講演情報

[28-O-D007-01]「限りなく利用者様に寄り添うケアをモットーに」日本一やさしい施設をめざして

鹿児島県 永森 絢耶華, 前原 くるみ, 吉富 智子, 乗越 伸博, 川上 太資 (シルバーセンター光の里)
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【はじめに】シルバーセンター光の里は、鹿児島県の日置市にあり、医療法人誠心会で平成5年7月に開設。定員は、入所80名、デイケア60名の老健である。医療法人誠心会グループには、47の事業所があり、「日本一やさしい施設をめざして、誠心誠意ご奉仕いたします」の理念のもと1200名を超える職員がお互いに連携を取りながら運営している。今回は、腸穿孔、脳梗塞を患った不眠と排泄を課題とするA様に対する取り組みについて考えてみた。私自身、福祉系高校を卒業し、シルバーセンター光の里で働いて4年目となる。高校の実習では、コロナ禍のためなかなか実務経験が積めず、悔しい3年間となったが、学校生活や校内実習、就職してからの4年間はたくさんの学びを活かし、利用者様に寄り添ったケア、正しいケアに努力してきたが、なお一層のケアの向上を図るため、今回は「ひもときシート」を活用し、検討することとした。まず「ひもときシート」とは援助者の思い込みや試行錯誤で迷路に迷い込んでいる状況から脱するために、シートのそれぞれの段階で「評価的理解」「分析的理解」「共感的理解」の考え方を学び、援助者中心になりがちな思考を入所者本人中心の試行に転換し、課題的解決に導こうとするツールである。今回、実際に入所者様について「ひもときシート」を使い、本人の求めるケアを導き出し「ひもときシート」を使用した結果と課題について次の通り紹介する。【事例紹介】 A様 68歳 男性 障害高齢者の日常生活自立度 B1 認知症高齢者の日常生活自立度2b 要介護2 長谷川式認知症スケール15点 入所した経緯:元々ひとり暮らしであったが、歩行が困難であり、家もごみ屋敷状態。近くに住む姉が心配し、当施設へ相談があり、面談後入所となる。日中は車いすを自走し部屋やフロアを徘徊されることが多く、他入所者様との交流は少ないが、スタッフの声かけに笑顔が見られる。徘徊や不眠、排泄の失敗など生活上で介助を要する。〇ひもときシートを使用して 評価的理解としてA不眠、独歩で出て来られふらつきがみられる、放尿、部屋に汚れたおむつを置いている、トイレの場所が分からなくなる。B1失禁なくトイレに行けるようになる。  夜間ぐっすり寝てほしい。  けがなく過ごしてほしい。 2レクリエーションに参加し、活動量を増やす。  トイレの声かけをし、感覚をおぼえる。  床センサ-の使用し、声掛けを行う。 分析的理解として1腸穿孔の既往あり、便秘にならないようにする。2特に痛みはなし。食事はよく食べられる。夜間は徘徊あり、本人も「あまり寝られない」と言っていた。32年前に兄がなくなったことが悲しい。4ビートルズが好き。ご飯は好き嫌いなく、なんでもおいしい。5入所依頼は近くに住む姉である。独居でごみ屋敷状態の家に住んでいた弟を心配していた。6トイレの場所がわからない。7欲、こだわりはなし。8本人は楽観的。生活の場所は気にしていない。今もベッド周りは散れている。   C家に帰りたいと思うけどこのままでもいい。    何か楽しいことを見つけないと。    何もすることはない。   D何か楽しいことや役割があると活動量も増え、やる気にもつながるのではないか。   E何もすることがない。    トイレの場所が分からない。   Fタオルたたみなどできることを手伝ってもらい、日中の活動量を増やす。A様が徘徊されている時は、声をかける。排泄の訴え時はトイレに誘導する。ビ-トルズの歌を流す。リハビリより認知リハをしているときは集中力がなく、やっていることにすぐに飽きるので、様子を見ながらゲームを変えていくようにしている。看護師より毎日の全身状態の観察をしている。排泄は内服にて毎日あり良好介護士からは、レクリエーションへの参加はされるので、他の入所者様と親しくなれるよう支援していき、楽しく過ごしていただきたいとのこと。【結果・考察】 「ひもときシート」を活用することによりA様のことをより一層理解することができた。課題が明確になり、できることは維持し、今の課題である不眠の解消と排泄の自立について多職種で協力し、様々な視点からアプローチし、より良いケアにつなげたいと思う。A様から話を聞いている際、「楽しいことがない」「何もすることがない」とマイナスな発言もあったが「子供の時にビ-トルズが好きで大きなスピ-カ-で聴いていた」と知らなかった前向きな面も知ることができた。 考察として、私は「学生時代に学んだことが現場で生かされ切れていないのでは?」と思ったことをきっかけに今回の取り組みを試みたが、通常、介護現場では未経験で就職し、経験を積みながら国家資格を取得する人が多く、「ひもときシート」など専門で学ぶ知識やツールを現場で生かす機会が少ないと思う。また、そのことが福祉学校や学科の減少、学びたい生徒の減少につながっているひとつの原因になっているのではないかとも考える。これからも福祉の魅力がもっともっと発信され、介護に対するマイナスな面だけではなく、やりがいや魅力を発信していける環境づくりも大切だと思う。私はこれからも、いろんな人が介護に興味を持ち、思いやりの心と介護に対する知識が増えるような社会貢献していきたい。【まとめ】 今回初めてひもときシートを使用し、A様と向き合った。いつもと違う視点で、入所者様の立場に立って考える大切さを改めて感じることができた。これからもひとりひとりの入所者様の思いに寄り添い、「日本一やさしい施設をめざして」職員一同、日々精進していきたいと思う。