講演情報
[28-O-C005-04]リハビリ職を中心とした多職種連携による褥瘡治療
千葉県 ○川島 康平1, 吉川 尚樹1, 飯岡 知恵子1, 加瀬 昌子2, 村上 信乃1 (1.介護老人保健施設シルバーケアセンター, 2.地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院)
【はじめに】
在宅や介護施設では、体調の急変や感染症によって臥床時間が長くなり、褥瘡が発生・悪化することがある。しかし病院と比較すると管理体制の違いや医療職の少なさ、褥瘡に関する知識不足や多職種連携の不十分さ等から対応が難航する例も少なくない。本事例は、在宅での体調不良を契機とした臥床時間の増加に伴い仙骨部褥瘡が発生したが治療に難渋していた。除圧対策と褥瘡処置方法の統一が喫緊の課題であると判断し、デイケアのリハビリ職が中心となって多職種と連携し、治癒に至った経過を報告する。
【事例紹介】
90歳代女性、要介護4。パーキンソン病と左大腿骨頚部骨折の既往があり、老健入所後に在宅復帰し、週2回デイケアを利用していた。屋内移動は車椅子自走とシルバーカー歩行を併用し、娘の介助を一部受けながら生活していたが、X年2月に頻尿に対する薬剤の副作用と尿路感染症により体調を崩した。また、デイケアがCOVID-19によるクラスターにより数週間休止となったことで臥床時間が増加し、3月に仙骨部の褥瘡が発生した。発生直後よりデイケアの担当作業療法士(以下OT)とデイケア看護師からケアマネージャーを通じて、形成外科の受診や介護用ベッドの導入、マットレスの変更などの環境調整を依頼したが、使用物品等はケアマネージャーに一任しておりOTは関与できていなかった。以降、同法人病院の形成外科(月1回)、デイケア利用時の看護師(週2回)、他事業所の訪問看護師(週5回)による処置が継続されたが改善に乏しく、OTからの相談により付属病院の褥瘡対策委員会に所属歴がある理学療法士(以下PT)が5月より介入を開始した。介入時のDESIGN-R2020はD3-e3s3I3CG4n0P9:22点であった。PTは主に環境面と処置内容の調整を行った。
【環境調整】
在宅では介護用ベッドと褥瘡予防用のウレタンマットレスを使用していたが、廃用による動作能力低下によりベッド上での自力体位変換が困難であったため、自動体交機能付きエアマットレス(株式会社CAPE ラグーナ)に変更した。また、デイケア利用時には車いすクッションは未使用であり仙骨部の圧迫を認めた。さらに長時間の座位では体幹が左側へ傾いていたため、座圧測定器(住友理工株式会社 SRソフトビジョン)を用いて評価を行い、空気調整式の車いすクッション(ペルモビール株式会社 ロホ・クアドトロセレクト)の空気圧を調整し、仙骨の除圧と体幹の正中保持を図った。
【褥瘡の処置】
介入前の創部処置は、微温等での洗浄後にイソジンシュガーパスタ軟膏を塗布し、デルマエイドとパーミロールで保護していた。創部は赤色の肉芽部分がなくぬめりが見られ、ポケット形成もあった。また、デイケア看護師と訪問看護師には洗浄方法にばらつきがあり創部の洗浄不足が疑われた。同法人病院の皮膚排泄ケア認定看護師に相談したところ、やはり洗浄が不十分との指摘があり、皮膚排泄ケア認定看護師を通じて形成外科外来でのポケット切開と創部洗浄の指導を依頼した。受診時はデイケアや訪問看護師の同席はできず、PTが同席し医師から洗浄方法の指導を受けた。洗浄方法は、ガーゼで創面やポケット内を十分に擦り表面のぬめりを除去し、流水で十分に洗い流すことを指導された。指導に基づいて処置方法の手順書を作成し、デイケア看護師とケアマネージャーを通じて訪問看護師に周知し、処置の統一を図った。また、介入前は創部の記録がなかったため、週1回の写真撮影をデイケア看護師に依頼し、PTが処置時に定期的に帯同し医師の指導内容について繰り返し助言を行うようにした。在宅での生活状況や処置内容についても、ケアマネージャーを通じ継続的に情報を共有した。
【結果】
環境調整と処置方法の見直しにより、褥瘡は徐々に改善し9月に治癒した。以降、再発は認められていない。
【考察】
自力での除圧が困難な状態に対し、適切なマットレスや車いすクッションの選定・調整により、褥瘡部への圧負荷を軽減することができた。また、創部の洗浄が不十分であった点については、近年注目されている「創傷衛生(wound hygiene)」の概念をもとに見直しを行い、洗浄方法の統一と処置手順の明確化を図ったことで、創部の改善につながったと考える。創傷衛生は、毎回の処置で創面とその周囲を適切に洗浄し、バイオフィルムの形成を予防することで創傷治癒を促進する考え方であるが、在宅や介護の現場ではまだ十分に浸透していないのが現状である。介護・在宅領域では新しい医療情報が入りにくい環境にあるが、病院との連携等により積極的に情報のアップデートを繰り返し、多職種間で共有していくことの重要性が示唆された。
今回の症例では、デイケアのリハビリ職が介入し、医療機関や訪問看護と連携しながら環境整備や処置の統一に関与することで、褥瘡の治癒に大きく寄与した。褥瘡は身体状況、生活環境、ケア内容が複雑に絡み合って発生・悪化するものであり、機能面や環境面に着目できるリハビリ職の関与は非常に有効であると感じた。近年、褥瘡を在宅で治す流れが進んでおり、リハビリ職の養成校でも座圧評価や褥瘡予防に関する教育が強化されている。しかし現場では、依然として褥瘡に対するリハビリ職の関心が低い傾向が見られる。褥瘡管理は多職種連携の象徴的な取り組みであり、リハビリ職が無関心でいることは、チーム全体の機能低下にもつながりかねない。今後は、褥瘡予防や治療をリハビリ職が主体的に関わるべき重要なケアの一つとして捉え、専門性を活かした支援と多職種連携の推進役としての役割を果たしていく必要があると考える。
在宅や介護施設では、体調の急変や感染症によって臥床時間が長くなり、褥瘡が発生・悪化することがある。しかし病院と比較すると管理体制の違いや医療職の少なさ、褥瘡に関する知識不足や多職種連携の不十分さ等から対応が難航する例も少なくない。本事例は、在宅での体調不良を契機とした臥床時間の増加に伴い仙骨部褥瘡が発生したが治療に難渋していた。除圧対策と褥瘡処置方法の統一が喫緊の課題であると判断し、デイケアのリハビリ職が中心となって多職種と連携し、治癒に至った経過を報告する。
【事例紹介】
90歳代女性、要介護4。パーキンソン病と左大腿骨頚部骨折の既往があり、老健入所後に在宅復帰し、週2回デイケアを利用していた。屋内移動は車椅子自走とシルバーカー歩行を併用し、娘の介助を一部受けながら生活していたが、X年2月に頻尿に対する薬剤の副作用と尿路感染症により体調を崩した。また、デイケアがCOVID-19によるクラスターにより数週間休止となったことで臥床時間が増加し、3月に仙骨部の褥瘡が発生した。発生直後よりデイケアの担当作業療法士(以下OT)とデイケア看護師からケアマネージャーを通じて、形成外科の受診や介護用ベッドの導入、マットレスの変更などの環境調整を依頼したが、使用物品等はケアマネージャーに一任しておりOTは関与できていなかった。以降、同法人病院の形成外科(月1回)、デイケア利用時の看護師(週2回)、他事業所の訪問看護師(週5回)による処置が継続されたが改善に乏しく、OTからの相談により付属病院の褥瘡対策委員会に所属歴がある理学療法士(以下PT)が5月より介入を開始した。介入時のDESIGN-R2020はD3-e3s3I3CG4n0P9:22点であった。PTは主に環境面と処置内容の調整を行った。
【環境調整】
在宅では介護用ベッドと褥瘡予防用のウレタンマットレスを使用していたが、廃用による動作能力低下によりベッド上での自力体位変換が困難であったため、自動体交機能付きエアマットレス(株式会社CAPE ラグーナ)に変更した。また、デイケア利用時には車いすクッションは未使用であり仙骨部の圧迫を認めた。さらに長時間の座位では体幹が左側へ傾いていたため、座圧測定器(住友理工株式会社 SRソフトビジョン)を用いて評価を行い、空気調整式の車いすクッション(ペルモビール株式会社 ロホ・クアドトロセレクト)の空気圧を調整し、仙骨の除圧と体幹の正中保持を図った。
【褥瘡の処置】
介入前の創部処置は、微温等での洗浄後にイソジンシュガーパスタ軟膏を塗布し、デルマエイドとパーミロールで保護していた。創部は赤色の肉芽部分がなくぬめりが見られ、ポケット形成もあった。また、デイケア看護師と訪問看護師には洗浄方法にばらつきがあり創部の洗浄不足が疑われた。同法人病院の皮膚排泄ケア認定看護師に相談したところ、やはり洗浄が不十分との指摘があり、皮膚排泄ケア認定看護師を通じて形成外科外来でのポケット切開と創部洗浄の指導を依頼した。受診時はデイケアや訪問看護師の同席はできず、PTが同席し医師から洗浄方法の指導を受けた。洗浄方法は、ガーゼで創面やポケット内を十分に擦り表面のぬめりを除去し、流水で十分に洗い流すことを指導された。指導に基づいて処置方法の手順書を作成し、デイケア看護師とケアマネージャーを通じて訪問看護師に周知し、処置の統一を図った。また、介入前は創部の記録がなかったため、週1回の写真撮影をデイケア看護師に依頼し、PTが処置時に定期的に帯同し医師の指導内容について繰り返し助言を行うようにした。在宅での生活状況や処置内容についても、ケアマネージャーを通じ継続的に情報を共有した。
【結果】
環境調整と処置方法の見直しにより、褥瘡は徐々に改善し9月に治癒した。以降、再発は認められていない。
【考察】
自力での除圧が困難な状態に対し、適切なマットレスや車いすクッションの選定・調整により、褥瘡部への圧負荷を軽減することができた。また、創部の洗浄が不十分であった点については、近年注目されている「創傷衛生(wound hygiene)」の概念をもとに見直しを行い、洗浄方法の統一と処置手順の明確化を図ったことで、創部の改善につながったと考える。創傷衛生は、毎回の処置で創面とその周囲を適切に洗浄し、バイオフィルムの形成を予防することで創傷治癒を促進する考え方であるが、在宅や介護の現場ではまだ十分に浸透していないのが現状である。介護・在宅領域では新しい医療情報が入りにくい環境にあるが、病院との連携等により積極的に情報のアップデートを繰り返し、多職種間で共有していくことの重要性が示唆された。
今回の症例では、デイケアのリハビリ職が介入し、医療機関や訪問看護と連携しながら環境整備や処置の統一に関与することで、褥瘡の治癒に大きく寄与した。褥瘡は身体状況、生活環境、ケア内容が複雑に絡み合って発生・悪化するものであり、機能面や環境面に着目できるリハビリ職の関与は非常に有効であると感じた。近年、褥瘡を在宅で治す流れが進んでおり、リハビリ職の養成校でも座圧評価や褥瘡予防に関する教育が強化されている。しかし現場では、依然として褥瘡に対するリハビリ職の関心が低い傾向が見られる。褥瘡管理は多職種連携の象徴的な取り組みであり、リハビリ職が無関心でいることは、チーム全体の機能低下にもつながりかねない。今後は、褥瘡予防や治療をリハビリ職が主体的に関わるべき重要なケアの一つとして捉え、専門性を活かした支援と多職種連携の推進役としての役割を果たしていく必要があると考える。
