講演情報

[28-O-D005-04]認知症利用者の歩行能力の回復に合わせた取り組み

宮城県 沼田 竜太郎 (介護老人保健施設せんだんの丘)
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【はじめに】 
アルツハイマー型認知症を有する方が転倒、骨折による約7週間の入院ののち、ADL全般のリハビリ、身体機能・認知機能の維持目的で当施設に入所された。危険認識が乏しく歩行器を使用せずに単独で歩き出そうとする様子が頻繁に見られたため安全な歩行の獲得、自宅復帰を目指し、介護計画を立案。多職種と連携、歩行補助具の選定を議論し認知症を有しながらも歩行器使用し日常歩行可能にまで向上。在宅復帰した症例について報告する。
【症例紹介】
A様:90代女性 要介護2 日常生活自立度:B2 認知症高齢者自立度:IIIb
現病歴:右大腿骨転子部骨折
既往歴:慢性硬膜下血腫、白内障、アルツハイマー型認知症、高血圧症、骨粗鬆症、新型コロナウイルス罹患
家族構成:長男(KP)
意向:本人「家に帰りたいね」  
家族「サポート具を使用してでも一人で歩けるようになって欲しい本人が自宅へ戻れる状況なら自宅で居宅サービスを利用しながら面倒をみたい」
入所までの経緯:ショートステイ利用中に転倒。右大腿骨転子部骨折の診断を受け入院。リハ時のみ歩行器使用し院内廊下の歩行訓練開始。今後の生活環境の決定評価のためADL全般のリハビリ、身体機能・認知機能の維持、健康管理目的で当施設に入所になる。
<入所時評価・印象>
麻痺なし拘縮等なし。寝返り起き上がりは自立。移乗は見守りにて可能。移動は車椅子使用にて全介助。下衣の上げ下げは軽介助。陰部の清拭は自力で可能。汚染は時折あり、尿意や便意あり。排泄に関しては迷惑を掛けたくない、最後まで自分でしたいと強く思っている。見当識障害あり。性格は社交的でおしゃべり。危険認識が乏しく、立ち上がり歩き出そうとする様子が頻回。記憶障害あり数分前のことを覚えていられない。単独で歩き出す様子が頻繁で転倒のリスク高い。
<課題>
1)トイレまでの安全な歩行の獲得
2)認知機能低下による再転倒などの予防
3)ご家族様の不安解消
<方法>
1)理学療法士と相談しながら歩行補助具を決定する
2)歩行能力に応じた介助を行う
3)ケアマネジャーと相談し、長男様に現状を報告し外出の機会をつくる
<結果>
日中は4点杖歩行使用し近位見守りにて1日5回の定時と訴え時にトイレまで歩行を行った。杖の突き方は理学療法士に指導を受け介護職で統一、3点歩行を実施。歩行時には「1,2,3」と掛け声を言いながら歩行をサポートした。学習能力が低下しており、常に掛け声が必要であった。理学療法士と相談し日常生活での使用は不適切と判断。4点杖を中止した。次にシルバーカーを使用するも突進現象みられ杖同様、毎回声掛け必要であり獲得できず。ピックアップ歩行器使用する。杖と同じく前方に大きく出してしまうが杖ほど危険は少なくふらつきもない。ピックアップ歩行器使用し定時と訴え時にトイレ誘導を行い、3点歩行を掛け声行いながらサポートを行った。夜間は車椅子移動全介助にてトイレ誘導を行った。毎回歩行の様子の記録をつけ、4週間ほど続けた。声掛けなしでは前方に大きく出してしまう事には変わりないがふらつきもなく危険な様子も少ないと判断した。
次に歩行には歩行器が必要であるという認識ができる事、3点歩行ができる事、体力の維持を目標にした。フロアの席をトイレから遠い場所に移動し歩行距離を伸ばした。また、夜間のトイレ訴え時も近位見守り声掛けのもと歩行器使用し歩行にて居室近くのトイレへ誘導を行った。6カ月間対応継続し評価行った。声掛け行わずとも歩行器用いて歩き出すこと増えたが、歩行器使わず歩き出すことも多い。3点歩行は毎回声掛けが必要であり習得するには至らなかったが日夜ともにふらつきなく歩行できている。また、リハビリ職による自宅内を想定した伝い歩きの訓練を行った。
主にケアマネジャーがA様の現状を報告しながらご自宅に外出を勧め、歩行の様子を確認していただく事となった。その後おおよそ2週に1回のペースでご自宅に外出を行うようになった。入所から1年3カ月で自宅退所となった。
<考察>
今回の症例は在宅復帰の条件として歩行能力の獲得が目標だった。認知機能の低下により歩行補助具を使用する事が難しく、4点杖からシルバーカー、最終的にはピックアップ歩行器と変遷し、一番安定歩行可能だったピックアップ歩行器を使用する事になった。夜間は、おむつを使用していたが、歩行能力向上したことにより紙パンツに変更し、トイレを使用可能になったことで失禁の回数が減少した。日中繰り返し歩行でトイレに行くという事が習慣となり夜間も失禁が減少したと考える。行動の分析、対応を統一することで混乱することが減少できた。A様ご本人が社交的な性格で、分からないながらに訓練には積極的だったため、身体機能の向上し、ケアマネジャーが長男様に情報提供をこまめに行ったことで自宅外出に繋げることが出来、長男様の不安を軽減する事が出来たと考える。また当施設はリハビリ等専門職員数が多く、介護職員と密接に関りを持ち小まめに情報共有しやすく、協力しチームアプローチを行いながら取り組んだ結果、自宅退所までに至ったと考える。
【まとめ】 
一般に認知症は大腿骨近位部骨折のリハビリの阻害因子と考えられる。現場で数年間介護職として従事してきたが、認知症を有している方で施設入所してから機能向上が見られ、自宅退所となった例は少なく、その一例を紹介させていただいた。認知症を有していても症状や本人の性格など様々な要因を考慮し適切なケアを提供する事によりADL向上が見込め、自宅退所まで至る事があるのだと改めて再確認出来た事例となった。今後も施設の介護福祉士として多職種と協力し利用者様のより良い生活を提供出来る様精進する。