講演情報
[28-O-C006-07]老健の施設長に求められる専門科と資質に関する研究産婦人科や他の臨床科の出身者でも勤務可能です
兵庫県 ○星野 達二 (神戸マリナーズ厚生会 老人保健施設らぽーと)
【緒言】 介護老人保健施設(以下、老健と略す)は、1施設に常勤医師1名の配置が求められ、施設長には医師の専門性と施設運営能力の両方が求められる。入所者の多くは高齢女性であり、これまで婦人科診療に従事してきた医師も老健施設に適応し得る可能性がある。本調査は、老健施設長の専門科と資質について明らかにすることを目的とする。
【方法】 日本政府統計1)(e-Stat)および厚生労働省資料から人口および老健施設数を抽出した。近隣地域(K区、S市)の施設長の情報は行政および各施設のWebサイトから収集した。専門科や年齢は、医中誌Web2)を利用し、筆頭および共同著者歴から推定した。また、医師転職サイト3)から募集条件および求められる資質を抽出した。
【結果】 2020年の日本の総人口は1億2614万人。老健施設数は全国で4,273施設、兵庫県167、神戸市57、K区11、S市3であり、施設1か所あたりの人口は約19~36万人であった。全国老人保健施設協会の調査4)によれば、施設長の平均年齢は68.6歳、勤続年数は8.2年、臨床経験年数は37.2年であった。専門科は内科(50.3%)、外科(15.3%)が多く、産婦人科は3.7%であった。(表1)近隣14施設の調査では、施設長の年齢は71歳が最多で3名、70歳以下が3名、72歳以上が7名、不明1名であった。診療科は、内科4名、外科3名、精神科2名、産婦人科1名、脳外科1名、麻酔科1名、不明2名であった。理事長と同一医局出身者や同姓の関係も多数確認された。医師転職サイトの情報によると、老健施設長の専門診療科は内科医を指定するものもあったが、他科でも応募可能な施設もあった。求められる資質として、ストレス耐性、経営感覚、法令遵守の意識、全体を俯瞰する視野、思いやりと共感力などが挙げられている。
【考察】 産婦人科医も65歳を過ぎて定年を迎えると、自身の老後や高齢者施設のことにも興味を持つようになる。すでに親世代が施設に入っている場合もあり、自らもリハビリを受けた経験があることも少なくない。こうした背景から、「まだ働ける」と感じる医師は、次の職場として老健の施設長という選択肢にも関心を持つようになる。産婦人科学の4つのサブスペシャリティーの一つは女性医学である。老健の入所者は80-90歳代の人が多く、80-90%は女性である。いわば、産婦人科医にとっては、診療対象は大部分が見知った相手である。医師転職サイトが要求する施設長の資質については、医師としていわば当然のものである。本来、老健施設というのは、医療を必要とする人を対象にしているところではなく、軽微な疾患を有する人が在宅に向けてリハビリをするところである。しかし、人の命を預かる施設なので、施設長には医療機関と同様に医師の資質が求められる。さらに、老健施設の運営には医療だけでなく施設全体のマネジメントが必要であり、広範な視野とリーダーシップが求められる。老健施設は看護・介護・栄養・相談員・送迎運転手など多職種が連携して運営されており、施設長には幅広い対応力と協調性が求められる。診療科の制限はないが、内科出身者が多い背景には、全身管理のスキルや高齢者医療への適応があると考えられる。しかし、老健施設の入所者の多くが女性であることから、産婦人科医の適性も考えられる。認知症の人が多いと言う意味では精神科医にも適性があり、骨粗鬆症、大腿骨頸部骨折、腰椎圧迫骨折の人が多いと言う意味では整形外科医にも適性があり、爪白癬、皮下血腫、褥瘡が多いと言う意味では皮膚科医・形成外科医にも適性がある。厚生労働省の2022年の調査5)によると、60歳から69歳の年齢層における男性医師数は51,696人であり女性は7565人である女性の比率は12.7%である。70歳以上については男性の医師数は32,959人であり、女性は3528人であり、女性比率は9.6%である。80歳代から90歳代の老健の入所者にとって医師が男性であるということに違和感はない。診療科別の医師数は、内科:61,149人、整形外科:22,506人、小児科:17,781人であり、これらの診療科が上位を占めている。産婦人科は13,892人で、5.3%である。老健に従事する医師の数は3,298人で、全医師数343,275人のうちの約1.0%と少数である。医師免許以外の資格は不要で診療科も問われないこともあり、高い人間性やコミュニケーション力が重要であるが、定年後のセカンドキャリアとして選択肢となりえる。医師で自分自身がリハビリを経験した人というのは、スポーツ外傷や腰痛症・腰椎分離すべり症・腰椎椎間板ヘルニアや骨折や頚椎捻挫(むち打ち症)などの交通事故による外傷などの場合が多い。彼らは自分でリハビリを受けた経験があるので老健施設のリハビリについても造詣が深いと思われる。
【利益相反開示】本論文に関して、開示すべき利益相反状態は存在しない。
【文献】1. 公益社団法人全国老人保健施設協会:令和5年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業). 介護老人保健施設における医療ニーズへの対応力向上にかかる調査研究事業報告書. 主たる管理医師について. 公益社団法人全国老人保健施設協,東京,2024,p1-42.
2. 医中誌Web: Japan Medical Abstracts Society. 医中誌Web. https://search.jamas.or.jp/login. Accessed on 2024/07/18.
3. 日本政府,統計の窓口,統計でみる日本 (e-Stat):統計でみる日本 (e-Stat). https://www.e-stat.go.jp/regional-statistics/ssdsview/municipality. Accessed on 2024/07/23.
4. 厚生労働省:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況.厚生労働省 (mhlw.go.jp). Accessed on 2024/8/03.5. ジョブチェンジ医師:医師転職サイト人気ランキングTOP5. https://doctor-jobchange.jp/ranking/. Accessed on 2025/04/25.
【方法】 日本政府統計1)(e-Stat)および厚生労働省資料から人口および老健施設数を抽出した。近隣地域(K区、S市)の施設長の情報は行政および各施設のWebサイトから収集した。専門科や年齢は、医中誌Web2)を利用し、筆頭および共同著者歴から推定した。また、医師転職サイト3)から募集条件および求められる資質を抽出した。
【結果】 2020年の日本の総人口は1億2614万人。老健施設数は全国で4,273施設、兵庫県167、神戸市57、K区11、S市3であり、施設1か所あたりの人口は約19~36万人であった。全国老人保健施設協会の調査4)によれば、施設長の平均年齢は68.6歳、勤続年数は8.2年、臨床経験年数は37.2年であった。専門科は内科(50.3%)、外科(15.3%)が多く、産婦人科は3.7%であった。(表1)近隣14施設の調査では、施設長の年齢は71歳が最多で3名、70歳以下が3名、72歳以上が7名、不明1名であった。診療科は、内科4名、外科3名、精神科2名、産婦人科1名、脳外科1名、麻酔科1名、不明2名であった。理事長と同一医局出身者や同姓の関係も多数確認された。医師転職サイトの情報によると、老健施設長の専門診療科は内科医を指定するものもあったが、他科でも応募可能な施設もあった。求められる資質として、ストレス耐性、経営感覚、法令遵守の意識、全体を俯瞰する視野、思いやりと共感力などが挙げられている。
【考察】 産婦人科医も65歳を過ぎて定年を迎えると、自身の老後や高齢者施設のことにも興味を持つようになる。すでに親世代が施設に入っている場合もあり、自らもリハビリを受けた経験があることも少なくない。こうした背景から、「まだ働ける」と感じる医師は、次の職場として老健の施設長という選択肢にも関心を持つようになる。産婦人科学の4つのサブスペシャリティーの一つは女性医学である。老健の入所者は80-90歳代の人が多く、80-90%は女性である。いわば、産婦人科医にとっては、診療対象は大部分が見知った相手である。医師転職サイトが要求する施設長の資質については、医師としていわば当然のものである。本来、老健施設というのは、医療を必要とする人を対象にしているところではなく、軽微な疾患を有する人が在宅に向けてリハビリをするところである。しかし、人の命を預かる施設なので、施設長には医療機関と同様に医師の資質が求められる。さらに、老健施設の運営には医療だけでなく施設全体のマネジメントが必要であり、広範な視野とリーダーシップが求められる。老健施設は看護・介護・栄養・相談員・送迎運転手など多職種が連携して運営されており、施設長には幅広い対応力と協調性が求められる。診療科の制限はないが、内科出身者が多い背景には、全身管理のスキルや高齢者医療への適応があると考えられる。しかし、老健施設の入所者の多くが女性であることから、産婦人科医の適性も考えられる。認知症の人が多いと言う意味では精神科医にも適性があり、骨粗鬆症、大腿骨頸部骨折、腰椎圧迫骨折の人が多いと言う意味では整形外科医にも適性があり、爪白癬、皮下血腫、褥瘡が多いと言う意味では皮膚科医・形成外科医にも適性がある。厚生労働省の2022年の調査5)によると、60歳から69歳の年齢層における男性医師数は51,696人であり女性は7565人である女性の比率は12.7%である。70歳以上については男性の医師数は32,959人であり、女性は3528人であり、女性比率は9.6%である。80歳代から90歳代の老健の入所者にとって医師が男性であるということに違和感はない。診療科別の医師数は、内科:61,149人、整形外科:22,506人、小児科:17,781人であり、これらの診療科が上位を占めている。産婦人科は13,892人で、5.3%である。老健に従事する医師の数は3,298人で、全医師数343,275人のうちの約1.0%と少数である。医師免許以外の資格は不要で診療科も問われないこともあり、高い人間性やコミュニケーション力が重要であるが、定年後のセカンドキャリアとして選択肢となりえる。医師で自分自身がリハビリを経験した人というのは、スポーツ外傷や腰痛症・腰椎分離すべり症・腰椎椎間板ヘルニアや骨折や頚椎捻挫(むち打ち症)などの交通事故による外傷などの場合が多い。彼らは自分でリハビリを受けた経験があるので老健施設のリハビリについても造詣が深いと思われる。
【利益相反開示】本論文に関して、開示すべき利益相反状態は存在しない。
【文献】1. 公益社団法人全国老人保健施設協会:令和5年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業). 介護老人保健施設における医療ニーズへの対応力向上にかかる調査研究事業報告書. 主たる管理医師について. 公益社団法人全国老人保健施設協,東京,2024,p1-42.
2. 医中誌Web: Japan Medical Abstracts Society. 医中誌Web. https://search.jamas.or.jp/login. Accessed on 2024/07/18.
3. 日本政府,統計の窓口,統計でみる日本 (e-Stat):統計でみる日本 (e-Stat). https://www.e-stat.go.jp/regional-statistics/ssdsview/municipality. Accessed on 2024/07/23.
4. 厚生労働省:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況.厚生労働省 (mhlw.go.jp). Accessed on 2024/8/03.5. ジョブチェンジ医師:医師転職サイト人気ランキングTOP5. https://doctor-jobchange.jp/ranking/. Accessed on 2025/04/25.

