講演情報

[28-O-P106-02]リハビリ部門の残業時間に関する実態調査と考察

福岡県 近藤 旅史, 林 理恵, 伊崎 真琴, 谷口 文也 (金隈老人保健施設フラワーハウス博多)
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【はじめに】
介護報酬改定や在宅療養支援の推進に伴い、老健のリハビリ部門では更なる業務範囲の拡大と業務量の増加が進んでいる。それによりリハビリの質と量の確保に加え、間接業務も遅滞なく遂行する必要があり、当施設では部門全体の残業時間が年々増加している。残業量の増加は、職務満足の低下や健康問題だけでなく、業務の質の低下や業務中の事故などに影響する重大な問題と考える。
【目的】
近年、働き方改革の推進により、労働時間に関する意識が高まっている。各産業の労働時間に関する調査が報告されているが、老健のリハビリ部門における実態調査はあまり報告がない。本研究では、残業時間を短縮し、リハビリの充実と部門の機能強化を図るため、残業理由とその背景因子の関係について統計学的に分析した。
【方法】
1.令和5~6年度に在籍したセラピスト12名の残業申請をもとに、残業理由を11項目(表1)に分類し、残業理由とその割合を可視化した。
2.過去の運営データからベッド回転率やリハ介入数など、残業時間に影響したと思われるもの14項目を背景因子として分類し、残業時間・残業理由と背景因子個々の相関関係について、ピアソンの相関係数を用いて分析を行った。
3.残業時間と背景因子それぞれの影響度合いを分析するため、重回帰分析(ステップワイズ法)を用いて要因を抽出した。
4.割合の多い残業理由と背景因子それぞれの影響度合いを分析するため、重回帰分析(ステップワイズ法)を用いて要因を抽出した。
【結果】
1. 残業理由の約70%は「ケース記録」、「リハ計画書関連業務」、「リハカンファ関連業務」、「スケジュール調整」であった。役職者以外のスタッフにおいては「スケジュール調整」を除いた3項目で約75%を占め、役職者と構成が異なっていた。
2. 残業時間と残業理由の影響を分析したピアソンの相関係数では「管理業務(r=0.53, p<0.01)」、「その他業務(r=0.41, p<0.01)」が残業時間と中程度の相関を示し、背景因子では「短期集中対象者数(r=0.51, p=0.0105)」、「認短対象者数(r=0.55, p<0.01)」が有意な相関を持った。
3. 残業時間と背景因子の影響度を分析した重回帰分析では、「入所数(b=0.44)」、「退所数(b=0.45)」、「認短対象者数(b=0.78)」が残業時間に有意な影響を持ち(R2=0.6665, p<0.01)、特に認短対象者数と残業時間の推移は強く同調していた。
4. 残業理由の多くを占める「ケース記録」、「リハ計画書関連業務」、「リハカンファ関連業務」、「スケジュール調整」と背景因子の因果関係を分析した重回帰分析では、それぞれ以下の背景因子に有意な影響が示された。
1)ケース記録:ベッド回転率(b=0.76)、短期集中対象者数(b=-0.59)、リハ介入数(b=0.57)、1人平均介入数(b=0.28)
2)リハカンファ関連業務:退所数(b=0.29)、在宅復帰率(b=0.56)、短期集中対象者数(b=0.40)
3)スケジュール調整:入所数(b=0.61)、リハ介入数(b=0.24)
【考察】
残業時間の変動には、認短対象者数・入退所数など利用者動向が強く影響し、これらの変化に応じて記録・調整・管理業務が複合的に増加していた。特に認短対象者は介入単位数が多くなるため、対象者が集中する時期には書類作成などの間接業務も急増する傾向にある。
また、役職者においては介入密度の増大に対応するため、スケジュール調整や管理業務を担いつつ、役職者自身も多くの介入を行うことで残業が増えるという構造が形成されていた。
残業理由の多くは書類などの間接業務である。当施設では1人1日14単位の介入を基準としているが、間接業務を就業時間内に遂行できず残業時間が増大している。江田ら1)は疾患別リハビリテーション領域における残業が発生しない適正単位数を14~16単位とし、診療報酬に規定される18単位との乖離を指摘している。これは担当が増えるごとに間接業務が増える影響を考慮したものであり、残業なしで18単位を達成するには間接業務の効率化が必要と述べている。
本研究において、当施設の残業増加の背景として、利用者動向に伴う業務負担の急増という構造が示されたが、単に残業を削減するために取得単位数を減らすべきではないと考える。利用者の利益と健全な施設運営を守るため、残業を削減しながら必要なリハビリ提供との両立を図ることが管理者の使命である。そのために、残業の背景にある利用者動向と負担量の急増に対して、タイミングの察知と負担分配・マンパワーのコントロールなど、準備や対策を講じることが重要であるとともに、間接業務の手順・効率性を改めて評価し、AI・DXまで活用した効率化を進めていきたい。
【まとめ】
残業は単なる業務量の多寡ではなく、利用者動向と業務量変化の組み合わせによる構造的な負荷として捉える必要がある。
残業を削減しながら健全な施設運営に貢献するためには、利用者動向に円滑に対応できる体制と、間接業務の効率化の推進が必要である。
〈参考文献〉
1.江田昌幸,他:2024.『身体障碍領域のリハビリテーション職種における業務内容の実態調査および適正単位予測式の作成』作業療法43:521~531,2024.