講演情報

[28-O-A016-03]接遇改善 今一度見直そう(その声掛け、大丈夫?)

兵庫県 前田 諭志, 山崎 洋, 三浦 隆一 (介護老人保健施設ウエルハウス清和台)
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【はじめに】
現在要介護者(要支援者)認定者数は2021年度末で690万人である。前年よりも約8万人増加しており、過去最多となっている。高齢化もあり、要介護者(要支援)認定数も増加傾向になっている。
当施設3階療養棟は定員59名で要介護度3~5の利用者が30名以上入所されている。マンパワー不足や介助量の多さ、頻回なコール対応、利用者・家族からの過度の要望など日々の業務の中で不安・イライラ、焦りから利用者に対し、対応や声かけが悪くなってしまい、利用者や家族より職員の接遇に関するクレームがあった。
そこで今回職員に接遇に関してのアンケートを行い、接遇改善、スピーチロック廃止を重視した取り組みを行い、課題を見つけたので報告する。
【研究方法】
1.対象者
全3階職員30名
2.期間
2024年10月15日~2024年11月11日
3.方法
10月15日~20日に1.「挨拶ができているか」2.「言葉遣いが丁寧か(スピーチロックはしていないか)」3.「相手の目を見て話しているか」4.「忙しくても業務優先になっていないか」5.「その時々で対応が変わってないか」の5つの質問を作成し、「いつもできている」「大体できている」「どちらともいえない」「あまりできていない」「できていない」の5つで回答してもらった。
その後、アンケート結果から言葉遣いに焦点を当て、「ちょっと待って」や「立たないで!」「座って!」など命令形・スピーチロックと言われる利用者の行動を抑制するような声掛けではなく、「~するので待ってください」や言い切った声掛けをしないよう心がける文例を挙げた表を作成した。
10月20日~11月5日の期間、表を各職員に配布、休憩室やトイレなどに掲示し、活用してもらうようにした。
当3階には外国人職員も複数在籍しており、その職員へは実際に声掛けをおこなっている現場を見てもらい、参考にしてもらった。
接遇改善の取り組みを行った後、11月5日~11日に再度5つの質問と自由記述によるアンケートの実施を行った。
4.倫理的配慮
職員に目的説明を行い、個人が特定できない無記名でのアンケートとした。聴き取りを行った職員には、結果について本研究でのみ使用することを説明した。
【結果】
回収率は1回目90%(27/30名)、2回目80%(24/30名)であった。ここでは2.「言葉遣いが丁寧か(スピーチロックはしていないか)」についてまとめる。
「いつもできている」が研究前は5名であったが研究後15名に、「大体できている」が18名から6名「どちらともいえない」が4名から1名と変化が見られた。「あまりできていない」「できていない」は研究前後でも0名であった。
アンケートからは「待たせてしまう理由を言ったり、行動の理由を聞くことで利用者に圧迫感をかけずに介助ができた」との意見があった。加えて利用者に寄り添い、安心してもらえるような対応や態度を取っていることもわかった。
また、『「ちょっと待って」とつかう声をかけることもあったが声のトーンを変えたり、語尾が強い言葉を使わないように気を付けた。』また、「理由を説明しても何度も同じような訴えやコールをする利用者に対してはどうしても言い方が強くなってしまうことがあった。」という反省の意見もあった。
聞き取りを行った職員からは「他の職員の利用者への声掛けを見て参考・工夫した、発音やイントネーションのつけ方が難しい、他職員の声かけが良い声かけなのか気になった」と意見も出た。
利用者や家族からのクレームがこの期間以降もみられず、利用者からは「厳しく言われることがなくなった」「しっかりと待つ時間を言ってくれて待ちやすくなった」、家族からは「前と比べて言葉遣いが良くなった」「怒りっぽい方にもきちんと優しく説明や言葉をかけていてすごいです」と職員の対応に関して好印象な意見が見られた。
【考察】
「スピーチロックの廃止は接遇の観点からも、利用者の尊厳を守る観点からも、今後の介護現場にとって非常に重要な取り組み課題」と原氏1)は述べている。
今回の利用者への声かけ、スピーチロック廃止に取り組んだことで職員1人1人の意識や態度が変わったと考えられる。また原氏2)は「職場内で不適切な言葉かけへの違和感を大切にして取り組みを進めていくことでスピーチロックを限りなく0に近づけていくことができる」とも述べている。
各職員では利用者の声かけの工夫を心がけて実践しているが、職員間でお互いの接遇・スピーチロックに関して注意し合える環境や話す機会を作っていくことが必要だと考えられる。
また外国人職員に関しては言葉のニュアンスの違いもあり、伝達方法を考えていかなければならない。
【終わりに】
職員へのアンケートは自己評価だけであったため他者評価も取り入れるという課題もできた。介護職として大切なことは利用者と同じ目線でコミュニケーションを取り、相手の思いを否定しないことが信頼関係を築くうえで必要であると考える。
今回の取り組みで職員の接遇、スピーチロックへの意識が変わったと考えられるが接遇の5原則(挨拶・身だしなみ・言葉遣い・表情・態度)をふまえた接遇改善を継続・スピーチロックの廃止に向けて今後も取り組んで行きたい。
【引用文献】
1)2)原克行:『スピーチロックの廃止に向けて「何気なく」使ってしまう言葉を見直そう』高齢者安心・安全ケア,vol.14 NO2,31-39