講演情報
[27-P-STR1-03]会話支援ロボットを用いた共想法の効果とその特徴共想法が高齢者の認知、心理面に与える効果とその特徴
茨城県 ○永田 映子1, 大武 美保子3 (1.介護老人保健施設 マカベシルバートピア, 2.NPO法人 ほのぼの研究所, 3.特定国立研究開発法人 理化学研究所)
【目的】
マカベシルバートピアでは、2011年の11月から共想法(通称お話の会)を導入し、2024年8月末には503回を迎えた。共想法はスクリーンに映された写真を見ながら、参加者同士が様々なテーマについて会話をする手法で、その目的は認知機能の向上、生活の質の改善である。認知症になると著しく低下する、言葉を取り出す認知機能(言語流暢性)が向上するというエビデンスが得られている。言語流暢性は、加齢とともに低下する認知的柔軟性の指標である。
近年介護施設での人手不足と、物価高騰による資金不足は深刻化しつつある。人手不足は介護の質の低下を招き、特に利用者の話をじっくりと聴く時間が持てなくなりつつある。高齢者は自分の話を聞いてもらえないという不満を抱えているため、共想法により会話支援ロボットや実施者がその気持ちを和らげられるか検証する。
【対象、方法】
マカベシルバートピアにおける共想法は、コロナ禍の中でも途切れることなくほぼ予定通りに実施されてきた。途中通所と入所とを分けた時期もあるが、入所者に感染者が出た後は通所のみで実施してきた。開始からの13年弱を対象として、共想法の効果と司会ロボットぼのちゃんがもたらした効果の例を述べる。
マカベ共想法は、以下の3つの方法でグループ会話を実施している。
1)自由会話(テーマのない自由な会話)司会は実施者 1回目と12回目
2)共想法形式(写真は一人2枚、テーマに沿ったもの)司会はぼのちゃん 奇数回
3)写真共想法(写真は全体で2枚 梅か桜かなど)司会は実施者 偶数回
当施設では、2018年秋よりお話の会に会話支援ロボットであるぼのちゃんの司会を導入した。2)の共想法形式の回で登場するタイムキーパーのぼのちゃんは、設定された時間が過ぎると遠慮なく呼びかけをする。その間筆者は副司会者として会話をサポートする。
【結果】
2018年と2024年のアンケートにおいて、参加者は普段のおしゃべりよりもテーマのある会話のほうが話しやすいし楽しいと述べた。また仲間に聞いてもらえることで気分が向上しすっきりするという人が多かった。2024年の正月に自己申告されたSさんの気持ちの変化からは、ロボットであるぼのちゃんの様々な効果が見て取れる。Sさんは2021年(HDS-R28)から2024年(HDS-R29)まで参加している83歳の女性であるが、買い物に出かけてお金を紛失した夫に対して腹を立てることもなく、穏やかに話を聞くことが出来たことに本人自身が驚いたと報告してくれた。これはぼのちゃんの愛らしさに癒されて、仲間とおしゃべりしたおかげだと感想を述べていた。
これらのことから、お地蔵さんのような風貌のぼのちゃんが司会をする共想法で、話す事と聞く事をある程度継続して行く過程で、ものの見方が変わり行動が変容することも生じるのではないかと思われる。5段階のフェイススケールによる申告は、2024年の参加者のスマイル評価では、参加の前後で4から5が47%、3から4が19%、3から5が13%であり、実施後に気分が落ちる人は通算503回、参加者数平均4.8人の実施の中で一人もいなかった。このことから共想法は、高齢者の気分の向上に有効であると考えられる。なお健康問題以外の理由で自主的に退会した人は65名中5名(7.7%)で、その理由は人の話を聞いても仕方ないというものだった。
【まとめ】
共想法の魅力の一つは、テーマを自由に決められることである。健康、地震対策、好きなものごとや生きがいなど、実施者がそのグループにふさわしいものを選ぶことができるため、対象者は高齢者に限らない。またお地蔵さんの趣もあり、ICT(Information and Communication Technology)を具現化したぼのちゃんを用いた共想法によって、参加者の心身の健康を維持し、認知機能を保持し、生活の質を向上させることができれば、介護施設の人手と資金不足を減らしうるのではないかと期待される。傾聴に必要な相手の顔を見て話す姿勢、穏やかな表情でリラックスさせる風貌は十分備えている。また実施者の力量に左右されることなく、均一な質が担保されるのは有難い。
共想法の参加者はそうでない人に比べて認知機能が落ちにくく、数年間参加する人が多い。長い人では9年以上になり、最高齢は100歳(2018年H30 2023年H29)であることを考えれば、共想法は高齢者にとって安全で親しみやすい有益な活動と言えるのではないだろうか。今後様々なICT関連のツールが開発されて行くと思われるが、高齢者にとって孫のような小型ロボットが与える癒し効果は、捨てがたいものがあろう。
[1] 大武美保子. 介護に役立つ共想法, 中央法規出版, 2011.
[2] 永田映子, 大武美保子.介護老人保健施設埼玉大会, 2018.
[3] 永田映子, 大武美保子.介護老人保健施設記念別府大分大会, 2019.
[4] Mihoko Otake-Matsuura et al. (2021). Cognitive Intervention Through Photo-Integrated Conversation Moderated by Robots (PICMOR) Program: A Randomized Controlled Trial. Frontiers in Robotics and AI, Vol. 8, 633076.
マカベシルバートピアでは、2011年の11月から共想法(通称お話の会)を導入し、2024年8月末には503回を迎えた。共想法はスクリーンに映された写真を見ながら、参加者同士が様々なテーマについて会話をする手法で、その目的は認知機能の向上、生活の質の改善である。認知症になると著しく低下する、言葉を取り出す認知機能(言語流暢性)が向上するというエビデンスが得られている。言語流暢性は、加齢とともに低下する認知的柔軟性の指標である。
近年介護施設での人手不足と、物価高騰による資金不足は深刻化しつつある。人手不足は介護の質の低下を招き、特に利用者の話をじっくりと聴く時間が持てなくなりつつある。高齢者は自分の話を聞いてもらえないという不満を抱えているため、共想法により会話支援ロボットや実施者がその気持ちを和らげられるか検証する。
【対象、方法】
マカベシルバートピアにおける共想法は、コロナ禍の中でも途切れることなくほぼ予定通りに実施されてきた。途中通所と入所とを分けた時期もあるが、入所者に感染者が出た後は通所のみで実施してきた。開始からの13年弱を対象として、共想法の効果と司会ロボットぼのちゃんがもたらした効果の例を述べる。
マカベ共想法は、以下の3つの方法でグループ会話を実施している。
1)自由会話(テーマのない自由な会話)司会は実施者 1回目と12回目
2)共想法形式(写真は一人2枚、テーマに沿ったもの)司会はぼのちゃん 奇数回
3)写真共想法(写真は全体で2枚 梅か桜かなど)司会は実施者 偶数回
当施設では、2018年秋よりお話の会に会話支援ロボットであるぼのちゃんの司会を導入した。2)の共想法形式の回で登場するタイムキーパーのぼのちゃんは、設定された時間が過ぎると遠慮なく呼びかけをする。その間筆者は副司会者として会話をサポートする。
【結果】
2018年と2024年のアンケートにおいて、参加者は普段のおしゃべりよりもテーマのある会話のほうが話しやすいし楽しいと述べた。また仲間に聞いてもらえることで気分が向上しすっきりするという人が多かった。2024年の正月に自己申告されたSさんの気持ちの変化からは、ロボットであるぼのちゃんの様々な効果が見て取れる。Sさんは2021年(HDS-R28)から2024年(HDS-R29)まで参加している83歳の女性であるが、買い物に出かけてお金を紛失した夫に対して腹を立てることもなく、穏やかに話を聞くことが出来たことに本人自身が驚いたと報告してくれた。これはぼのちゃんの愛らしさに癒されて、仲間とおしゃべりしたおかげだと感想を述べていた。
これらのことから、お地蔵さんのような風貌のぼのちゃんが司会をする共想法で、話す事と聞く事をある程度継続して行く過程で、ものの見方が変わり行動が変容することも生じるのではないかと思われる。5段階のフェイススケールによる申告は、2024年の参加者のスマイル評価では、参加の前後で4から5が47%、3から4が19%、3から5が13%であり、実施後に気分が落ちる人は通算503回、参加者数平均4.8人の実施の中で一人もいなかった。このことから共想法は、高齢者の気分の向上に有効であると考えられる。なお健康問題以外の理由で自主的に退会した人は65名中5名(7.7%)で、その理由は人の話を聞いても仕方ないというものだった。
【まとめ】
共想法の魅力の一つは、テーマを自由に決められることである。健康、地震対策、好きなものごとや生きがいなど、実施者がそのグループにふさわしいものを選ぶことができるため、対象者は高齢者に限らない。またお地蔵さんの趣もあり、ICT(Information and Communication Technology)を具現化したぼのちゃんを用いた共想法によって、参加者の心身の健康を維持し、認知機能を保持し、生活の質を向上させることができれば、介護施設の人手と資金不足を減らしうるのではないかと期待される。傾聴に必要な相手の顔を見て話す姿勢、穏やかな表情でリラックスさせる風貌は十分備えている。また実施者の力量に左右されることなく、均一な質が担保されるのは有難い。
共想法の参加者はそうでない人に比べて認知機能が落ちにくく、数年間参加する人が多い。長い人では9年以上になり、最高齢は100歳(2018年H30 2023年H29)であることを考えれば、共想法は高齢者にとって安全で親しみやすい有益な活動と言えるのではないだろうか。今後様々なICT関連のツールが開発されて行くと思われるが、高齢者にとって孫のような小型ロボットが与える癒し効果は、捨てがたいものがあろう。
[1] 大武美保子. 介護に役立つ共想法, 中央法規出版, 2011.
[2] 永田映子, 大武美保子.介護老人保健施設埼玉大会, 2018.
[3] 永田映子, 大武美保子.介護老人保健施設記念別府大分大会, 2019.
[4] Mihoko Otake-Matsuura et al. (2021). Cognitive Intervention Through Photo-Integrated Conversation Moderated by Robots (PICMOR) Program: A Randomized Controlled Trial. Frontiers in Robotics and AI, Vol. 8, 633076.
