講演情報

[28-O-D005-05]個別レクリエーションを取り入れた認知症症状の推移

兵庫県 古谷 咲月1, 寺戸 宏子1, 中満 奈津子1 (1.介護老人保健施設ウエルハウス清和台, 2.介護老人保健施設ウエルハウス清和台)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】
当施設では、認知症高齢者41名、一般棟59床、合計100床の介護老人保健施設である。認知症専門棟である当フロアでは認知機能低下の結果、精神症状や行動障害が見られ、それらはほぼ毎日現れるものや不定期に表れるものなど様々である。それらの症状が現れた時、個別にレクリエーションを実施する事で周辺症状と利用者の状態にどのような影響を与えるか検証し、そして認知症高齢者へのサービスの提供のあり方について考察した。
【目的】
昼食後及びおやつ後から次の食事までの時間帯に個別レクリエーションを実施し利用者の周辺症状の出現状況、身体的側面、精神的側面等の利用者の状態の変化を観察し個別レクリエーションの効果を検証する。
【方法】
 1.対象者は、当施設に入所して知る認知症高齢者の中から、周辺症状が顕著で、個別介入の必要性が高いと判断された以下の3名とした。
・A氏 92歳 女性:昼夜逆転に伴う排尿回数が多い。HDS-R15点、要介護4
・B氏 89歳 女性:時間認識が薄く、帰宅願望が強い。HDS-R15点、要介護3
・C氏 89歳 男性:フロア内を移動中にトラブルが多い。HDS-R7点、要介護3
2.期間
   令和6年4月22日~8月31日
3.具体的方法
1)事前調査の実施:研究開始前に、対象者3名に対して約1ヶ月間の行動のデータを収集する。
2)研究で使用する備品の準備:
1.ペットボトルのキャップにフェルトを張り付け、そこに漢字を記入する。コルクボードにはキャップがはまるサイズに切り抜いたスポンジを貼り、対応した漢字を記入し(都道府県や県庁所在地を書いたもの)貼りつける。
2.数字が書かれた磁石の数字合わせ。(プレートに100、50マスが記されており同じ数字の磁石を当てていくもの。)
3)対象者3名に1.と2.のパズルを個別レクリエーションとして提供する。
4)対象者の状態を観察する:A氏B氏C氏はデイルームで様子観察やコミュニケーションをとりやすいよう職員の見守りのもと、実施する。利用者へ提供した個別レクリエーションを通して生じる、表情、身体的反応、その他周辺症状の変化等を詳細に記録した。
5)研究開始前と開始後で利用者の状態を比較し、個別でのレクリエーションの効果を検証する。
【結果】
1)利用者の変化
(1)A氏の場合
1.研究開始前の状況
入所後1ヶ月未満であり、施設入所に伴って歩行器を使用し始めた。常にトイレを探す様子があり、終わっては又探していた。利用者同士で話しこまれるとトイレについては忘れて回数が減ることもあり、集中できることがあればと模索していた。
2.研究後の状況
日中レクリエーションに集中して取り組むことで落ち着きが見られるようになった。トイレの訴えはあったものの、その頻度は5回から2回に減少した。
 (2)B氏の場合
1.研究開始前の状況
時間に関係なく自宅への帰宅を訴え、他の利用者や職員に「いつ帰れるの」と繰り返し問いかけていた。職員からの声掛けに理解を示すものの、すぐに同じ質問を繰り返す傾向があった。
2.研究後の状況
誘うと快く応じる様子があり、一定時間穏やかに過ごす事ができた。個別レクリエーションでは漢字パズルや数字パズルを用いることで会話の幅も広がり他利用者とのコミュニケーションにもつながった。
(3)C氏の場合
1.研究開始前の状況
入所して6ヵ月経過しており、車椅子を使用している。フロア内を行き来し男女関係なく居室に入るトラブルがあった。歌が好きで歌のレクリエーションの時には静かに参加されている。
2.研究後の状況
今回のレクリエーション活動に関しては声をかけたが参加されることはなかった。他利用者が行なっている様子を眺めては表情を緩めている姿を見かける事はできた。
2)職員の認識の変化
1.利用者の個別性の理解:職員からは「個別レクリエーションを通じて、これまで知らなかった利用者の個性や趣味、過去の生活歴が深く理解できるようになった」という声が多く聞かれた。これにより画一的なケアではなく、利用者一人一人に合わせたケアの提供認識が高まった。
2.個別課題の明確化:利用者の行動変化や表情の変化を観察することで「この利用者は何に興味があるのか」「どのような時に笑顔を見せるのか」といった具体的な個別課題が明確になった。これにより効果的なケアプランの立案に繋がった。
3.ケアの質の向上:多くの職員が、個別レクリエーションの導入により、利用や個々のニーズに合わせた質の高いケアが提供できるようになったと感じていた。
3)課題と今後の展望:個別レクリエーションの準備や実施に時間と労力を要する点、他の業務との兼ね合いが課題としてあげられた。効果を実感するにつれて、工夫を凝らして時間配分を行い今後はより多くの職員が個別レクリエーションのスキルを習得し、継続的に実践できる体制づくりが重要であると言う意見も出された。
【考察】
  本研究の結果から、個別レクリエーションが単に活動を提供するだけでなく、利用者の個別ニーズや特性に合わせた働き方を行うことで、より効果が期待できる事がわかる。個々の利用者の残存能力や興味を引き出す事で生活の質が向上し、周辺症状の軽減に繋がる可能性がある。一方で、個別レクリエーションの実施には、職員の時間と労力が必要となる。しかし、その効果を考慮すると、質の高いケア提供のためには、積極的に取り組むべきであると考える。今後は個別ケアの標準化や職員のスキルアップを図っていく必要がある。
【結論】
本研究を通して、個別レクリエーションの導入が認知症高齢者の周辺症状に具体的な改善をもたらす結果が得られた。これにより、利用者の生活の質の向上、職員の個別ケアに対する意識の向上につながる事が示された。今後の認知症ケアにおいて個別レクリエーションがより広く実践される事が期待される。
 参考文献
1)恩蔵絢子,永島徹:なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか(中央法規出版株式会社)  32頁,発行年(2022).