生を歩んできたか、どのようなことを好み楽しむ方か等、一人一人の利用者に関心を寄せ人となりを確認し、それらの情報を多職種で共有することを心掛ける必要がある。さらに認知症の症状を的確に把握し、症状に応じた対応を職員全員が実施したことにより、生活の中での混乱や不安を生じることなく生活が送れ、生活リズムを整えることに繋がったと考えられる。認知症の方は、記憶障害や見当識障害等に伴い状況の理解が難しく、職員の対応により混乱しBPSDが出現することもあるため、施設職員が統一したケアを実践できるように継続的な教育や、個々に応じた対応を多職種で検討しケアを実施することが重要である。
おわりに
本事例を通し利用者の嗜好や生活歴等を把握し、それらを取り入れた個別ケアを実践することが重要であると認識できた。 今後も、眠りSCAN を効果的に活用し、睡眠・覚醒に影響を与えている要因を分析し、QOLの維持・向上に向けた支援を行い、その人らしい生活が送れるような実践を継続していきたい。
