講演情報
[28-O-H004-02]便所で排泄 ~あたりまえの日常生活~
埼玉県 ○甲斐 雄貴, 長尾 雅裕, 茂木 麻衣子, 加藤 美歩, 寺薗 正恵, 湯浅 文 (介護老人保健施設 翔寿苑)
【はじめに】
コンチネンスケアの考え方に触れる事で、今までの自分達の排泄ケアを見直すきっかけになり、取り組みから得た気づきを報告する。
【背景】
今までの排泄ケアでは、モレないことを重要視し吸収量の多い(服の上からも厚みが分かる)オムツやパッドを使用していた。また、オムツの選定や対応変更はスタッフ個々の経験則で実施しており、排泄ケア=オムツ交換という作業になっていた。そんな中、法人内の回復期病院で導入していたコンチネンスケアの存在を知り、研修の機会を得る。最初に説明を受けた際の「オムツ交換を何回されたいですか?」を「あなたは下半身を何回見られたいですか?」と言い換えられて尋ねられた時に、いかに業務優先であったか、ケアの為だから仕方ない、と介助者目線でしか考えていなかったことに気づかされた。
【気づきを実現するために】
導入当初は介護職員の意識の統一を目指してコンチネンスサポートチーム(以下CST)を発足、コンチネンスケアの考え方や新しい排泄用品を導入するにあたりアンケートを実施した。アンケートの結果、好意的な意見もあったが不安の声も多くあがった為、まずは職員の不安を解消する為の働きかけを行った。
(1)職員との思いの共有
コンチネンスケアについての研修を全スタッフに実施。CSTで考えた『利用者の満足度アップ!スタッフのレベルアップ!』という目的を共有できるようポスターを作成し、各部屋に掲示し周知を図った。
(2)物品の完全移行
排泄の自立に向いている事、オムツのみの1枚使用で見た目も配慮されている事、仕様上快適である事など説明会や実際に職員がオムツを着用する体験会を開催し通気性や圧迫感の無さ等を実感し理解を深めた。
(3)マイスター制度の活用
技術面での不安解消の為、物品の把握や手順の理解、個々にあった選定、正しい使い方を指導するリーダーの育成、職員間での活発な意見交換が期待でき、また誰もが適切にオムツを当てられるというケアの標準化が可能になる同制度を導入した。
【取り組み】
『便所で排泄 当たり前の日常生活』をスローガンにコンチネンスケアを多職種のCSTメンバー中心で実施した。
(1)排泄の自立
個人の尿量測定やADL、本人の意向などアセスメントし、排泄の自立に向けて何をするかを検討する。
アセスメントに基づきトイレで排泄をする為に、立位の補助具やベルト式のオムツ、下着等を使用してオムツ交換の方をトイレ誘導に移行、腹圧を掛ける事で座位排便、排尿を促している。また活動性を上げる為にフロアリハビリ等も実施。
(2)下剤の量の調整
下剤を内服すると排便周期が把握しにくく、便意も曖昧になり、便汚染も発生してしまう。トイレで自然排便がある事でその問題を改善していけると考え、自然排便を促すために週に1回ずつ「スルスル体操」、「体操教室」を開催し、体を動かす機会を増やしている。さらに栄養教室で食事の大切さを説明し、啓蒙活動や腸活を意識した食事やイベントの開催、ピックアップ者はビフィズス菌を飲用しブリストル排便スケールを活用して記録に残し、排便の経過を毎週評価しての協議をしている。
(3)利用者の尊厳を守る排泄サポート
アセスメントを実施し、トイレ誘導やオムツ交換のタイミングを計り、インジケーターを活用することでオムツを外さなくても交換のタイミングを確認でき羞恥心を抱かせない対応を心がけている。また、オムツの1枚履きの為、動きやすく目立たない、蒸れずに快適に過ごしていただくことが可能となっている。
【取り組み事例】
T様について
99歳女性 要介護度2 寝たきり度A2 認知度IIa
病歴 高血圧、便秘症、イレウス
ご本人より在宅への希望が聞かれているが、覚醒状態が悪く飲水量が少ない事や疲労感にて臥床しがちな事、イレウスの既往があり下剤を多く内服している事から改善に向けてトイレを含むリハビリ強化や心理面での対応を開始。
開始時の状態
・覚醒状態、発語も不良。疲労や痛みなどにより離床拒否も多く歩行訓練困難。
・座位保持困難で全介助。トイレ内で排尿、排便なくパッドの汚染のみ。
開始1か月後
・10mの杖歩行ほぼ毎日可能。レクリエーションの参加や離床時間増にて活動性も向上。笑顔や会話等も増え意識
鮮明。
・座位保持も安定、座っていられる時間も徐々に増加。尿便意の訴えも聞かれるようになり、パッド内の汚染はあるも
夜間や早朝の便失禁は減少。
・飲水量は水分量増加目的で、ゼリー飲料等を追加。
・排便量や形状をスケール表記で評価、下剤量が減少。
【取り組んでわかったこと】
トイレで座位排尿、排便が行なえた事で利用者本人の満足感、意欲の向上が見られ、成功体験として繰り返す事でより状態が改善していくという良好なサイクルを作る事が出来た。排泄の自立には認知力の向上や覚醒状態に加え、本人の意志の力が非常に重要である。その為、現在は食事をしっかり食べる/体を動かす/生活のリズムを整えると言った当たり前の生活を送るという事にも焦点を当て、日常のケアの充実を図っている。またコンチネンスケアに多職種協働で取り組んだ結果、情報共有と連携の重要性を学び、利用者に対し、より注意深く関わる事が出来るようになった。
【最後に…】
取り組みを通し、コスト面では課題が残っており削減に繋がるように原因追及、改善に取り組んでいる。利用者の満足度を第一に考える事ができるようになったことで利用者の笑顔や意欲、そして職員のやりがいへと繋がった。この意識の変化がCSTを立ち上げ取り組んできた事の成果と考える。これからも利用者のケアを行う中で、漫然とした日々を送ることなく、この気づきを胸に私達はこれからも多職種協働で、利用者一人一人の尊厳を尊重し、自立を支援できる排泄ケアの提供を目指したい。
コンチネンスケアの考え方に触れる事で、今までの自分達の排泄ケアを見直すきっかけになり、取り組みから得た気づきを報告する。
【背景】
今までの排泄ケアでは、モレないことを重要視し吸収量の多い(服の上からも厚みが分かる)オムツやパッドを使用していた。また、オムツの選定や対応変更はスタッフ個々の経験則で実施しており、排泄ケア=オムツ交換という作業になっていた。そんな中、法人内の回復期病院で導入していたコンチネンスケアの存在を知り、研修の機会を得る。最初に説明を受けた際の「オムツ交換を何回されたいですか?」を「あなたは下半身を何回見られたいですか?」と言い換えられて尋ねられた時に、いかに業務優先であったか、ケアの為だから仕方ない、と介助者目線でしか考えていなかったことに気づかされた。
【気づきを実現するために】
導入当初は介護職員の意識の統一を目指してコンチネンスサポートチーム(以下CST)を発足、コンチネンスケアの考え方や新しい排泄用品を導入するにあたりアンケートを実施した。アンケートの結果、好意的な意見もあったが不安の声も多くあがった為、まずは職員の不安を解消する為の働きかけを行った。
(1)職員との思いの共有
コンチネンスケアについての研修を全スタッフに実施。CSTで考えた『利用者の満足度アップ!スタッフのレベルアップ!』という目的を共有できるようポスターを作成し、各部屋に掲示し周知を図った。
(2)物品の完全移行
排泄の自立に向いている事、オムツのみの1枚使用で見た目も配慮されている事、仕様上快適である事など説明会や実際に職員がオムツを着用する体験会を開催し通気性や圧迫感の無さ等を実感し理解を深めた。
(3)マイスター制度の活用
技術面での不安解消の為、物品の把握や手順の理解、個々にあった選定、正しい使い方を指導するリーダーの育成、職員間での活発な意見交換が期待でき、また誰もが適切にオムツを当てられるというケアの標準化が可能になる同制度を導入した。
【取り組み】
『便所で排泄 当たり前の日常生活』をスローガンにコンチネンスケアを多職種のCSTメンバー中心で実施した。
(1)排泄の自立
個人の尿量測定やADL、本人の意向などアセスメントし、排泄の自立に向けて何をするかを検討する。
アセスメントに基づきトイレで排泄をする為に、立位の補助具やベルト式のオムツ、下着等を使用してオムツ交換の方をトイレ誘導に移行、腹圧を掛ける事で座位排便、排尿を促している。また活動性を上げる為にフロアリハビリ等も実施。
(2)下剤の量の調整
下剤を内服すると排便周期が把握しにくく、便意も曖昧になり、便汚染も発生してしまう。トイレで自然排便がある事でその問題を改善していけると考え、自然排便を促すために週に1回ずつ「スルスル体操」、「体操教室」を開催し、体を動かす機会を増やしている。さらに栄養教室で食事の大切さを説明し、啓蒙活動や腸活を意識した食事やイベントの開催、ピックアップ者はビフィズス菌を飲用しブリストル排便スケールを活用して記録に残し、排便の経過を毎週評価しての協議をしている。
(3)利用者の尊厳を守る排泄サポート
アセスメントを実施し、トイレ誘導やオムツ交換のタイミングを計り、インジケーターを活用することでオムツを外さなくても交換のタイミングを確認でき羞恥心を抱かせない対応を心がけている。また、オムツの1枚履きの為、動きやすく目立たない、蒸れずに快適に過ごしていただくことが可能となっている。
【取り組み事例】
T様について
99歳女性 要介護度2 寝たきり度A2 認知度IIa
病歴 高血圧、便秘症、イレウス
ご本人より在宅への希望が聞かれているが、覚醒状態が悪く飲水量が少ない事や疲労感にて臥床しがちな事、イレウスの既往があり下剤を多く内服している事から改善に向けてトイレを含むリハビリ強化や心理面での対応を開始。
開始時の状態
・覚醒状態、発語も不良。疲労や痛みなどにより離床拒否も多く歩行訓練困難。
・座位保持困難で全介助。トイレ内で排尿、排便なくパッドの汚染のみ。
開始1か月後
・10mの杖歩行ほぼ毎日可能。レクリエーションの参加や離床時間増にて活動性も向上。笑顔や会話等も増え意識
鮮明。
・座位保持も安定、座っていられる時間も徐々に増加。尿便意の訴えも聞かれるようになり、パッド内の汚染はあるも
夜間や早朝の便失禁は減少。
・飲水量は水分量増加目的で、ゼリー飲料等を追加。
・排便量や形状をスケール表記で評価、下剤量が減少。
【取り組んでわかったこと】
トイレで座位排尿、排便が行なえた事で利用者本人の満足感、意欲の向上が見られ、成功体験として繰り返す事でより状態が改善していくという良好なサイクルを作る事が出来た。排泄の自立には認知力の向上や覚醒状態に加え、本人の意志の力が非常に重要である。その為、現在は食事をしっかり食べる/体を動かす/生活のリズムを整えると言った当たり前の生活を送るという事にも焦点を当て、日常のケアの充実を図っている。またコンチネンスケアに多職種協働で取り組んだ結果、情報共有と連携の重要性を学び、利用者に対し、より注意深く関わる事が出来るようになった。
【最後に…】
取り組みを通し、コスト面では課題が残っており削減に繋がるように原因追及、改善に取り組んでいる。利用者の満足度を第一に考える事ができるようになったことで利用者の笑顔や意欲、そして職員のやりがいへと繋がった。この意識の変化がCSTを立ち上げ取り組んできた事の成果と考える。これからも利用者のケアを行う中で、漫然とした日々を送ることなく、この気づきを胸に私達はこれからも多職種協働で、利用者一人一人の尊厳を尊重し、自立を支援できる排泄ケアの提供を目指したい。
