講演情報

[28-O-Q002-02]老健における健康経営導入について健康経営で企業文化を変える試み:第1報

大阪府 吉田 途男 (医療法人一祐会介護老人保健施設ハーモニィー)
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背景:
健康経営と生産性向上のゴールの類似:
健康経営と生産性向上の共通性に気付いたきっかけが2つあった。ひとつは、自分自身の身体不調の際に制度の未整備に気付き、老健で働く人すべてのwell-beingを目指す健康経営的な対応の重要性を再確認した時である。2つめのきっかけはICT機器を導入しての生産性向上への取り組みが始まったことだ。この2者はアプロ―チは異なるが、めざすものはスタッフのwell-beingであり似ている。そこで健康経営への機運を高めることでスタッフのwell-beingを高め、また生産性向上体制の整備に役立ち、かつ企業文化がよくなる機会になると考え当施設で可能な行動計画を立てた。
方法:
導入に向けての行動計画:図のごとく数段階のステップとし、途中で変更可能とした:
ステップ1:
生産性向上推進体制加算や健康経営では従業員の心の健康状態の改善が求められる。特にモチベーションなどのポジティブな心理面がどう変わったかが重要視される。そこでプライバシーの信頼性が高く、web上で動作するソフトウエア(limesurvey)を使ってアンケートシステム構築を行った。ただ、心の問題のwebのアンケートをいきなり行うことは抵抗感が大きいので健康経営に対するアンケートでwebアンケートが受け入れられるかをまず行った。
ステップ2(左側):
健康経営へのアンケート調査結果で心理的なアンケ―ト調査実施が現時点で実施がOKと判断された場合:
この際は、全員に対して、複数の心理検査を実施する。ステップ3では、どの心理検査が観察マーカーとして妥当かを見極め、介入点には改善ツールの提供を行う。ステップ4では改善ツールによる観察マーカーの変化を確認する。ステップ5では効果の確認ができたら、法人全体に広め企業文化が変わるかどうかを観察することとした。
ステップ2(右側):
健康経営へのアンケート調査結果で心理的なアンケ―ト調査実施がNOと判断された場合:
健康経営に対する広報活動に切り替える。広報活動の効果で、関心度が上れば実施がOKの流れのステップ2に戻るが、関心度が高まらない場合はスッテプ3で代替えマーカーを選定する。ステップ4では代替えマーカーで有用な変化があったら、そのノウハウをステップ5として法人全体に広めるという流れを考えた。

今回の試みは機運が形成されるのを待つ方法で健康経営導入としては非定型的である。

結果:
ステップ1:
レンタルサーバー上にlimesurveyをインストールした。そこにSRS-18、CESD,モチベーション、エンゲージメント、心理的安全性、職業性ストレス簡易調査表(57項目版)(80項目版)の作成することが出来た。判定結果の表示はカットオフを超えている場合には放置しないことというアラーム提示のみとした。
試運転アンケート(健康経営に対するアンケート)の結果:
スタッフの関心はワークライフバランスに関することが一番高かった。2か月間で複数回のアンケート参加の勧奨を繰り返したが、アンケート回収率は65%程度にとどまった。この回収率からみて、現時点でより心理的に抵抗感が大きい、心の状態のアンケートを行っても本音の結果は得られないと判断し、広報活動で関心を高めるステップ2(右側)に切り替えた。
ステップ2(右側):
健康経営に関するセミナー開催:
セミナーは月1回のペース、20-40分程度で以下のテーマで9回行った。健康経営。ストレスチェック制度。両立支援。高ストレス者。メンタルの休職対策。肥満対策。飲酒習慣とSBIRTS、CRAFT。交流分析でのゲーム理論。ストレス対策としての自我状態理論。今後さらに健康経営の実施で選ばれる項目を予定している。ただ、セミナーは始めの2回を除き、回数を重ねるごとに参加者は減少し、参加メンバーが固定化した。この時点でも、集団の心の状態のwebアンケートで行う流れに戻るには時期尚早と判断し、ステップ3の代替えマーカーの模索に進んだ。
考察:
1.limesurveyを用いるとプライバシーを重視したアンケート調査システムが作成できる。簡便にアンケート作成と集計ができ、これ自体は有用である。心理検査では医療を必要とする方へのフォローができないことや施設からの打ち返しがないことが要注意である。試験的なアンケートの回収率からの関心度は不十分で、心の状態のアンケートで集団の心の状態を推測するには時期尚早と判断で関心度をあげる必要性がわかった。
2.セミナーでは関心度は上がらなかった。セミナー内容自体は、将来のどこかで自分ごとにあるが、現時点での自分に直接関係ないようにみえる現在バイアスが働いたと考えた。
3.セミナーへの参加状態からも現時点で心理検査を用いたwell-being測定は無理なので、代替えマーカーとしてストレスチェックのデータの流用を探った。しかし、ストレスチェックはアクセス権限には厳しい制限があり、当法人ではハードルは高く利用には至らなかった。ここは可能になるまで継続的に課題提起が必要と考えた。今のところ、スタッフの定着率が当面の観察マーカーとしているが、原因分析は無理で限界が見えている。
結語:
1.limesurveyを使うとモチベーションなどの心の状態を計測するアンケート調査ツールをプライバシーに配慮した形で作成できた。
2.試験的におこなった健康経営に関するアンケート調査の回収率は65%で現時点では心の状態のアンケート調査は時期尚早であった。
3.そのため、健康経営への興味を高めるべく、健康経営でに関するセミナーを行ったが、関心度が改善するまで至らなかった。
4.直接にwell-being測定ができない間は代替えマーカーで代用することが必要と判断された。
5.企業文化を変える試みは時間がかかるもので、継続が重要である。