講演情報

[28-O-A016-07]当施設における褥瘡予防への取り組み[第2報]足部と靴の評価から一体的ケアの構築に向けて

長崎県 秀嶋 敏和 (介護老人保健施設恵仁荘)
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【はじめに】
当施設では褥瘡予防委員会を中心に「褥瘡ゼロを目指して」継続的に取り組みを行ってきており、褥瘡発生数としては年々減少傾向にある事を第23回九州ブロック老健大会にて報告を行った。しかし、介護老人保健施設の褥瘡好発部位の上位である仙骨・尾骨が併せて63.7%(第4回日本褥瘡学会実態調査委員会報告2[2018])であるのに対し、当施設ではR4~5年度の褥瘡発生部位として、仙骨・尾骨は併せて27.3%であり平均値を下回っていたが、足部関連の褥瘡の割合が40.9%と仙骨・尾骨の割合を上回り増加傾向を認めた。
足の皮膚疾患や爪疾患および骨構造の変形は、褥瘡発生の土台となり得る重要なリスク因子であり、浮腫は皮膚耐久性の低下を招き、褥瘡形成のハイリスク要因となると指摘されている。また、靴の形状や設計の変形が、足部の褥瘡発症(特に糖尿病性足潰瘍)や再発に深く関与することは臨床や研究で示されている。
今回、当施設入所者の足部と靴の評価を実施し、今後のフットケアの在り方および状態に合わせた靴の選定、更に施設での一体的なケアの構築に向けて検討したので報告する。
【対象】
令和6年4月1日~令和7年3月31日の1年間で入所していた247名の内、再入所の方を除く202名。内訳は男性88名、女性114名、平均年齢84.6歳、平均介護度2.72。主な疾患は脳血管障害54名、整形疾患91名、内部障害34名、神経難病7名、その他16名。内、糖尿病を合併している方36名、認知症の診断を有する方74名。
生活面の移動形式は、車椅子介助82名、車椅子自立66名、歩行器歩行24名、杖歩行10名、独歩20名。リハビリ時の訓練レベルでは、座位保持レベル9名、立位保持レベル38名、歩行レベル[独歩・杖・歩行器・平行棒内]155名。
【方法】
当施設で独自に作成した評価用紙を用いて、チェック方式で足部と靴の評価を入所時に実施。
<足部の評価>
皮膚・爪の状態観察、足の変形の有無と変形の種類、浮腫の有無についての観察を行った。
<靴の評価>
靴の種類の区分、踵の状態、中敷きの取外しの有無、甲部分の調節手段形式、破損・摩耗の有無、適合判断として以上の項目と生活移動状況も考慮して靴の適・不適の判定を行った。
【結果】
<足の評価>
1)皮膚・爪の状態
爪白癬を認める方が95名(47.1%)と約半数近くの方が症状を有し、爪肥厚を認める方が58名であり、そのうち爪白癬と爪肥厚の両方を合併している方が49名。その他、皮膚の乾燥24名、発赤17名、チアノーゼ11名、外傷9名、たこ7名、足白癬6名。
2)足の変形
変形を認める方が45名(22.3%)。内訳は、外反母趾33名、内反小趾5名、鍵爪趾8名、槌趾6名、ハンマー趾4名。内、11名の方が複数箇所の変形を認めていた。
3)浮腫の有無
浮腫を認める方が44名(21.8%)。
<靴の評価>
4)靴の種類
介護リハビリシューズが158名と最も多く、スニーカー12名、ルームシューズ[クローズ型]10名、ルームシューズ[オープン型]7名、踵折れ靴[スリッパタイプ]10名、サンダル3名、革靴2名。
5)踵の状態
月形芯が保たれている靴153名、踵の形が保たれていない靴49名。
6)中敷きの取り外し
取り外し可93名、取り外し不可109名。
7)靴の調節
甲部分の幅の調節が可能な靴157名、その調節手段の形式としては、マジック式128名、チャック式16名、紐式13名。
8)靴の破損・摩耗
破損・摩耗有り24名、摩耗・破損無し178名。
9)適合判断
足部と靴の評価および移動形式の状況から判定を行い、適合の方が167名(82.7%)、不適合の方が35名(17.3%)であり、不適合の理由としてはサイズがあっていない方13名、移動形式との乖離がある方10名、破損・摩耗している方9名、型崩れの方6名。また、不適合者の35名の内、足趾の変形がある方8名、浮腫がある方15名、変形・浮腫の両方ある方11名。尚、不適合の為に靴の変更もしくは購入を行った方は25名であった。
【考察】
今回、足部の褥瘡発生割合の増加を受けて、1年間の入所者の足部の状態および靴の状態の評価を実施した。菅野らは「65歳以上の高齢者の約70%が爪や足部変形、皮膚のトラブルなど足病変を抱えている(2019)」と指摘している。本調査結果からも爪白癬の方が47%と約半数近くの方が有しており、足の変形においては22%、足の浮腫も21%と比較的多くの割合を占め、何らかの足病変を一つでも抱えている方は165名(81.6%)という結果が得られた。また、足と靴の評価から判定が不適と判断した方が35名(17.3%)であり、足の変形と浮腫はそれぞれ単独でも靴の不適合率が54.1%となり上昇させる要因となっている。よって、要介護状態で様々な疾患を有している当施設入所者においては足病変を抱えている割合も高く、改めて足の観察、フットケア重要性が示唆され、今回の取り組みで早期にリスクを発見できたことで、令和6年度の足部の褥瘡の割合は19.2%と減少することができたと思われる。
更に、姫野らは「介護予防の必要な高齢者の90%以上が足に何らかの変調を有し、立位バランスの低下が転倒経験に繋がる(2004)」、長谷川は「適切な靴の着用が転倒リスクを減少させる(2016)」と報告している。当施設においても移動やリハビリ時などに歩行や立位動作を行う方が155名(76.7%)と多く、運動能力や活動を維持しリハビリを充実して実施していく為にも、安定して動作を行えるように、足部の状態だけでなく、靴の状態や幅の調節、インソールの検討や破損の状況などをしっかり判断し選定を行っていくことが肝要である。
【今後の展望】
現在、介護老人保健施設のケアマネジメントとして、「リハ・口腔・栄養」の一体的な取り組みが求められている。今回の調査で得られた情報から、足部の褥瘡(足部の病変も含む)は栄養状態やリハビリ時の動作や靴の着脱などのADL動作とも密接に関連すると考えられ、「リハ・口腔・栄養」に加え「褥瘡」も一体的に捉え、多職種でケアマネジメントを強化していきたいと考える。