講演情報

[28-O-O005-06]当施設におけるインシデント報告事例についての検討

岐阜県 望月 崇伯, 澤 裕佳, 宮原 和美, 田中 智也, 上西 由起, 重盛 紀子 (高山赤十字介護老人保健施設はなさと)
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【目的】
当施設は、入所及び短期入所100名、介護予防含めた通所リハビリテーション(以下デイケア)40名の在宅強化型施設として在宅復帰・在宅療養支援に取り組んでいる。
施設の安全管理としては、安全対策委員会を設置し、利用者の安全な環境を検討するために多職種で意見交換することや、年間複数回の安全対策研修会の開催等、様々な活動を行っている。また約二年前より、施設内での介護事故予防及び再発防止のためにインシデント事例の報告と共有について、積極的に行うよう職員に啓発しているところである。
A病院の付帯施設として連携し、業務上でヒヤリハットした事例、いわゆるインシデント0レベルの報告件数を上げるよう取り組んでいる。それは、ハインリッヒの法則に基づき、300件のヒヤリハットの上には29件の軽微な事故があり、その上には1件の重大な事故が起こると言われており、インシデント0レベルの収集は死亡などの重大事故を防ぐために重要だからである。
今回2023年度・2024年度に報告のあった、アクシデント事例を除くインシデント事例の件数及び内容・インシデントレベル(以下レベル)等について、調査・検討したので報告する。
【調査内容】
2023年度46件・2024年度82件の報告された入所及びデイケアのインシデント(レベル0~3a)である。(アクシデント・レベル3b以上は除く)
【結果】
入所及びデイケアのインシデントの報告件数は、2023年度、入所が46件に対しデイケアは0件であった。
2024年度は、入所が73件に対し、デイケアが9件であった。
インシデントの内容については、転倒転落、薬剤関係、書類関係含む事務関係(以下事務関係)、その他の4つにカテゴライズした。
2023年度は、転倒転落が39件で84,8%、薬剤関係が4件で8,7%、事務関係はなし、その他は3件6,5%であった。
2024年度は、転倒転落が64件で78,0%、薬剤関係が4件で4,9%、事務関係が5件で6,1%、その他が9件で11,0%であった。事務関係のインシデントには、書類の返却間違いが複数あり、その他のインシデントには、義歯の紛失や食事の配膳違い、車椅子ブレーキのかけ忘れや車椅子移動時のスキンテア等があった。
レベルについては、2023年度はレベル1が2件で4,3%、レベル2が34件で74,0%、レベル3aが10件で21,7%であった。
2024年度はレベル0が1件で1,2%、レベル1が2件で2,4%、レベル2が71件で86,6%、レベル3aが8件で9,8%であった。
【考察】
インシデント報告件数については、2023年度と2024年度を比較すると、二倍近くの増加がみられていた。これは、職員へのインシデント報告と共有を活発に行うよう、安全対策委員による職員への啓発活動の成果と考えている。
入所とデイケアの比較においては、それぞれ大きく入所が上回る結果となった。これは対象者の人数の相違や入所のケアが入所者の生活全般に関わっているのに対し、デイケアは一日の生活の中で部分的にケアに関わっていることが関係していると考えられる。またデイケアを支援する職員のインシデント報告に対する意識の低さが大きな要因と思われた。
内容については、2023年度・2024年度共に転倒転落が最も多い数値を表していた。これは、老年症候群としての転倒が、施設入所者でも珍しくなく、転倒そのものの予防が非常に困難になってきている現状があり、そのためたとえ転倒したとしても外傷に至らないための予防対策が重要であると考えられる。
他のカテゴリーにおいては、大きな差異は認めていない。
レベルについては、各年度ともにレベル2が最も多く、次いでレベル3a、レベル1の順であった。この結果からは職員のインシデント報告に対する認識が、未然に防ぐことができた0レベル報告にまでは至っていないことや事象が発生してからの報告で良いという考えが現在も根強く存在しているように思われた。
【まとめ】
今回の調査から施設の安全管理において、インシデント報告と共有、職員のインシデント報告に対する意識改革が、重要であると再認識した。
重大な介護事故につながらないためにも、日頃からインシデント0レベルからの報告をする風土を構築することが必要である。
「インシデント0レベルとは、そのインシデントには至らなかったが、業務上でヒヤリハットした事例であり、利用者に対して実施されることのなかった行為や、未然に防がれた事例を報告すること」とされている。その目的は、再発防止、安全文化の醸成、リスク管理である。すなわちインシデント0レベルの記録・報告・共有することは、介護事故の予防につながり、再発防止策の検討に非常に有益であると考えられる。
今後も、インシデント0レベルからの報告の重要性についてこれまで以上に職員に啓発し、入所及びデイケアの安全管理とケアやサポートの質の向上へとつなげていきたい。