講演情報

[27-P-STR1-06]医療機関訪問による医療介護連携とベッド稼働率の向上

島根県 石川 涼雅 (益田市立介護老人保健施設くにさき苑)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】
現在日本では人口構造変化における問題として、2025年問題や2040年問題が頻繁に取り上げられており、日本では2025年には総人口に占める高齢者の割合、いわゆる高齢化率が約30%となり、さらに2040年には高齢化率が約35%となることが予測されている。
私の住む島根県益田市では総人口が2020年に45,889人、2024年に43,353人となっており、高齢者人口は2020年が17,361人、2024年が17,174人となっている。高齢化率で見ると、2020年が約37.8%、2024年が約39.6%となっており、2020年時点で既に2025年問題だけでなく2040年問題に直面している状況である。
【目的】
全国に先駆けて高齢化が進む益田市において、医療・介護の需要増加と生産年齢人口減少に伴う医療・介護の供給減少の結果、需給関係にギャップが発生することで必要な方に必要なサービスが行き届かない可能性がある。
益田市における二次救急の供給状況は2病院で484床、急性期以上に絞ると高度急性期が40床で急性期が296床の計336床となっている。このように益田市では高齢者人口が多い反面で、入院受け入れが可能な医療機関・病床数が少なく、そのような地域においては早期退院・早期受け入れができるかどうかは患者の動きをスムーズにするうえで非常に重要であると考える。介護施設において医療機関からの入所の受け入れをスムーズに行うことができれば、その分医療機関における入院の受け入れもスムーズに行うことができるのではないか。よって介護施設におけるベッド稼働率と医療機関におけるベッド稼働率の上昇は地域包括ケアシステムの推進に寄与できると考えた。
そこで医療機関・介護施設・在宅という三者関係の中でスムーズな流れが構築できれば、ベッド稼働率の上昇と地域包括ケアシステム推進に繋がると考え、活動を始めることとした。
【方法】
まず初めに医療機関・介護施設・在宅におけるスムーズな流れの構築のために必要なことは何か検討を行った。その結果、当時は患者及び利用者の受け入れを行ううえで必要な情報が事前に十分に揃っていないためにサービス利用者の流れがスムーズにいきづらくなっているのではないかと考え、情報収集・情報共有の強化を行っていくこととした。
活動開始前においても、当苑入所後のケアやリハビリの目標設定のための情報収集や利用者家族との信頼関係の構築などのために、自宅訪問や面談は行っていた。つまり、介護施設と在宅の関係における情報収集・情報共有は比較的実行できていたと考えている。しかし、医療機関との関係については情報共有が不十分であった。
以上を踏まえ、事前に患者様の様態や意思疎通の可否などを実際に目で確かめ、普段の様子を担当看護師や相談員などから情報収集し、また患者本人や家族との顔合わせも行うため、医療機関への定期的な訪問を開始した。
具体的な方法は次の通りに行う。各医療機関の相談員より当施設相談員宛てに電話にて入所の相談が入る。その時点で年齢や性別などの基本情報や入院に至った経緯、主訴や服薬情報、家族構成や住まいなどの家庭環境などについて簡単に聞き取りを行う。場合によっては情報提供書などをFAXで送ってもらうこともある。その後ベッド管理表を見ながら大体の入所日の目安を決め、相談元の医療機関を訪問する。訪問時点で既に入所予定日がある程度決まっているため、訪問の結果、問題が無ければその場で入所日を相談元医療機関へお伝えし、医療機関での退院の最終調整も始まる。その後当施設では週2回開催している判定会議で協議しその場でケアプランも作成し、正式に入所決定となる。
【結果】
活動の結果、ベッド稼働率は令和5年度に96.3%だったところから令和6年度は97.5%へ、さらに令和7年度の6月末時点では99.3%へと上昇する結果となった。
また、入所前における居所の内訳も令和5年度は自宅170件(63.2%)、医療機関77件(28.6%)、その他22件(8.2%)であったところから、活動を始めた令和6年度に自宅146件(48.2%)、医療機関145件(47.9%)、その他12件(3.9%)へと変化した。医療機関からの入所が約2倍に増え、入所者数全体に占める医療機関からの入所者の割合も約20%上昇し、訪問開始による効果が大きく見受けられる結果となった。
【考察】
医療機関からの相談から実際に入所するまでに要する期間は平均で約2週間と、比較的早期受け入れが実行できている。そこには、入所の受け入れについて、施設長から当施設相談室室長に対してある程度の決定権が委ねられていたことも大きく影響し、スムーズな受け入れへと繋がったと考える。
また、医療機関への訪問を継続するうちに、医療機関側も介護施設が入所の可否を判断するうえで必要な情報や入所が適切なのはどのような患者なのかなどの理解が深まり、活動開始当初に比べて相談の段階で必要な情報が十分揃う回数が増加した。それによりやり取りの回数を減らしながらも情報の質の確保が可能となり、よりスムーズな入所者の受け入れへと繋がった。
【終わりに】
今回の活動は医療機関との関係により焦点を絞った活動であり、結果として当苑のベッド稼働率の上昇と医療介護連携の強化に繋がった。
介護老人保健施設は地域包括ケアシステムの中で地域の住民が安心・安全に在宅生活を送れるように支援するうえで、非常に重要な役割を果たす。在宅と介護施設の関係だけでなく、医療機関から在宅復帰を目指す中で間に入り、その後の在宅生活をより良いものにしていただくための役割も果たすことができる。
全国に先駆けて高齢化が進む益田市において、地域包括ケアシステムの実現に向けた活動は、日本全体における高齢化への対応の一つのモデルとなる可能性を秘めている。
今後も活動範囲を広げながら訪問を継続し、新たな活動の検討も継続し、地域包括ケアシステム推進に寄与していきたいと考えている。