講演情報

[28-O-C005-02]委員会での2年間の取り組みから見えた成果と課題限られた資源の中でも多職種連携で状況は改善できる

岩手県 千葉 良江, 佐々木 成大, 鈴木 浩子, 小林 貴恵, 吉田 可奈, 伊藤 真希 (介護老人保健施設さわなり苑)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】
老健の本来の役割は高齢者が家庭生活へ復帰できるよう機能回復をサポートすることである。しかし、超高齢社会に突入したことにより機能回復が困難となり長期入所となる症例も多くある。このような状況で褥瘡の発生はさらなる弊害をもたらすため、発生予防はもとより早期発見・早期治癒により弊害を最小限に留めることが重要になる。2年間に亘る委員会での取り組みにより、限られた医療・福祉資源の中でも褥瘡発生から治癒までの期間短縮が図れた経過と、そこから見出された当施設の今後の課題を報告する。
【経過】
これまで当苑では褥瘡予防対策委員会を中心に、褥瘡発生者と要注意者をリストアップし、個別に対応方法を検証し全体に周知することで褥瘡対策を進めてきた。その中で、個別検証は行ってきたが年間を通しての発生人数や発症原因の経過を追えるデータがなく、課題と目標が作成困難と考えた。そこで褥瘡予防対策委員会として【氏名、年齢、発生日、部位、重症度、原因1~3、詳細(部位・原因)、反省・対策(治療内容など)、治癒日、期間、備考(使用していた福祉用具など)】を記入する発生者リストを作成し、2年間に亘りデータ収集を行い、そのデータから褥瘡予防への取り組みを分析することで、当施設の褥瘡対策の効果と課題を考察した。褥瘡評価はDESIGN-R2020を使用しているが、令和5年度はDESIGN-Rに基づいた褥瘡の評価が正しく行われておらず褥瘡であっても褥瘡として報告されなかった症例もあり、職員間での褥瘡・評価に対する意識・理解が不十分であると感じた。このことから令和6年度にはDESIGN-Rに基づいた評価を徹底するよう周知を行い、判定・評価に迷う際には褥瘡予防対策委員へ声をかけてもらうよう発信した。
【結果】
死亡・途中退所例を除いた褥瘡報告件数は令和5年度が22件、令和6年度は55件。治療期間の平均は令和5年度が27日、令和6年度は18.4日と約10日短縮している。発生時の重症度は令和5年度が9.6点、令和6年度は5.9点と大幅に低下している。令和5年度と令和6年度の発生件数、治療期間・発生時の重症度の平均比較を添付図のグラフで示す。発生原因として、令和5年度は体調不良時に適切な福祉用具(マットレス・クッション)が使用されていない・変更されていないことで発生したものが多かった。令和6年度は比較的ADLが自立している方・離床可能な方の発生が多く、ある程度自力で行えることで本人任せとなり、車椅子離床時や臥床時の除圧が不十分、皮膚状態の観察が適切に行えていなかった症例が多かった。発生部位で多かったのは令和5年度が臀部8件・仙骨部5件、令和6年度が臀部15件・大転子部14件となっている。
【考察】
治療期間の短縮・重症度の低下は、褥瘡の早期発見、適切な治療・対処が行えるようになったと言える。取り組み開始時は褥瘡予防対策委員が中心となり行っていたが、排泄介助時や入浴時に皮膚状態の観察、離床時・臥床時の姿勢・体動の状況確認と観察を行うよう声掛けを行い、褥瘡とは何かを伝え続けることで現在は委員以外のスタッフも率先して褥瘡発生時の対応・観察ができるようになってきている。また、発生原因・好発部位が見えるようになったことで観察・対応のポイントも見えるようになり、体調不良・全身状態の低下が見られる際に適切な福祉用具であるかの確認を行い、適切でない場合には変更を行っている。相談員による入所前実態調査の段階で褥瘡の情報収集がより細やかに行われることで現場は入所時に備えることができるようになり、軽微な皮膚トラブルであっても多職種で情報共有を行うことで、リハビリスタッフは介入の際に、管理栄養士は栄養マネジメントのためのラウンドの際に皮膚状態の観察を行うことができるようになり、観察の目が増えることで皮膚トラブルのさらなる早期発見・対処が可能になった。施設で使用している薬剤・医療材料には限りがあり、現在の処置内容が適切であるかの判断が必要となった際、複数の看護師で創部の状態を確認し施設にある薬剤・医療材料の中から適切な処置の検討をすることができるようになった。発生時の原因を複数あげ多職種間で発生原因・反省点などの検討・分析を繰り返し行い周知する事で、その後の褥瘡発生時の対応提案が職員から早期に発信されるようになった。また、現状としてマットレスやクッションなどの絶対数が不足しており、必要な方の検討を多職種間で行い、限りある資源の中でも優先的に必要な方に使用されるよう調整を行っている。情報共有を密に行うことで利用者に関わる職員それぞれが意識的に観察・発信を行えるようになってきている。
【結論】
2年間の取り組みを通して、発生時の対応は早期に行えるようになったが予防への意識が低い現状がある。今後の課題として、職員の意識・知識のさらなる向上を図り褥瘡予防に努めていくことが求められる。そのためにも褥瘡予防の基本・ポジショニングなどの適切なケアについて全職員、特にも利用者に直接関わることの多い介護職員へ周知できる取り組みを行っていく必要性がある。