講演情報

[28-O-D005-01]進行直腸癌の人の“意味のある活動”を探して利用者主体の介入を通じて見えたもの

福岡県 佐伯 誠, 山内 智也 (介護老人保健施設 ケアセンターひまわり苑)
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【はじめに】 今回,進行直腸癌の診断を受け施設入所となった事例を担当した.入所生活を整えるために身体機能やADL中心の介入を行っていたが,日常では不安や不満の訴えが多いことが課題であった.
そこで,作業選択意思決定支援ソフト(以下ADOC)を通して事例の意味のある活動を見つけ出し,実践した結果,変化が現れたため報告する.
【事例の概要】80代後半・女性(以下A氏)主病名:進行直腸癌 病歴:アルツハイマー型認知症・くも膜下出血・高血圧介護度:要介護4
経過:認知機能の低下を認めていたが独居生活を送っていた.自宅で動けなくなり救急搬送される.進行直腸癌を認めたが,年齢や認知症等の事例背景により手術等の積極的治療を行わない方針となり施設入所となる.
1.他部門情報
Dr:直腸癌に対して,対症的治療を行い,全身状態が悪化した場合は入院予定.有茎性直腸癌が肛門の近くにあり,排便時に肛門を閉塞,肛門から脱出するためQOLを著しく低下させている.
Nr:下剤で便の閉塞予防を行っている.排便時の出血があり経過観察.
CW:排泄介助,便汚染時に清拭を行なっている.施設生活,職員,他利用者に対して立腹しているとの報告が多くみられる.
2.評価
1)HDS-R:10/30点
2)認知症高齢者の日常生活自立度:IIb
3)障害高齢者の日常生活自立度:A2
4)BI:60/100点
5)ADOC:重要な活動として買い物,友人との交流を挙げられた.満足度は共に低く1買い物:食べることが好き.好きなお菓子を食べたい.友人との交流:話をすることが好き.職員や他利用者と会話はできているが,排泄時の失敗報告、職員の対応や他利用者に対する不満等のネガティブな会話が多い.
3.解釈身体機能に関しては比較的保たれており,物的介助があれば移乗動作が可能で,日中は車椅子で離床し,施設生活を送ることができていた.しかし,進行直腸癌に伴う度重なる排泄失敗による自信の喪失や,A氏にとって重要な活動(買い物・友人との交流)が行えておらず満足度が低下している状態であった.その結果,ネガティブな感情に支配されていた.
自己決定に伴う成功体験を積み重ねる必要があると判断した.
【利用者主体の介入】1.目標決定と介入計画
1)目標:自己決定による成功体験を得る(4W)→計画:外出し,自身で選んだ買い物を行う
2)目標:他者と談笑する(10W)→計画:買い物,後に創作活動の実施
2.介入経過
1)第1期(1~4W):立腹する言動が減少し,ポジティブな発言が聞かれる近隣のスーパーへ外出し,A氏は好きな飲食物を選定,レジでの支払いを行った.持参金額に応じた購入金額を計算は職員が行った。購入品はステーション預かりとし,一日の提供個数をA氏とCWへ伝え対応を統一した.「作ってくれるコーヒーがおいしい.入れ方が上手」等の発言が聞かれるようになる.
2)第2期(5~7W):他者に感情を伝える
A氏より「お世話になった職員と外出し御馳走したい」と発言あり.
・製作中の創作物を手伝ってほしい
・作品が好きな職員がいるため,完成した物をプレゼントしてほしい
上記2点をA氏に提案し創作活動を開始する.作品が完成し,職員にプレゼントする.A氏に感謝を伝え,喜ばれる.
3)第3期(8~11W):創作活動に興味を示し日常に取り入れる 作品完成後,A氏より継続した創作活動の実施希望あり.CWと実施環境を相談し,リハビリ時以外の日常に創作活動を取り入れることができた.ホールにて創作活動を実施中,創作活動を通じて他利用者と談笑することが増える.創作活動を楽しみにしており,職員に催促する場面もみられた.この時期より,疲労や腰部,腹部,肛門部に痛みが出現して離床困難となる.創作活動が実施困難となったため,A氏了承のもと職員が作品を完成させた後,入院となった.
3.結果
1)買い物,友人との交流において満足度が1から4へ上昇した.
2)ネガティブな言動が減少し,他者と談笑する機会が増えた.
3)創作活動を取り入れるなど,A氏の意思で日常を変えることができた.
【考察】 入所時,立位でのふらつきがみられるA氏に対して機能訓練や動作訓練,環境調整を中心に介入していた.しかし,自身で行える動作が拡大したにも関わらず,日常において不安や不満を訴えることが多かった.そこで,本人の想いを引き出す介入が必要と考えADOCを行った.重要な活動2項目(意味のある活動)を見つけ出したが,それぞれの遂行度と満足度はともに低い状況であった.
A氏は,入院,その後入所へと環境の変化が続いたことに加え,今までできていた排泄行為の度重なる失敗,重要な活動が行えていない等の要因がネガティブな思考へと変化したと考えられた.
そこで,重要な活動に焦点を当てた介入へ変更した.ADOCの結果から,買い物で好きな物を購入し希望時に提供するよう環境設定を行った.金銭や食べ物等の管理など,難しいことは介入し,可能なことはA氏が行うように心掛けた.
A氏が主体的に活動する機会が増えることにより,他者に対する対応が変化し,職員に対して恩返しをしたいという感情が芽生えた.恩返しという行動を達成するために,手伝ってほしい,プレゼントしてほしいという明確な理由付けを行ったため,創作活動の導入を円滑に行えた.創作活動を継続することにより,興味を示し日常に取り入れることができた.創作活動を通じて,他利用者との関わりが増えることにより談笑することが増えた.
A氏にとっての意味のある活動を把握し,実践することで日常に変化をもたらすことができた.事例を通じて,なぜそのような行動が起こっているか,結果だけではなく背景に着目した利用者支援の重要性を認識できた.
これからも今回の経験を活かし,利用者の「意味のある活動」を生かすよう関りを行っていきたい.