講演情報
[28-O-D007-05]認知症の利用者へのコグニサイズの取り組み
兵庫県 ○田島 瞳1 (1.ウエルハウス川西, 2.療養部)
「はじめに」
当施設の認知症専門棟では、リハビリ職員が週に3回、昼食前の15分間に「コグニサイズ」と呼ばれる運動プログラムを提供している。コグニサイズとは、国立長寿医療研究センターが開発した、身体運動と認知課題を組み合わせた介入方法である。認知機能の低下や認知症の進行を予防・遅延させる可能性があることが示されており、近年注目されている。高齢者のADLや生活の質(QOL)の維持・向上にも寄与する点が大きな利点である。
これまでは主にリハビリ職員が実施してきたが、業務量の関係で週3回の実施にとどまっていた。そこで今回、介護職員もコグニサイズの実施に参加することで週6回の提供を可能にし、その結果、認知症高齢者の認知機能および身体機能にどのような変化が見られるかを検証した。本報告では、その実践の過程と成果、今後の課題について述べる。
「研究目的」
本研究の目的は、介護職員もコグニサイズを提供する体制を整えることで、より高頻度かつ継続的な介入が可能となり、認知症利用者の認知機能(MMSEスコア)や身体機能(MPT)、さらにADL維持に対してポジティブな影響が得られるかを明らかにすることである。また、介護職員が積極的に関わることで、施設全体のケアの質の向上にもつながるのではないかという仮説を立てた。
「用語の説明」
MMSE(Mini-Mental State Examination)は、認知症のスクリーニングや重症度評価に用いられる簡易検査で、記憶・注意・言語など多面的に認知機能を測定できる。
MPT(最大発声持続時間)は、呼吸や発声機能を測る指標であり、嚥下機能の低下予防にも有効とされている。
コグニサイズは「cognition(認知)」と「exercise(運動)」を組み合わせた造語で、認知課題(しりとり、計算など)と運動(足踏み、体操など)を同時に行うことで、脳と身体の双方を活性化させるプログラムである。
「研究方法」
対象は当施設の認知症専門棟に入所する要介護1~4の利用者10名(女性9名・男性1名、平均年齢84.4歳)。2024年9月から12月の3ヶ月間、月曜日から土曜日まで週6回、午後のレクリエーション時間にコグニサイズを実施した。介護職員は事前に内容説明と研修を受け、リハビリ職員が不在の日も同様の内容で実施できるようにした。
プログラムは、日替わりで2~3種類を組み合わせた。データ収集には、MMSEスコア、MPT、ADL記録を用い、実施前後で比較した。
コグニサイズの内容は
1)日付の確認(見当識を高める話題)
2)全身運動(全身のゆっくりとしたストレッチ・深呼吸・体幹の伸展・頚部のストレッチ等)
3)口の体操(「あ・い・う・え・お」と発声、パタカラ)
4)発声(「あー」長く、短く、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」等)
5)手指の運動(グー・チョキ・パー、指折り1→10、10→1カウントダウン方式)
6)歌体操(指折り・どんぐりころころ)(親指小指交互立て・カタツムリ)(三角形+1回拍手・七つの子)(グーパー+3回手拍子・きらきら星)(グーパー交互運動・うさぎとかめ)より2種類を選び実施
7)考えながらのエクササイズ(足踏みしながら20までカウントし3の倍数・5の倍数で手拍子。3か月目~足踏みしながら月・火・水・木・金・土・日のうち水と日で手拍子、1~5までカウントを5回繰り返し、1回目は1、2回目は2、3回目は3、4回目は4、5回目は5で手拍子等、パターンを増やす。2~3種類を選び実施)
8)計算(簡単な足し算・引き算の問題)
9)歌唱(季節の歌・幸せなら手をたたこう)
4.論理的配慮
今回の介護実践を行うにあたり、対象者家族に介護実践の趣旨を説明し、個人の特定はしない旨を説明し同意を得た。
「結果」
MMSEスコアについては、2名が2点以上向上し、2名が1点以上低下、残り6名は変化なしという結果であった。MPTについては、7名で改善が見られ、発声を伴って積極的に参加していた利用者の方が改善幅が大きかった。ベッド上で過ごすことが多かった利用者がコグニサイズの声かけによって離床しやすくなったり、認知症による多動・不穏行動が一時的に軽減された事例もあった。
特に印象的だったのは、普段声を出すことが少なかった利用者が、コグニサイズを通じて発声するようになり、日中の活動意欲や他者との関わりに前向きな変化が見られた点である。
「考察」
短期間の介入で認知機能の大幅な改善を示すことは難しいが、MPTにおける変化は、コグニサイズの効果を示唆している。また、コグニサイズの導入が職員間の連携や利用者との関係性の向上にも寄与していると感じられた。今後は、対象者をさらに増やし、長期間での変化を追跡するとともに、発語困難な利用者にもアプローチできるようプログラム内容を柔軟に見直す必要がある。
加えて、介護職員が無理なく継続できるよう、実施マニュアルの整備やチーム内の支援体制の充実が求められる。
「結論」
介護職員がコグニサイズを提供することで実施回数が増え、MPTの改善やADLの安定、生活意欲の向上が確認できた。認知機能への影響は限定的だったものの、日々の生活の質に影響を与える要素への効果は大きく、今後も継続・改善しながら取り組んでいく価値があると考える。
当施設の認知症専門棟では、リハビリ職員が週に3回、昼食前の15分間に「コグニサイズ」と呼ばれる運動プログラムを提供している。コグニサイズとは、国立長寿医療研究センターが開発した、身体運動と認知課題を組み合わせた介入方法である。認知機能の低下や認知症の進行を予防・遅延させる可能性があることが示されており、近年注目されている。高齢者のADLや生活の質(QOL)の維持・向上にも寄与する点が大きな利点である。
これまでは主にリハビリ職員が実施してきたが、業務量の関係で週3回の実施にとどまっていた。そこで今回、介護職員もコグニサイズの実施に参加することで週6回の提供を可能にし、その結果、認知症高齢者の認知機能および身体機能にどのような変化が見られるかを検証した。本報告では、その実践の過程と成果、今後の課題について述べる。
「研究目的」
本研究の目的は、介護職員もコグニサイズを提供する体制を整えることで、より高頻度かつ継続的な介入が可能となり、認知症利用者の認知機能(MMSEスコア)や身体機能(MPT)、さらにADL維持に対してポジティブな影響が得られるかを明らかにすることである。また、介護職員が積極的に関わることで、施設全体のケアの質の向上にもつながるのではないかという仮説を立てた。
「用語の説明」
MMSE(Mini-Mental State Examination)は、認知症のスクリーニングや重症度評価に用いられる簡易検査で、記憶・注意・言語など多面的に認知機能を測定できる。
MPT(最大発声持続時間)は、呼吸や発声機能を測る指標であり、嚥下機能の低下予防にも有効とされている。
コグニサイズは「cognition(認知)」と「exercise(運動)」を組み合わせた造語で、認知課題(しりとり、計算など)と運動(足踏み、体操など)を同時に行うことで、脳と身体の双方を活性化させるプログラムである。
「研究方法」
対象は当施設の認知症専門棟に入所する要介護1~4の利用者10名(女性9名・男性1名、平均年齢84.4歳)。2024年9月から12月の3ヶ月間、月曜日から土曜日まで週6回、午後のレクリエーション時間にコグニサイズを実施した。介護職員は事前に内容説明と研修を受け、リハビリ職員が不在の日も同様の内容で実施できるようにした。
プログラムは、日替わりで2~3種類を組み合わせた。データ収集には、MMSEスコア、MPT、ADL記録を用い、実施前後で比較した。
コグニサイズの内容は
1)日付の確認(見当識を高める話題)
2)全身運動(全身のゆっくりとしたストレッチ・深呼吸・体幹の伸展・頚部のストレッチ等)
3)口の体操(「あ・い・う・え・お」と発声、パタカラ)
4)発声(「あー」長く、短く、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」等)
5)手指の運動(グー・チョキ・パー、指折り1→10、10→1カウントダウン方式)
6)歌体操(指折り・どんぐりころころ)(親指小指交互立て・カタツムリ)(三角形+1回拍手・七つの子)(グーパー+3回手拍子・きらきら星)(グーパー交互運動・うさぎとかめ)より2種類を選び実施
7)考えながらのエクササイズ(足踏みしながら20までカウントし3の倍数・5の倍数で手拍子。3か月目~足踏みしながら月・火・水・木・金・土・日のうち水と日で手拍子、1~5までカウントを5回繰り返し、1回目は1、2回目は2、3回目は3、4回目は4、5回目は5で手拍子等、パターンを増やす。2~3種類を選び実施)
8)計算(簡単な足し算・引き算の問題)
9)歌唱(季節の歌・幸せなら手をたたこう)
4.論理的配慮
今回の介護実践を行うにあたり、対象者家族に介護実践の趣旨を説明し、個人の特定はしない旨を説明し同意を得た。
「結果」
MMSEスコアについては、2名が2点以上向上し、2名が1点以上低下、残り6名は変化なしという結果であった。MPTについては、7名で改善が見られ、発声を伴って積極的に参加していた利用者の方が改善幅が大きかった。ベッド上で過ごすことが多かった利用者がコグニサイズの声かけによって離床しやすくなったり、認知症による多動・不穏行動が一時的に軽減された事例もあった。
特に印象的だったのは、普段声を出すことが少なかった利用者が、コグニサイズを通じて発声するようになり、日中の活動意欲や他者との関わりに前向きな変化が見られた点である。
「考察」
短期間の介入で認知機能の大幅な改善を示すことは難しいが、MPTにおける変化は、コグニサイズの効果を示唆している。また、コグニサイズの導入が職員間の連携や利用者との関係性の向上にも寄与していると感じられた。今後は、対象者をさらに増やし、長期間での変化を追跡するとともに、発語困難な利用者にもアプローチできるようプログラム内容を柔軟に見直す必要がある。
加えて、介護職員が無理なく継続できるよう、実施マニュアルの整備やチーム内の支援体制の充実が求められる。
「結論」
介護職員がコグニサイズを提供することで実施回数が増え、MPTの改善やADLの安定、生活意欲の向上が確認できた。認知機能への影響は限定的だったものの、日々の生活の質に影響を与える要素への効果は大きく、今後も継続・改善しながら取り組んでいく価値があると考える。
