講演情報

[27-P-STR1-05]地域リハビリテーション活動支援事業における取り組み

広島県 殿垣 尚子 (医療法人社団生和会介護老人保健施設陽だまり)
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【はじめに】
平成27年度から市町村が行う介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)に地域リハビリテーション活動支援事業(以下、地域リハ事業)が創設され、広島市でも平成29年度より開始された総合事業においてリハビリテーション専門職等(以下、リハ職)が関与することとなった。全国老人保健施設協会において介護老人保健施設(以下、老健)の役割の一つを「地域に根ざした施設」とされており、当施設は、広島市の地域リハ事業に携わり、所在地である中区のリハビリ窓口施設を担っている。第28回全国老健大会では、地域リハ事業の一つである「住民運営の通いの場」の立ち上げ支援の活動内容について報告したが、今回「地域リハ事業のネットワーク構築と人材育成における取り組み」について、窓口施設の立場から報告する。
【背景】
広島市の地域リハ事業では、市内8区内にそれぞれリハビリ窓口施設を設け、行政・リハ職との連絡・調整を行っている。窓口施設の主な活動の一つが、住民運営の通いの場を支援する「地域介護予防拠点整備促進事業(以下、拠点事業)」へのリハ職の派遣調整であり、派遣可能なリハ職の名簿を区ごとに作成している。
広島市の拠点事業は、高知市が作成した「いきいき百歳体操」を週1回以上行うことを推奨しており、リハ職の派遣内容は、運動の効果や必要性の講義、体力測定、体操指導や助言等である。
また、広島県では、「地域リハビリテーション専門職等人材育成研修体系」を整備しており、人材育成計画を基に基礎及び専門研修を受講、受講後には修了証を交付している。研修においては地域包括ケアシステムの理念や実践方法を習得し介護予防・重度化予防等に取り組むリハ職を育成している。
【経過と取り組み内容】
当施設は、平成29年4月の地域リハ事業開始時より中区のリハビリ窓口施設を担当している。事業開始時の中区リハ職名簿登録者数は、当施設を含め4施設9名であり、平成29年度は、立ち上げ拠点数32ヶ所、リハ職派遣調整は延べ174名と増加している。また令和7年6月現在、中区の拠点数は全98ヶ所、名簿登録者数は11施設28名となっている。
地域リハ事業を推進するにあたり、ネットワーク構築を目的として、まずは中区リハ職同士の情報共有がスムーズに行えるように、メール連絡の他にスマホアプリを活用した情報共有ツールの導入を試みた。スマホアプリでは、派遣依頼内容、拠点の支援状況報告、疑問点や相談等を投稿し、登録者全員が必要時に的確に、かつ気軽に共有できるものとした。
次に、リハ職同士の情報共有や知識・理解を深める場として、中区リハ職連絡会を開催した。この連絡会では、当施設が中区リハ職代表として出席した行政との地域リハ事業担当者会議内容の報告や、地域リハ事業に関わる勉強会、課題に対する意見交換等を行った。
また、協働する区・地域包括支援センター職員との情報共有や意見交換を行うために、年に1~2回の中区拠点担当者会議を開催している。
そして、地域リハ事業に多くのリハ職が関わってもらえるよう、中区リハ職に対して啓発活動と人材育成を行った。特に事業開始当初は拠点の存在を知らないリハ職が圧倒的に多く、施設内外で地域リハ事業について勉強会の開催を行うとともに、広島県地域リハ研修修了証交付者には声をかけ、実際の拠点支援の様子を見学してもらった。
広島市拠点事業への名簿登録要件は指定されてないが、専門職の質の担保として、中区では、既登録施設内での研修または県の地域リハ研修を受講し、実際の拠点支援を見学したことのあるリハ職を講師派遣するようにしている。
県の研修修了者は、地域リハ事業に関する知識や興味を持っているが、実際に広島市ではどのように活動すれば良いのか分からない方が大半であるため、当施設から中区での実際の活動について説明を行い、講師派遣ができるまでのサポート体制を整備した。サポート体制として、見学の調整、見学後の説明、講師担当時のフォロー等を行うが、令和6年度からは拠点事業への新規参加施設が増えたこともあり、当施設の支援の様子を動画撮影してDVDを作成し、活用している。
【課題と今後の展望】
事業開始の初年度は、新規の立ち上げ拠点が多い中、中区の名簿登録者は他区に比べても少ないため、一人のリハ職の派遣回数が多くなることから、調整が難しいことがあった。一方で、少人数だからこそ情報共有やコミュニケーションをとりやすく、また、登録者個々の経験値を上げられることの良さもあった。
近年は徐々に拠点事業への認知度が上がり、地域貢献活動として事業に参加する病院や事業所も増えてきたことで、一人のリハ職にかかる負担は軽減されてきている。今後、新規の立ち上げ拠点は減少している中でも、見学や実践経験が積めるよう、また、既存リハ職のこれまでの経験が新規リハ職と共有できるような体制を整えることが必要と考えている。
中区の地域リハ事業全体としては、新規拠点の立ち上げ、参加住民の高齢化対策、拠点離脱者のフォロー、拠点事業とその他の事業との連携等の多様な課題がある。今後、高齢者の拠点への参加割合8%を目指しながら地域づくりを行うためには、地域内のリハ職のさらなる理解と協力が必要であり、引き続き地域リハ事業の連携の輪を広げていくとともに、新規名簿登録者が安心して参加できるよう窓口施設として活動していく。
【まとめ】
地域リハ事業窓口施設として8年間活動する中では多様な課題があり、今回はその一つを報告した。このことは、いずれも施設間や職種を越えて向き合い協働してきたものであり、地域共生社会の実現のため、老健やリハ職が地域に貢献できるよう、今後も地域の多職種とともに行政や他領域の専門職、地域住民等とのつながりを大切に活動していきたい。