講演情報

[28-O-C006-01]COVID-19のクラスター発生時の取り組みについて~初動の見直しに至った経緯~

大阪府 開發 尚代1 (1.介護老人保健施設シルバーハウス高槻, 2.介護老人保健施設シルバーハウス高槻, 3.介護老人保健施設シルバーハウス高槻)
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COVID-19のクラスター発生時の取り組みについて
~初動の見直しに至った経緯~


1.はじめに
当施設は2階~4階の3フロアで構成された入所定員100名の施設である。入所者の要介護レベル等によりフロア分けしており2階は介護レベルが低い方、3階は医療処置の多い重症者、4階は認知症で徘徊等の症状のある方が入所されている。
今回2024年3月22日~4月15日に当施設で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生した。再発防止に繋げるために発生状況を整理しアセスメントを実施、その結果を基に初動の基準を見直し再作成したので報告する。

2.倫理的配慮
当施設倫理委員会の承認を得て実施した。

3.経過
25日間で18名の利用者が新型コロナウイルス感染症に感染し、酸素投与や数日間にわたる持続点滴を必要とした重症者が10名、軽症者が8名であった。重症者のうち4名が医療機関に搬送された。
面会は13時~16時を15分ずつの枠に分け1枠につき1組2名までの事前予約制で行っていた。これは面会者が集中しないようにする感染対策の一環であったが感染者が発生後は全フロア面会中止とした。

4.取り組み
感染者18例の体温・SPO2・咳嗽・食思・ADL・BMI・基礎疾患の情報収集をした。発熱・咳嗽・SPO2低下の状況については日数経過に伴い人数が減少したため、症状出現から5日目までのデータを百分率で表示し活用した。

5.結果
発熱については初日に高確率でみられたが解熱剤の投与後、人数は減少した。咳嗽は症状出現より3日間は約70%にみられた。SPO2低下による酸素投与は症状出現の2日目に22%から44%へと1.5倍に増加し、その後約30%が5日目まで持続して酸素投与を必要とした。
重症化した10例は食思低下やADL低下が著しく見られ、基礎疾患にCOPD・糖尿病・高血圧症・心疾患・腎疾患があった。
BMIは14~25であった。
2階~4階フロア別の新規陽性者出現日は初発が2階フロア、次いで3階フロア、そして4階フロアと再度2階フロアへと発生場所が移動していった。

6.考察
今回のクラスターでは突発的な高熱(78%)から始まり頻発する湿性咳嗽(69%)がみられ、酸素投与の必要な人数は2日目に増加(22%→44%)した。これは発熱や咳嗽といった生体防御反応による症状は感染直後より出現し、換気能力の低下といった機能低下の症状は臓器の障害がある程度進行してから出現するためだと考えられる。
また医療機関に搬送された4名は免疫力の低下による全身状態の悪化と食思低下に伴うADL低下を招き、さらに基礎疾患により多臓器不全を起こしやすい状態であったため重症化したと思われる。

次に発生状況であるが今回のクラスターの初発となった2階フロアは徘徊などの症状のある利用者はなく、比較的感染対策が容易であった。しかし発生場所が3階フロア次いで4階フロアと再度2階フロアへと移動したことについては外部との接触が制限されていた状況を考慮すると、職員による媒介であったのではないかと推察される。なぜなら同時期にスタッフにも感染者が出ていたことと、当施設ではスタッフの勤務フロアが1日毎に変更され固定制ではない為である。
また陽性と診断された利用者に対し感染防御策を講じていたが症状出現2日前から感染力を有するとされているため、陽性と診断された利用者だけの感染防御策では不十分であったと思われる。

今回のクラスター発生時の初動は37.5度以上の発熱でカーテン隔離の実施という基準を設けていたが、この基準での隔離では必要性の認識が甘くなり確実に行うことができていなかった。また体温を基準とすると体温測定をするまで隔離の判断ができず対応が遅くなってしまうという点からも初動の基準の見直しが必要であると考えた。
今回の結果で症状出現3日間は咳嗽が高確率で見られたため基準の要として咳嗽に着目した。咳嗽であればどの職種のスタッフでも症状の出現に気付くことが容易であり、早期に発見できると考えた事も着目した理由のひとつである。さらに今回の症状の推移の結果を周知することで隔離の必要性を再認識し確実に実施できるようになると考えた。
また食思低下の利用者に対し食べやすい食事形態や付加食の提供、食事介助するなどカロリー摂取を維持することで体力の低下を防ぎ、リハビリスタッフとも連携しADLの低下を予防する必要がある。

7.まとめ
今回クラスターが発生した一番の原因は職員による媒介であり、すなわち基本的な感染予防対策が出来ていなかった事が考えられるため、標準予防策(スタンダードプリコーション)の徹底が必要である。
また適切なタイミングで初動を行うことが出来る事もクラスターの予防に重要である。
その為の初動の基準としては以下の(1)~(4)とした。
(1)37.5度以上の発熱はカーテン隔離の実施
(2)発熱がなくても頻発する咳嗽があればカーテン隔離の実施
(3)37.5度以上の発熱・頻発する咳嗽・SPO2低下の症状出現時は個室隔離
(4)陽性者が発生したフロアは汚染区域とする(勤務するスタッフを固定する)
*隔離は看護師の判断で施行し解除のタイミングは医師に確認する

今後クラスターが発生しないよう勉強会や研修を通じ全スタッフへ初動の基準を示すことで多職種が連携し、統一したケア、感染対策の改善、早期の基本的対応を実施していきたいと考える。