講演情報
[28-O-Q002-03]人口減少地域の生き残りをかけた高稼働率維持への挑戦職員の意識改革を図り、運営活性化を目指す
大分県 ○山口 あゆみ1, 田下 真理子1, 松本 里美1, 阿南 裕二1, 小野 隆司2 (1.杵築市介護老人保健施設 グリーンケアやまが, 2.杵築市立山香病院)
【背景・目的】
介護老人保健施設(以下老健)は病院と在宅の中間施設の位置付けだが、理想的な運営は容易でなく、介護報酬的には経営状態が厳しい施設も少なくない。厚労省が考える老健のあり方として、入所では在宅復帰・在宅療養支援機能を更に推進することが求められている。経営的には高稼働率を維持することが重要であるがその両立は難しい。厚生労働省は2040年問題として、地域の人口減少、高齢化に伴い職員の確保が困難になることから医療・介護の現場でdigital transformation(以下DX)導入を推奨している。通所リハビリテーション(以下通所リハ)も稼働率の維持は容易ではなく、安定した経営維持のためには選ばれる魅力ある施設である必要がある。当施設は大分県北東部杵築市(人口約26000人)の旧山香町(平成17年市町村合併)に位置している。人口密集地帯から離れた中山間地域にあり、高齢化率約49.2%の人口減少が顕著な地域にある。138床の地方自治体病院に併設し、入所は50床、通所リハの定員は50名であり、福祉ステーションとして訪問リハビリテーション、訪問看護、訪問介護、居宅介護支援事業所がある。近年、新型コロナ感染症と急激な人口減少の影響から、病院の稼働率の維持が困難になり、老健も入所の稼働率が目標に達さない状況が続いていた。病院に併設する有利な面もあるが、一方で病院の稼働の影響を受けた。超強化型の維持を最優先に在宅復帰率等を厳しく遵守し前年度までの稼働率は安定しなかった(過去4年間の平均稼働率91.3%、ベッド回転率16.5%、短期入所の回転率35.0%)。通所リハは年々利用者が減少し、当日のキャンセル率も高く、内容に新鮮味が感じられず、職員全体のモチベーションも低かった。昨年の全国老健大会のシンポジウム、その後の視察から触発され、当施設の入所、通所リハで高稼働率維持に向けた新たな挑戦を始めたので報告したい。
【方法】
老健全体の管理体制強化のために、今年度より福祉部門専任の看護部長を配置し、福祉部門全体、特に老健の運営改善を図った。入所に関しては昨年の当大会のシンポジウム、高稼働率を実践できている施設に視察に行って得られた情報より、超強化型老健の維持にのみに固執せず、ベッド回転率の抑制、看取りの推進を念頭に改革を今年から始めた。これらを実践するために、副看護師長を入所に2名配置して病床管理、看取り体制の強化を促し、介護福祉士の喀痰吸引資格取得者も増やし、入所者への対応力の向上を目指した。有効な病床管理のために、入所者を今後の方針別に分け看取り、長期、短期(主に病院に移動、居宅から依頼)、在宅復帰、他施設移動と仕分けした。その病床数を把握し回転率を制御した。また、2023年から進めてきたDXとして、患者見守り介護ロボット(aamsTM)を全床に配置し、高稼働率に対応した職員の負担軽減目的に導入した。通所リハはこれまでに行政と連携した介護保険取得前の利用者の獲得を図ってきた。これまでの視察を踏まえ、利用者に魅力的で飽きのこないアイデアを促し、職員の自発的な取り組みを目指した。月1回の相談会を開催し、毎月の運営状況、短期・長期目標を掲げ、達成状況を確認した。出前講座など様々な手段でイベントを広報し、新規利用者の獲得を図っている。
【結果】
今年度から看護部の管理体制の強化が進めたことで、入所、通所リハ全体の機能強化が着実に進んだ。入所では、視察で得た看取り体制の準備を進め、2023年度1年間で2件だった施設での看取りは7件に増えた。入所者の明確な仕分け評価は安定した病床管理に繋がり、病院側との連携も円滑となった。目標稼働率を98%以上と設定し、回転率を10%程度に止め、在宅復帰率も50%前後に制御し、短期入所も人数制限を明確にして、現在高稼働の維持につながっている。超強化型老健の基準維持はほぼ満点(90/90)で、入所者の介護度も自然に上昇し安定している。介護福祉士の登録喀痰吸引等事業者は現在2名だが、今年度中の全員取得を目指している。これにより夜間の看護師の負担軽減に寄与すると考えられ、夜勤の人員削減が期待される。見守り介護ロボットはインカム、スマホ、電子カルテと連動し、効率よく職員が連携できることに加え、音声入力も可能になり職員の負担軽減に役立っている。通所リハでは以前から実施予定であった自主性・自立性を高める取り組みとしてポイント制を導入し利用者の通所への関心を高めている。また新たな様々なイベントを開催し始めた。認知症専門看護師による認知症対応力向上に向けたカフェ、地元商店街との連携(衣料の販売、美容サロンなど)、ボランティアによる演芸、料理教室、敷地内での畑作、小さなグランドゴルフ場も新設をした。利用者の満足度は明らかに向上し、利用キャンセル率も減少傾向である。
【考察】
2024年度の介護報酬改定でも、看取り体制の構築が重要視され、我々は2024年6月からラダー3の看護師が中心となり着手した。休日や夜勤帯での看取りに不安があったが、学習会などを通じてスタッフの意識改革が進み、看取りの受け入れは良好である。入所者の状況把握のための仕分けは有効であり、病院との連携会議で相互の理解が進み、稼働率維持とともに超強化型老健の維持も容易になった。老健でのDXを先進的に進めてきたが、高稼働率を進める上で負担軽減として有利な背景となっている。通所リハは目標が明確になり、職員のモチベーションに火がつき、創意工夫を自主的に実現するための行動変容となった。高稼働率への試みは結果として職員の意識改革につながり、経営面だけでなく施設全体の活性化に大きく寄与した。昨年の老健大会のシンポジウムで得た高稼動に関するインパクトに端を発した組織改革であったが、困難な時代に直面し生き残りをかけた思いが老健の職員全体に浸透したと思われる。
介護老人保健施設(以下老健)は病院と在宅の中間施設の位置付けだが、理想的な運営は容易でなく、介護報酬的には経営状態が厳しい施設も少なくない。厚労省が考える老健のあり方として、入所では在宅復帰・在宅療養支援機能を更に推進することが求められている。経営的には高稼働率を維持することが重要であるがその両立は難しい。厚生労働省は2040年問題として、地域の人口減少、高齢化に伴い職員の確保が困難になることから医療・介護の現場でdigital transformation(以下DX)導入を推奨している。通所リハビリテーション(以下通所リハ)も稼働率の維持は容易ではなく、安定した経営維持のためには選ばれる魅力ある施設である必要がある。当施設は大分県北東部杵築市(人口約26000人)の旧山香町(平成17年市町村合併)に位置している。人口密集地帯から離れた中山間地域にあり、高齢化率約49.2%の人口減少が顕著な地域にある。138床の地方自治体病院に併設し、入所は50床、通所リハの定員は50名であり、福祉ステーションとして訪問リハビリテーション、訪問看護、訪問介護、居宅介護支援事業所がある。近年、新型コロナ感染症と急激な人口減少の影響から、病院の稼働率の維持が困難になり、老健も入所の稼働率が目標に達さない状況が続いていた。病院に併設する有利な面もあるが、一方で病院の稼働の影響を受けた。超強化型の維持を最優先に在宅復帰率等を厳しく遵守し前年度までの稼働率は安定しなかった(過去4年間の平均稼働率91.3%、ベッド回転率16.5%、短期入所の回転率35.0%)。通所リハは年々利用者が減少し、当日のキャンセル率も高く、内容に新鮮味が感じられず、職員全体のモチベーションも低かった。昨年の全国老健大会のシンポジウム、その後の視察から触発され、当施設の入所、通所リハで高稼働率維持に向けた新たな挑戦を始めたので報告したい。
【方法】
老健全体の管理体制強化のために、今年度より福祉部門専任の看護部長を配置し、福祉部門全体、特に老健の運営改善を図った。入所に関しては昨年の当大会のシンポジウム、高稼働率を実践できている施設に視察に行って得られた情報より、超強化型老健の維持にのみに固執せず、ベッド回転率の抑制、看取りの推進を念頭に改革を今年から始めた。これらを実践するために、副看護師長を入所に2名配置して病床管理、看取り体制の強化を促し、介護福祉士の喀痰吸引資格取得者も増やし、入所者への対応力の向上を目指した。有効な病床管理のために、入所者を今後の方針別に分け看取り、長期、短期(主に病院に移動、居宅から依頼)、在宅復帰、他施設移動と仕分けした。その病床数を把握し回転率を制御した。また、2023年から進めてきたDXとして、患者見守り介護ロボット(aamsTM)を全床に配置し、高稼働率に対応した職員の負担軽減目的に導入した。通所リハはこれまでに行政と連携した介護保険取得前の利用者の獲得を図ってきた。これまでの視察を踏まえ、利用者に魅力的で飽きのこないアイデアを促し、職員の自発的な取り組みを目指した。月1回の相談会を開催し、毎月の運営状況、短期・長期目標を掲げ、達成状況を確認した。出前講座など様々な手段でイベントを広報し、新規利用者の獲得を図っている。
【結果】
今年度から看護部の管理体制の強化が進めたことで、入所、通所リハ全体の機能強化が着実に進んだ。入所では、視察で得た看取り体制の準備を進め、2023年度1年間で2件だった施設での看取りは7件に増えた。入所者の明確な仕分け評価は安定した病床管理に繋がり、病院側との連携も円滑となった。目標稼働率を98%以上と設定し、回転率を10%程度に止め、在宅復帰率も50%前後に制御し、短期入所も人数制限を明確にして、現在高稼働の維持につながっている。超強化型老健の基準維持はほぼ満点(90/90)で、入所者の介護度も自然に上昇し安定している。介護福祉士の登録喀痰吸引等事業者は現在2名だが、今年度中の全員取得を目指している。これにより夜間の看護師の負担軽減に寄与すると考えられ、夜勤の人員削減が期待される。見守り介護ロボットはインカム、スマホ、電子カルテと連動し、効率よく職員が連携できることに加え、音声入力も可能になり職員の負担軽減に役立っている。通所リハでは以前から実施予定であった自主性・自立性を高める取り組みとしてポイント制を導入し利用者の通所への関心を高めている。また新たな様々なイベントを開催し始めた。認知症専門看護師による認知症対応力向上に向けたカフェ、地元商店街との連携(衣料の販売、美容サロンなど)、ボランティアによる演芸、料理教室、敷地内での畑作、小さなグランドゴルフ場も新設をした。利用者の満足度は明らかに向上し、利用キャンセル率も減少傾向である。
【考察】
2024年度の介護報酬改定でも、看取り体制の構築が重要視され、我々は2024年6月からラダー3の看護師が中心となり着手した。休日や夜勤帯での看取りに不安があったが、学習会などを通じてスタッフの意識改革が進み、看取りの受け入れは良好である。入所者の状況把握のための仕分けは有効であり、病院との連携会議で相互の理解が進み、稼働率維持とともに超強化型老健の維持も容易になった。老健でのDXを先進的に進めてきたが、高稼働率を進める上で負担軽減として有利な背景となっている。通所リハは目標が明確になり、職員のモチベーションに火がつき、創意工夫を自主的に実現するための行動変容となった。高稼働率への試みは結果として職員の意識改革につながり、経営面だけでなく施設全体の活性化に大きく寄与した。昨年の老健大会のシンポジウムで得た高稼動に関するインパクトに端を発した組織改革であったが、困難な時代に直面し生き残りをかけた思いが老健の職員全体に浸透したと思われる。
