講演情報
[28-O-D007-02]認知症のある利用者の排泄行動の変容排泄支援の関りを振り返り見えてきたこと
栃木県 ○森 あかね, 小野 充, 大森 元樹 (介護老人保健施設同仁苑)
「はじめに」
認知症の方は認知機能の低下により排泄行動の過程において様々な困難が生じてくる。介護者は認知症の方は「何もわからない・できない」というレッテルを張ってしまうことがある。認知症の方は全てができなくなるのではなく、まだできることがあることを介護者が理解することで、認知症の方の自尊心を保てるケアが提供できると考える。そこで今回、入所時より排泄行動が困難な認知症利用者の排泄行動にアプローチした結果トイレで排泄ができるようになった事例をもとに、なぜ行動変化が起きたのかを実践経過をもとに分析したので報告する。
「目的」
排泄行動困難な利用者がトイレ排泄ができるようになった事例を振り返り、ケア実践と利用者の言動を時系列でまとめ分析を行い、対象者の排泄行動にどのように影響しトイレ排泄に結びついたのか明らかにする。「方法」
対象:A氏90歳代男性。認知症。認知症高齢者日常生活自立度IIIb
1.カルテよりキーワード(排泄、失禁など)を抽出し時系列にする。2.ケアカンファレンス記録やケア記録と照らし合わせて、かかわり方と排泄行動の関連を分析する。
「結果」
1.入所時から1週間の観察から
1)気づき:陰部を出して放尿しながら歩いている。便座に座ることのへの抵抗がみられた。立ったまま排泄することがありトイレは認識できるのではないかという気づきあり。認知機能の低下にて、尿意はあるがトイレと訴えることができないのではないか。
2)アセスメント:トイレの場所が分からず放尿してしまうのではないか。トイレを探す行動から、排泄はトイレで行うという認識が残っているのではないか。トイレへの誘導や場所が分かるような環境調整を行うとトイレを認識できるのではないか。
3)目標:動き出しをキャッチし居室内での排泄環境を整える。トイレの認識を促す
4)支援内容:動き出しをチェックしトイレに誘導する、排泄パターンの確認を行う、居室にポータブルトイレを設置しトイレと認識できるよう張り紙をつけるなど環境調整を行う。
5)結果:ポータブルトイレ周辺が尿で汚染されておりポータブルトイレ周辺で排泄していることを確認。トイレの認識ができてきていると評価した。
2.2週間から1か月後の観察から
1)気づき:ポータブルトイレ周りが尿汚染されていることが増える。誘導してポータブルトイレに座ることができない。歩きながら「おしっこ出るよ」と聞かれることがあるなど変化がみられるようになった。ズボンをいじる、居室の方に向かうときは尿意ある時と判断し居室トイレに誘導する。スタッフがA氏の行動から排泄行動を予測できている。
2)アセスメント:A氏は「おしっこ出るよ」と言葉で伝えることはできるようになったが、失行がありトイレに座る行動ができない。
3)目標:トイレに座れる(セルフケア能力のアップ)
4)支援内容:ポータブルトイレに実際に職員が座る動作を見てもらい、「ちょっと座ってみましょう」と座ることを促す、無理強いせず繰り返しA氏のペースで排泄行動の誘導を行った。
5)結果:誘導声掛けで下着をおろしポータブルトイレに座ることができるなどセルフケア能力のアップ向上につながった。
3.2か月後の観察から
1)気づき:放尿が減りポータブルトイレでの排尿回数が増えてきた。繰り返しのトイレ誘導で排泄行為が定着され尿失禁の回数が減ってきた。この時便失禁があり居室洗面台に便を詰まらせてしまうことがあった。
2)アセスメント:不快感があり水道で付着した便を洗うという行為を行った。A氏はきちんとした性格できれい好きであったという気質や生活歴から、排泄後の対処法としての当たり前の行為とアセスメントした。
3)目標:尿、便失禁などの不快感がないように清潔行動を勧める。
4)支援内容:排便コントロールを行い不快な状態を作らないようにした。
5)結果:排泄パターンが確立しポータブルトイレに座って排泄できるようになった。
4.5か月目にはポータブルトイレから通常のトイレで排泄、8か月目には失敗なくトイレで排泄ができるようになった。
「考察」
第1にA氏は認知機能の低下から、尿意はあるが「トイレを認識できない、トイレに座ることができない」など認知症症状から排泄行動ができないことがA氏の行動から分かった。また入所という「自宅でない」環境変化により混乱し、排泄場所の認識ができずトイレを探して歩き回る、放尿してしまうという行為に至ったと考えられる。A氏の排泄行動で困っているところに焦点を当て、繰り返し焦らずにA氏のペースで支援し環境調整することでトイレを認識できるようになったと考える。
第2にA氏は認知症により、いくつかの排泄行動過程でできないことがありセルフケアの低下をきたしていたと考える。そこで、トイレ動作の一連の動きの中でA氏がどの部分ができるのかを評価。繰り返し根気強く支援を行ったことで、A氏がトイレでの排泄行動の獲得(セルフケア能力の向上)をすることができたと考える。
第3にろう便時のA氏の行動は、几帳面できれい好きというもともとの気質がそうさせているのでないかという気づきから清潔行動に焦点を当て支援を行った。それにより爽快感や自尊心を保てるケアが提供できたと考える。
A氏をよく観察し気づいたことをアセスメントしケア・実践・評価すること、A氏のできることや気質、生活歴に焦点を当てていくことで、トイレでの排泄行動やセルフケア能力の向上に繋がったと考える。
大切なことはケア提供することだけではなく、そのケアによって利用者が豊かな暮らしが送れるかであると考える。「認知症があるからできない、わからない」としてしまわず、認知症の人の行動の理由を探ること、理解することで支援の視点が見えてくると考える。
認知症の方は認知機能の低下により排泄行動の過程において様々な困難が生じてくる。介護者は認知症の方は「何もわからない・できない」というレッテルを張ってしまうことがある。認知症の方は全てができなくなるのではなく、まだできることがあることを介護者が理解することで、認知症の方の自尊心を保てるケアが提供できると考える。そこで今回、入所時より排泄行動が困難な認知症利用者の排泄行動にアプローチした結果トイレで排泄ができるようになった事例をもとに、なぜ行動変化が起きたのかを実践経過をもとに分析したので報告する。
「目的」
排泄行動困難な利用者がトイレ排泄ができるようになった事例を振り返り、ケア実践と利用者の言動を時系列でまとめ分析を行い、対象者の排泄行動にどのように影響しトイレ排泄に結びついたのか明らかにする。「方法」
対象:A氏90歳代男性。認知症。認知症高齢者日常生活自立度IIIb
1.カルテよりキーワード(排泄、失禁など)を抽出し時系列にする。2.ケアカンファレンス記録やケア記録と照らし合わせて、かかわり方と排泄行動の関連を分析する。
「結果」
1.入所時から1週間の観察から
1)気づき:陰部を出して放尿しながら歩いている。便座に座ることのへの抵抗がみられた。立ったまま排泄することがありトイレは認識できるのではないかという気づきあり。認知機能の低下にて、尿意はあるがトイレと訴えることができないのではないか。
2)アセスメント:トイレの場所が分からず放尿してしまうのではないか。トイレを探す行動から、排泄はトイレで行うという認識が残っているのではないか。トイレへの誘導や場所が分かるような環境調整を行うとトイレを認識できるのではないか。
3)目標:動き出しをキャッチし居室内での排泄環境を整える。トイレの認識を促す
4)支援内容:動き出しをチェックしトイレに誘導する、排泄パターンの確認を行う、居室にポータブルトイレを設置しトイレと認識できるよう張り紙をつけるなど環境調整を行う。
5)結果:ポータブルトイレ周辺が尿で汚染されておりポータブルトイレ周辺で排泄していることを確認。トイレの認識ができてきていると評価した。
2.2週間から1か月後の観察から
1)気づき:ポータブルトイレ周りが尿汚染されていることが増える。誘導してポータブルトイレに座ることができない。歩きながら「おしっこ出るよ」と聞かれることがあるなど変化がみられるようになった。ズボンをいじる、居室の方に向かうときは尿意ある時と判断し居室トイレに誘導する。スタッフがA氏の行動から排泄行動を予測できている。
2)アセスメント:A氏は「おしっこ出るよ」と言葉で伝えることはできるようになったが、失行がありトイレに座る行動ができない。
3)目標:トイレに座れる(セルフケア能力のアップ)
4)支援内容:ポータブルトイレに実際に職員が座る動作を見てもらい、「ちょっと座ってみましょう」と座ることを促す、無理強いせず繰り返しA氏のペースで排泄行動の誘導を行った。
5)結果:誘導声掛けで下着をおろしポータブルトイレに座ることができるなどセルフケア能力のアップ向上につながった。
3.2か月後の観察から
1)気づき:放尿が減りポータブルトイレでの排尿回数が増えてきた。繰り返しのトイレ誘導で排泄行為が定着され尿失禁の回数が減ってきた。この時便失禁があり居室洗面台に便を詰まらせてしまうことがあった。
2)アセスメント:不快感があり水道で付着した便を洗うという行為を行った。A氏はきちんとした性格できれい好きであったという気質や生活歴から、排泄後の対処法としての当たり前の行為とアセスメントした。
3)目標:尿、便失禁などの不快感がないように清潔行動を勧める。
4)支援内容:排便コントロールを行い不快な状態を作らないようにした。
5)結果:排泄パターンが確立しポータブルトイレに座って排泄できるようになった。
4.5か月目にはポータブルトイレから通常のトイレで排泄、8か月目には失敗なくトイレで排泄ができるようになった。
「考察」
第1にA氏は認知機能の低下から、尿意はあるが「トイレを認識できない、トイレに座ることができない」など認知症症状から排泄行動ができないことがA氏の行動から分かった。また入所という「自宅でない」環境変化により混乱し、排泄場所の認識ができずトイレを探して歩き回る、放尿してしまうという行為に至ったと考えられる。A氏の排泄行動で困っているところに焦点を当て、繰り返し焦らずにA氏のペースで支援し環境調整することでトイレを認識できるようになったと考える。
第2にA氏は認知症により、いくつかの排泄行動過程でできないことがありセルフケアの低下をきたしていたと考える。そこで、トイレ動作の一連の動きの中でA氏がどの部分ができるのかを評価。繰り返し根気強く支援を行ったことで、A氏がトイレでの排泄行動の獲得(セルフケア能力の向上)をすることができたと考える。
第3にろう便時のA氏の行動は、几帳面できれい好きというもともとの気質がそうさせているのでないかという気づきから清潔行動に焦点を当て支援を行った。それにより爽快感や自尊心を保てるケアが提供できたと考える。
A氏をよく観察し気づいたことをアセスメントしケア・実践・評価すること、A氏のできることや気質、生活歴に焦点を当てていくことで、トイレでの排泄行動やセルフケア能力の向上に繋がったと考える。
大切なことはケア提供することだけではなく、そのケアによって利用者が豊かな暮らしが送れるかであると考える。「認知症があるからできない、わからない」としてしまわず、認知症の人の行動の理由を探ること、理解することで支援の視点が見えてくると考える。
