講演情報

[28-O-C005-03]ポジショニング表の実用課題と改善の取り組み

福島県 半澤 周一1, 菅野 拓海1, 本田 至1, 蛯名 葉月1, 西山 和貴2 (1.プライムケア桃花林, 2.北福島医療センター)
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【背景】
高齢者の長期臥床においては,栄養状態の悪化などを背景に褥瘡が生じやすく,予防には2~4時間おきの体位交換が必要とされている.当施設では,寝たきり高齢者が多いフロアにおいて,ポジショニング表(以下,表)を作成・運用している.これは,リハビリ以外のスタッフが介入する時間帯にも体位変換を実施できるよう,表を参照して対応できる体制を目的としている.体位交換は定時で実施しているが,スタッフによって利用者のポジションに差があり,除圧が不十分な状態となることもあった.そのため,表には拘縮予防のためのクッション配置や,褥瘡になりにくい肢位・クッションの使い方が分かるよう工夫している.しかし現状では,表に記された姿勢が実際には取られておらず,表が適切に活用されていないことが問題として考えられる.
これに対し,ポジショニングへの理解が深まることで,管理不足で生じやすい褥瘡や関節拘縮といった二次的障害の発生を軽減できるのではないかと考えた.
【目的】
当施設において,要介護度の高い利用者が多いフロアにおけるポジショニングの実施状況をアンケートで実態調査し,課題点の背景や問題点を抽出したうえで,改善策を検討した.
【方法】
対象は,要介護度が高く寝たきりの利用者が多いフロアで勤務する介護士及び看護師27名とした.対象者には以下の9項目についてアンケートを実施した.
Q1.表は見やすいか
Q2.表は気付きやすい場所に置かれているか
Q3.表にあるクッション等,物品の使い方が分からない
Q4.表を見ずに,自分なりのポジショニングをすることがある
Q5.各利用者のポジショニングに対する目的と意義について理解している
Q6.自分が実施したポジショニングを定期的に確認してもらいたい時がある
Q7.利用者に対して実際に行うポジショニングの講習会は必要だと思う
Q8.多忙な業務の中でのポジショニングは手間がかかると思うことがある
Q9.ポジショニングで困っていることがある
回答形式は「強くそう思う」「そう思う」「あまり思わない」「全くそう思わない」の4段階とした.また,Q9では「はい」「いいえ」の2段階回答とし,自由記述欄を設けた.
先ず,1回目のアンケートを実施し,結果から「理解しているが実践できていない」傾向が示されたため,褥瘡や拘縮のある利用者を対象としたポジショニング講習会を実施した.その後,同様の内容で2回目のアンケートを行い,講習前後で回答結果にどのような変化があったかを比較・検討した.なお,2回目のアンケートは26名からの回答が得られた(初回は27名).
【結果】
Q1の表の見やすさについては,講習前に96.3%の参加者が肯定的であったが,講習後は84.6%に減少し,視認性への課題が浮き彫りになった.一方,Q2の表の設置場所に関しては,88.8%から88.5%とほぼ変化がなく,設置環境は一定の評価を得ていた.Q3では,物品の使い方が分からないと回答した者は25.9%から23.1%にわずかに減少した.Q4の表を見ずに自分なりに行うと回答した者は,25.9%から26.9%へとわずかに増えたが,大きな変化は見られなかった.Q5では,ポジショニングの目的と意義を理解していると回答した者が92.6%から88.5%にやや減少した.Q6のポジショニングを確認してもらいたいと回答した者は,77.8%から65.4%へと減少した.Q7の講習会の必要性については85.2%から88.5%と安定しており,高い必要性認識が維持されていた.Q8のポジショニングは手間がかかると回答した者は55.6%から53.8%とほぼ変化がなく,業務負担感は継続して感じられていることが示された.Q9では,ポジショニングで困っていると回答した者が74.1%から57.7%に減少し,困っていないと回答した者は18.5%から42.3%に増加しており,講習を通じた困りごとの軽減が示唆された.
【考察】
本研究では,リハビリ職が中心となって運用している表の活用に関する課題を,寝たきり高齢者が多く在所するフロアのスタッフを対象としたアンケート調査を通じて明らかにし,講習会により改善を図った.
Q3「物品の使い方が分からない」は講習後に肯定的回答がわずかに減少したが,回答者数の違いがあるため,理解度の向上については慎重に解釈する必要がある.Q9「ポジショニングで困っていることがある」では,困りごとを抱えるスタッフが減少し,基本的知識の提供が実務上の課題を一定程度解消する効果を持つことが示唆された.
一方,Q1「表は見やすいか」は評価が低下し,視認性や使い勝手に課題があると考えられた.これは講習により表の使用への意識が高まり,従来見過ごされていた不便さが顕在化した可能性がある.今後は表のデザインや配置の見直しなど,実用性を高める工夫が求められる.
また,Q8「ポジショニングは手間がかかる」は変化が乏しく,多忙さや業務負担は引き続き重要課題である.職員間の連携や業務効率化に加え,職種間の役割認識の違いも影響していると考えられる.先行研究でも理学療法士・介護士・看護師間で責任や関与の度合いに差があることが報告されており,意識の共有と役割の明確化が重要と考えられる.
さらに,Q4「自己流で行う」,Q5「目的と意義を理解している」は変化がなく,知識のみでは行動変容は得られにくいことが示唆された.先行研究では知識・態度・行動の関連性が指摘されており,一過性の講習でなく,継続的な教育と現場でのフィードバック体制が不可欠である.
以上より,講習会は知識向上と実践改善に一定の効果をもたらしたが,視認性や業務負担,多職種連携など構造的課題には継続的な対応が必要である.褥瘡予防に関与する看護師との連携や定期的な意見交換により共通認識を醸成し,実践の質向上を図ることが望まれる.今後は拘縮予防など褥瘡以外の二次障害にも視野を広げた講習会を通じ,利用者の生活の質の維持・向上に貢献していきたい.