講演情報

[28-O-P106-04]ICT導入前後の業務効率についてのアンケート調査

千葉県 藤田 達也, 大門 俊貴, 岡本 武志, 大橋 弘文 (医療法人社団淳英会 介護老人保健施設おゆみの)
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【目的】当施設は3階建てで,1階が通所リハビリテーションとリハビリテーション室,入所通所共有の入浴場があり,2階と3階が入所棟となっている.業務中は,各部署が各階を横断して業務することもあり,職員をその都度電話で呼び出すことや,職員を直接探しに行くことが日常茶飯事だった.また,請求業務のみ介護ソフトを使用していたため,それ以外の記録等は基本紙カルテや専用の用紙を作成し,情報共有を行っていた.リハビリテーション科では,Excelでリハビリテーション計画書を作成し,そのデータを厚生労働省へ提出する科学的介護情報システムをブラウザ上で再度入力し提出する,転記作業を行っていた.そんな背景がある中で,2024年度の介護報酬改定から生産性向上推進体制加算の導入されることや行政で行われたICT導入に対する補助金事業等の情報を踏まえ,当施設でもICT機器導入・システム化へ大きく舵をきることとなった.
本研究の目的は,2024年4月からICTを本格導入したことで,施設業務において,ICT機器導入前後で業務効率がどれだけ変化したか,どんな課題があるのか,今後のICT導入への意見等の情報を得ることを目的にアンケート調査を実施した.
【対象】当施設に従事し,業務上ICT機器を活用している職員81名に対してアンケート調査を行い,45名から回答を得た.回答率は55.6%となった.
【方法】アンケートを用いた調査とした.アンケートの内容は,1.ICT機器を導入して良かったこと・楽になったこと,2.ICT機器を導入して悪かったこと・大変になったこと,3.導入効果,課題点,導入してほしいICT機器への意見等を自由記述で回答する項目とした.1.2.については,インカムについて(以下,A項目),パソコンでの介護ソフト業務について(以下,B項目),スマホやタブレットでの介護ソフト業務等について(以下,C項目),見守りカメラについて(以下,D項目),それぞれ回答していただいた.回答項目に対しての分析としては,アフターコーディングを活用し,自由記述した内容を項目分けし,それぞれを集計した.
【結果】ICT機器を導入して良かったこと・楽になったことについて,A項目は,その場で連絡ができる44%,情報共有40%,業務短縮4%.B項目は,記録が楽50%,情報収集・管理が楽35%,情報共有15%.C項目は,記録が楽57%,情報収集・管理が楽24%,コールセンサーの違いが分かりやすい7%.D項目は,その場で確認できる55%,優先順位の判断がしやすい25%,訪室回数減少14%,自己分析がしやすい7%となった.
ICT機器を導入して悪かったこと・大変だったことについて,A項目は,故障が多い24%,伝わっているかわからない23%,重い14%,コードが引っ掛かる12%,耳が痛くなる6%.B項目は,読み込みに時間がかかる21%,ログイン制限がある17%,操作方法を覚えることが多い15%,通信が遅いと同時に色々見れないが共に9%.C項目は,音声入力が難しい13%,画面が小さい・充充電の消耗が激しい・情報更新が手間それぞれ10%,台数が少ない・入力しづらい・故障のリスクそれぞれ6%.D項目は,観察力が低下する(職員の考え)33%,通知音で気づかない25%,利用者が見守りカメラを意識する・避ける17%,映像にラグがある・カメラ設定が手間それぞれ8%となった.
【考察】本結果より,ICT導入して良かったこと・楽になったことについては,インカムや見守りカメラを導入したことで,それぞれの職員がその場で情報共有ができるようになった.センサー反応後,確認のための訪室回数や職員を探すなどの不要な移動が減少したこと,職員全体へそれぞれが口頭で伝えていた行動が一度に済んで楽になったという声が多く上がった.また記録業務をパソコンやスマホ,タブレットへ移行したことで,記録作業が楽になり,情報共有がしやすくなったこと等が大半を占めた.特に日々の記録や計画書等の書類時間については,多くの部署で,作業時間が半分程度に改善したという記載が多かった.電子カルテ化した事で,紙記録特有の転記作業がほぼ解消されたことで,作業時間が短縮したと考える.その他にも,日本語が苦手な職員が,記録や書類業務を音声入力や選択入力で行えるようになったため,関わりやすい環境を作ることが出来た.
次にICT機器を導入して悪かったこと・大変だったことについては,機器の故障の頻度が多いことやそのリスクが高いこと,色々持ちながら業務を行うことで,機器の重さや装着の手間という意見が多かった.通信環境やクラウド環境上の問題で,通信速度や通信トラブル,読み込み時間増等の問題や,そもそもICTに慣れていない職員も多く,操作方法で苦戦する職員が一定数感じている形となった.
今回,当施設でICT化がうまく導入・活用できた背景として,中心となる職員を配置した事が大きかった.もちろん各部署に中心的な職員を配置することは前提として,その上に電子カルテや機器に強い職員を配置し,業者とのやり取りを担ってもらった.現場の小さなトラブルを迅速に把握・共有し,その場で対応・改善すること,対応できない事案については業者へ連絡し,より専門的な対応やカスタマイズを依頼すること,修理の調整等,業者とのつなぎ役を担うことで,迅速に業務が効率化したと考えている.
当施設としても,まだICT化に対しては発展段階であり,機器を完全に活用しきれているわけではない.そのため,今後も現場の意見を聞きながら,適宜修正・改善・新規導入を行い,少しでも職員の業務効率を上げ,職員にとって,今よりも働きやすい職場になれるよう取り組んでいきたいと考えている.そうすることで,この人材不足の世の中でも,利用者様やご家族様と職員がゆっくり関わる時間を増やした結果として,在宅復帰や在宅生活支援に更なる貢献ができると考えている.