講演情報
[28-O-H004-01]排泄支援の再構築~利用者の尊厳と職員負担軽減の両立~
東京都 ○矢作 一平, 宮下 拓也, 高田 和花子 (介護老人保健エンジェルコート)
はじめに
介護現場において排泄ケアは利用者のQOL(生活の質)に直結する重要なケアの業務の
一つである。近年の物価高騰や人材不足の影響を受け、物品コストや業務効率、感染予防の
観点を含めたリスクマネジメントが重要課題となっている。
排泄支援の質の向上と感染リスクの軽減を目的に、新しいおむつの導入、適正使用と
職員の負担軽減、技術向上、個別ケアの推進、使用しているおむつの選定・交換頻度の
見直しを通して、利用者・職員双方にとってより良い排泄支援体制の構築を目指した。
尿測の再確認、おむつの検討、メーカーと連携した講習の実施などを通じた取り組みと
その成果について報告する。
背景と課題
従来、当施設では時間での定時交換を基本とし、おむつの種類も一律であった為、
未排泄での交換や漏れによるトラブル、おむつの過剰使用が散見された。
職員には不必要な交換による業務負担が生じ、利用者には羞恥心や睡眠の妨げといった
心理的・身体的な負担があった。
また、夜間の頻繁な交換やトラブル対応は、夜勤職員の疲労と精神的負担にもつながっていた。
加えて、物価高騰によりおむつ等消耗品の価格が上昇し、コスト削減の観点からも
見直しが必要となっていた。さらに、排泄漏れによる転倒リスクやスキントラブル、
リネン交換といった付随する業務に対する課題も無視できない状況にあった。
取り組み内容
(1)おむつの種類・性能の再検討
吸収量・通気性・肌へのやさしさ・漏れ防止性能、コストパフォーマンスなどを軸に、
メーカー提案の製品の導入検討。
また、現在使用中のオムツ類に関しても再検討・選定を行う。
(2)メーカーとの連携による説明会の実施
製品説明会、排泄ケアに関する講習会を職員向けに実施。
導入予定のオムツの特性や吸収性、夜間良眠・スキンケア・自立支援といった排泄の
メカニズム、適切な排泄誘導について、排泄ケアの全般を学びなおす講習会を行い、
共通理解を深めた。
また、メーカー担当者が現場に立ち会い、個々の利用者に合わせたおむつの当て方の講習会
も実施し、職員は実際に介助場面を通じて装着技術を習得した。
(3)尿測の把握と個別支援の再構築
排泄記録をもとに、利用者一人ひとりの排尿パターンを再確認。排尿時間、間隔、尿量
など記録・分析し、「見える化」することで、これまでの介護職員個々の経験や感覚に
頼っていた排泄ケアの判断に客観性を持たせることができた。
また、尿測を行うことで、利用者ごとの排尿傾向が数値として共有され、職員間の判断の
バラつきが減少。これにより、適切なタイミングでの排泄ケアが可能となり、無駄な交換や、
吸収量に見合わないオムツの使用も改善された。
さらに、尿量の把握によって「誰にどのサイズ・どの吸収量のおむつが必要か」が明確になり、
利用者ごとに最適な製品の選定が可能になった。おむつの種類・グレードの個別対応
も進みコスト管理にもいい影響を与えた。
この過程により、職員の「なんとなくのオムツの選定、当て方」から「理論と個別性に
基づいた装着」への意識改革が進んだ。
(4)モニタリングとアンケートによる評価
改善の実効性を検証するため、サンプル提供を受け、複数名の利用者を選定し、2週間程の
モニタリングを実施。
尿測に基づいた導入予定のおむつの選定、排泄時間を、メーカーと話し合いを行い実施。
漏れ・肌トラブル・睡眠状況の観察を行った。
モニタリング後にはアンケートを実施した。
アンケートには最初は不安や抵抗を訴える意見もあったが、前向きな意見も多くみられた。
(5)業務フローの見直しと情報共有
アンケートの意見も参考にし、業務負担や交換タイミングの見直しを行い、職員間での
情報共有を強化。申し送り等で「排尿あり・なし」だけでなく「形態通りか」「漏れあり」
といった情報を加えることで、チームでの支援がスムーズになった。
考察
今回の取り組みにより、排泄ケアの属人的な判断から脱却し、標準化されたデータに
基づいた支援体制が構築されつつある。これにより、利用者個々に適したおむつの選定・
使用が可能となり、漏れや皮膚トラブルの減少、睡眠の質の向上といった利用者側の
メリットが確認された。
また、メーカーとの連携による講習会では、最新のおむつ製品の特性を学びながら、適切な
装着方法などの講習は、現場職員にとって再学習の良い機会になった。
感染予防の観点では、排泄物との接触機会を最小限にし、過剰な交換による交差感染リスクを
抑える事で、全体の安全性の向上にもつながると考えられる。
一方で、尿測と記録やモニタリングは一定の手間と時間を要する為、継続的な実施には
効率化の工夫が求められる。今後はICT機器の導入や記録システムの簡素化などにより
現場の負担を減らしながら、個別ケアを維持する仕組みの構築が課題となる。
本取り組みは、排泄ケアを単なる日常業務と捉えるのではなく、利用者の尊厳を守り、
かつ感染リスクの低減にもつながる「専門性の高いケア」として再認識する好機となった。
今後も定期的な見直しと、記録と評価に基づいた科学的ケアの促進を図るとともに、
「排泄を支える=生活を支えること」であるという意識をチーム全体に根付かせ、利用者の
QOLの向上と、職員負担の軽減を目指し、排泄ケアの継続的な向上を目指していきたい。
介護現場において排泄ケアは利用者のQOL(生活の質)に直結する重要なケアの業務の
一つである。近年の物価高騰や人材不足の影響を受け、物品コストや業務効率、感染予防の
観点を含めたリスクマネジメントが重要課題となっている。
排泄支援の質の向上と感染リスクの軽減を目的に、新しいおむつの導入、適正使用と
職員の負担軽減、技術向上、個別ケアの推進、使用しているおむつの選定・交換頻度の
見直しを通して、利用者・職員双方にとってより良い排泄支援体制の構築を目指した。
尿測の再確認、おむつの検討、メーカーと連携した講習の実施などを通じた取り組みと
その成果について報告する。
背景と課題
従来、当施設では時間での定時交換を基本とし、おむつの種類も一律であった為、
未排泄での交換や漏れによるトラブル、おむつの過剰使用が散見された。
職員には不必要な交換による業務負担が生じ、利用者には羞恥心や睡眠の妨げといった
心理的・身体的な負担があった。
また、夜間の頻繁な交換やトラブル対応は、夜勤職員の疲労と精神的負担にもつながっていた。
加えて、物価高騰によりおむつ等消耗品の価格が上昇し、コスト削減の観点からも
見直しが必要となっていた。さらに、排泄漏れによる転倒リスクやスキントラブル、
リネン交換といった付随する業務に対する課題も無視できない状況にあった。
取り組み内容
(1)おむつの種類・性能の再検討
吸収量・通気性・肌へのやさしさ・漏れ防止性能、コストパフォーマンスなどを軸に、
メーカー提案の製品の導入検討。
また、現在使用中のオムツ類に関しても再検討・選定を行う。
(2)メーカーとの連携による説明会の実施
製品説明会、排泄ケアに関する講習会を職員向けに実施。
導入予定のオムツの特性や吸収性、夜間良眠・スキンケア・自立支援といった排泄の
メカニズム、適切な排泄誘導について、排泄ケアの全般を学びなおす講習会を行い、
共通理解を深めた。
また、メーカー担当者が現場に立ち会い、個々の利用者に合わせたおむつの当て方の講習会
も実施し、職員は実際に介助場面を通じて装着技術を習得した。
(3)尿測の把握と個別支援の再構築
排泄記録をもとに、利用者一人ひとりの排尿パターンを再確認。排尿時間、間隔、尿量
など記録・分析し、「見える化」することで、これまでの介護職員個々の経験や感覚に
頼っていた排泄ケアの判断に客観性を持たせることができた。
また、尿測を行うことで、利用者ごとの排尿傾向が数値として共有され、職員間の判断の
バラつきが減少。これにより、適切なタイミングでの排泄ケアが可能となり、無駄な交換や、
吸収量に見合わないオムツの使用も改善された。
さらに、尿量の把握によって「誰にどのサイズ・どの吸収量のおむつが必要か」が明確になり、
利用者ごとに最適な製品の選定が可能になった。おむつの種類・グレードの個別対応
も進みコスト管理にもいい影響を与えた。
この過程により、職員の「なんとなくのオムツの選定、当て方」から「理論と個別性に
基づいた装着」への意識改革が進んだ。
(4)モニタリングとアンケートによる評価
改善の実効性を検証するため、サンプル提供を受け、複数名の利用者を選定し、2週間程の
モニタリングを実施。
尿測に基づいた導入予定のおむつの選定、排泄時間を、メーカーと話し合いを行い実施。
漏れ・肌トラブル・睡眠状況の観察を行った。
モニタリング後にはアンケートを実施した。
アンケートには最初は不安や抵抗を訴える意見もあったが、前向きな意見も多くみられた。
(5)業務フローの見直しと情報共有
アンケートの意見も参考にし、業務負担や交換タイミングの見直しを行い、職員間での
情報共有を強化。申し送り等で「排尿あり・なし」だけでなく「形態通りか」「漏れあり」
といった情報を加えることで、チームでの支援がスムーズになった。
考察
今回の取り組みにより、排泄ケアの属人的な判断から脱却し、標準化されたデータに
基づいた支援体制が構築されつつある。これにより、利用者個々に適したおむつの選定・
使用が可能となり、漏れや皮膚トラブルの減少、睡眠の質の向上といった利用者側の
メリットが確認された。
また、メーカーとの連携による講習会では、最新のおむつ製品の特性を学びながら、適切な
装着方法などの講習は、現場職員にとって再学習の良い機会になった。
感染予防の観点では、排泄物との接触機会を最小限にし、過剰な交換による交差感染リスクを
抑える事で、全体の安全性の向上にもつながると考えられる。
一方で、尿測と記録やモニタリングは一定の手間と時間を要する為、継続的な実施には
効率化の工夫が求められる。今後はICT機器の導入や記録システムの簡素化などにより
現場の負担を減らしながら、個別ケアを維持する仕組みの構築が課題となる。
本取り組みは、排泄ケアを単なる日常業務と捉えるのではなく、利用者の尊厳を守り、
かつ感染リスクの低減にもつながる「専門性の高いケア」として再認識する好機となった。
今後も定期的な見直しと、記録と評価に基づいた科学的ケアの促進を図るとともに、
「排泄を支える=生活を支えること」であるという意識をチーム全体に根付かせ、利用者の
QOLの向上と、職員負担の軽減を目指し、排泄ケアの継続的な向上を目指していきたい。
