講演情報

[28-O-C006-02]安全な外出を家族と一緒に~看取りケアでの取り組み~

東京都 大宮 寛美 (介護老人保健施設メディケア梅の園)
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【はじめに】
日本は2018年に超高齢社会に突入した。それに先立ち、2000年の介護保険制度の導入により、現在では最期の場所として介護施設・自宅での死亡数が増加傾向にある。今後加速する多死社会の中で、介護施設は「病院完結型から地域完結型の医療・介護へシフトする場」、「介護施設や在宅において最期までその人らしい人生を全う出来るよう支える場」という役割を担うこととなる。
【目的】
当園でも地域における介護施設としての役割を担うべく2017年より看取りケアを開始。現在年間平均25名看取らせて頂いている。その中で、2024年看取り同意後、あるご家族からの外出の希望があり、当時看取りケア期での外出は行っていなかったが、今回COVID-19が5類に移行となったこともあり、看取りケア同意後に外出を希望される利用者様やご家族のニーズに寄り添い、安らかな最期を迎えられるよう、外出を可能に向けた取り組みを行ったためここに報告する。
【方法】
2024年10月より施設内委員会の終末期委員会にて外出に関連した書類の作成を開始。外出同意書、外出までのフローチャートと外出チェックリストを作成。当日に家族へ説明する注意事項説明は同意書に追加。加えて外出の説明に使用する際のパンフレット作成も行った。外出同意書は医師許可のサイン欄と利用者ご本人又はご家族(代理人)のサイン欄を設け、6つの外出に関する注意事項を記載した。外出チェックリストはチェック内容を11項目記載。内容は医師の許可、同意書関係についての項目、外出当日に関係した項目をあげている。外出フローチャートは看取りケア同意の段階から箇条書きで内容を記載、それぞれの項目に対して二択形式でフローが進められるよう作成した。提案から実施までの流れとしては、まずご家族へパンフレットにて説明と提案。次に希望の有無を聴取し、希望があった場合は同意書にサインをもらう。その際に当日までの準備や流れをフローチャートに沿って確認、注意事項説明書の確認、チェックリストの記入を行う。原則として、職員同乗はしない、外出時の移動手配は家族依頼、実施する利用者の状態は医師の指示のもと行う、という方向で実施を進めた。原則の課題に対しての対策は以下のようにした。「職員同乗なし」については外出基準を決め、その基準に満たした状態の利用者のみを実施対象とする。「移動手段の手配は家族へ依頼」については移動手段の情報提供を家族に行い、予約等は家族依頼することで実施する。「実施する利用者の状態は医師の指示のもと行う」については外出基準を満たし、かつ医師の許可を受けた利用者のみを実施する。2025年5月に実施を試みた症例を報告する。
【症例】
2025年5月事前に医師と検討し、提案の許可は得て看取りケア利用者様とご家族に対して外出を提案。電話でご家族へ次のように伝えた。「当施設で今年よりターミナル外出を始めております。今回〇〇様に対してご希望があるようでしたら実施できるように先生から許可がでました。いかがでしょうか」と提案した。続いて実施にあたっての注意事項を説明、実施日・実施時間・送迎方法などを説明した。ご家族より「(実施は)平日でないとだめですか。平日は仕事がありちょっと難しい」という返答や、「やっぱり車椅子でいく感じですよね。車大丈夫かな」などの返答あり。後日、正式な返答としてご家族より断りの連絡あり。実施まで至らなかった。
【結果】
今回外出に至らなかった原因について考えた。ご家族に詳しい理由を聴取していないが、ご提案時に次の点を確認された。実施の曜日・時間、送迎方法についての2点は気にされている様子があった。「実施の曜日・時間」は現在月曜日から金曜日、時間は9時から16時までとしている。理由としては外出時の急変対応に医師不在では実施困難のためとしているが、ほとんどの家族は平日に仕事をしているため外出へ踏み切れないのではないかと思われる。「送迎方法」は基本家族へ依頼をすることになっているが、医療者が情報提供をする前に手配への不安や困難さを感じてしまうのではないかと思われる。他の理由として考えられるのは「今回希望を電話で行い、直接話すことができなかった」「ターミナル外出の情報をお話するタイミングが遅かった」があげられる。外出の内容を口頭で伝えることでイメージが付きにくかったのではないか、ターミナル同意書にサインしてもらった時点での外出の情報をお伝えした方が、家族の考える時間が持てたのではないかと考えられる。
【考察】
看取りケア利用者様の状態はとても不安定であり、急変の危険性も高いためご家族の実施に対する不安はあると思われる。また、利用者様のご家族も高齢者であることも多く、実施に踏み切れない状況があるのではないかとも考えらえる。利用者様のご家族でも定年を迎えていない方は仕事をしており、平日の休暇は取りづらいのが現状である。実施するためには安全の確保は最優先である。しかし、現在のターミナル外出の仕組みがご家族のニーズに沿っていないのであれば再度検討していくことが必要である。しかし利用者様の状態によっては職員同乗がない状況でも外出は可能なのではないかと考えられ、そのためには多職種でのカンファレンスによる情報共有やご家族との事前の話し合い・準備を行うことで外出がより実現的になるのではないかと考える。
【結語】
今回は看取りケア期の外出の実施には至らなかったが、症例を通して新たな課題が明確になった。今後は利用者様とご家族が看取り期だからこそ安全に最期の外出が実現できる仕組みづくりを再度検討していこうと思う。また、利用者様とご家族全てが外出を希望されるとは限らないが、希望がある限り、その希望に沿うよう最善を尽くしたい。また外出が利用者様やご家族にとって心に残る思い出となれるよう安全な実現を目指したい。