講演情報

[28-O-A016-06]100歳以上の暮らしに学ぶ支援の工夫

広島県 片岡 真代, 安田 幸, 新久 理恵, 沖 修一 (老人保健施設べにまんさくの里)
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【目的】
介護老人保健施設の利用者は高齢者がほとんどであるが、その中で100歳以上の超高齢者は少ない。今回、我々は経過中に身体機能の低下が非常に少なかった超高齢者に着目し、他の超高齢者との違いを検討したので報告する。
【対象と方法】
2023年1月から2025年3月までの間に、べにまんさくの里に入所した100歳以上の超高齢者、8名を対象とした。各個人の2023年と2025年のバーセル指数を用いて点数が高点であった1名と、残り7名とを比較、検討した。
【結果】
バーセル指数が高点であった1名(A氏)は、年齢109歳、女性、要介護1であり、多くの項目で自立または軽介助に止まっていた。他の7名の平均年齢は103歳、女性7名であり、介護度は要介護3が2名、要介護4が5名であり、介護度の平均は3.7であった。
A氏のバーセル指数は2023年95/100点であったが、2025年には65/100点に低下しており、32%の低下率であった。他の7名のバーセル指数の平均は2023年63.5/100点であったが、2025年には24.3/100点に低下しており、62%の低下率であった。
A氏で低下した指標は、車椅子とベッド間移乗、入浴、歩行、階段昇降、排尿コントロールの5項目であった。他の7名では、10項目の評価項目全てで得点の低下が認められた。
【考察】
100歳以上の超高齢者の中に、ごくわずかながら元気で日常生活を送ることのできる人たちがいる。今回検討対象となったA氏は2023年のバーセル指数が95/100点であり、日常生活動作はほぼ自立した状態であった。生活意欲が高く、一日の習慣が確立しており、毎日の日課を継続して行っていた。A氏は元気であり歩行可能であったことから、入所後フロア内を歩行器にて歩行していたが、今年に入り連続して9回の転倒を来した。骨折こそ起こさなかったものの、転倒することが増えたため、歩行に対して慎重な対応に切り替えていった。
このために、2年間の間に、何れも歩行動作が基本となる車椅子とベッド間移乗、入浴、歩行、階段昇降、排尿コントロールの5項目で得点の低下が見られ、32%の機能低下に繋がった。
一方、他の7名では2023年のバーセル指数の平均は63.5/100点であり、介護度も平均2.9と、多少の介護を要する状態であった。2025年には、2年間の加齢が加わったこともあり、バーセル指数の平均は24.3/100点で62%減少という顕著な機能低下に繋がった。
入所者に対するケア内容は、各個人の身体機能の程度に合わせて変化を持たせている。
入所時、身体機能の高かったA氏に対しては、
1.生活リズムの継続を支える支援として、日課の継続、最小限の声かけ、物を落とさない様に持ち運び用のカゴを提供
2.転倒後の迅速な見守り支援として、リスク管理(転倒防止)と本人の回復力のバランスを考慮した見守り支援、自操練習支援
3.多職種連携による個別支援として、本人の意欲、身体状況に応じた支援、生活の楽しさを守る介護として、自由な活動と安全性のバランスを重視した支援を心掛けた。
一方他の7名では、個人の身体状況に合わせた介護を行ったが、当初の身体能力低下が強かったために、特に歩行などの運動面は積極的な支援を行うことができなかった。また身体的な特徴としてA氏に難聴は見られなかったが、他の7名全員に聴力障害が見られ、そのうち補聴器の使用は1名であった。難聴の影響で、コミュニケーションが一方向になりやすく、介護士との意思疎通が十分ではなかった可能性が考えられた。
今回の反省点としては、当初自力歩行可能であったA氏に対し、積極的に自力歩行を進めていたが、複数回の転倒を繰り返した。このために自力歩行に対して抑制的な支援となり、その結果がバーセル指数32%の低下に繋がったと考えられた。歩行時に付き添い介護を行うなど、支援に工夫があったのではないかと考えられた。
【結論】
100歳以上の超高齢者でも、日課を大切にしながら自立した生活を維持することは可能であり、本人の意欲や生活習慣を支える支援が大きく関わっていることがわかった。また聴力が良好であることで職員との意思疎通が図りやすく、自立度にも良い影響を与えていた。今後は、難聴による関わりの難しさを補うためにも、補聴器の使用検討を含めた支援の工夫が重要と考えられる。