講演情報
[28-O-Q002-06]ICT機器コストと生産性向上俯瞰して考察
岐阜県 ○立川 康介 (介護老人保健施設西美濃さくら苑)
1.はじめに
当施設は岐阜県の西濃に位置する、入所定員150名、通所定員50名の単独型の介護老人保健施設である。超強化型をはじめ、LIFEや生産性向上推進体制に積極的に取り組むなど、国の政策や報酬改定に沿った運営に努めている。
令和元年度の年度当初に施設方針「人とAIの共助」が打ち出され、今日までに様々なICT機器が導入された。現在もその方針は継続しており、導入には私をはじめ事務方も委員として毎回関わっている。介護現場で働く職員は生産性向上に向け、導入されたICT機器の理解に努め、日々業務で活用している。5年を経過した今では、介護現場の人手不足解消や業務負担軽減、サービスの質の維持・向上に無くてはならないものとなっている。
今回は生産性向上に不可欠となったICT機器について、コスト面を中心に事務目線で整理・把握し、俯瞰することで施設の現状を考察したので報告する。
2.期間
令和元年8月~令和7年7月(継続中)
3.方法
1)これまで施設のDX化に向け、導入した機器やシステム、アプリケーションの初期費用やランニングコストをリストアップし、それらを導入目的別に分け、全体を把握し現状を考察する。
2)生産性向上に着目し、現在運用しているICT機器のこれまでの考察も交え、そのコストをマンパワー・人件費と対比し考察する。
4.実践・結果(別図表あり)
1)コスト割合(目的別)
これらのICT機器にかかるコストを目的別に分けてみてみると、全居室(150床)完備した「見守り機器」がおよそ3割を占める結果となった。一方で長い時間をかけて力を入れて取り組んできたケア記録支援に関するものは13.2%、また昼夜問わず24時間常時使用しているインカム「情報共有・連絡ツール」についても5%未満にとどまった。対して「職員安全衛生」とした、職員の動作をサポートし腰痛等を予防するロボットのコストが26.6%となった。
2)トータルコスト
ランニングコストとハードを初めとする初期費用等を5年サイクルとして、その合計を月額換算したところ、その金額はおよそ月額100万円となった。
5.考察
1)コスト割合(目的別)
これらの機器はコスト掛けたらその分だけ効果が望めるものではないことは、これまで導入・運用を通して学習しているが、こうして目的別で機器の種類やコスト、トータルコストを把握し俯瞰することで、今後も続くICT機器活用に向けた取組の中で、導入時の根拠・判断材料となりえると感じた。
例えば、「ケア記録支援」や「情報共有・連絡ツール」はこれまでの運用から生産性向上に代表される業務効率化やスキル向上において効果(アウトプット)を実感できており、これらに課題を感じる場合は、より積極的にICT機器の導入を検討し解決を図れる。
「ケア記録支援」においては、これまでのタブレット記録に加え、今年6月にリリースされた音声操作で記録ができるアプリを即時導入し、運用を開始している。開始して間もないため、生産性向上という観点での成果はまだないが、ハンズフリーでその場で記録ができる強みを活かし、元年度方針「人とAIの共助」に従い、人がテクノロジーを理解し使いこなせれば、生産性が向上すると確信している。
「情報共有・連絡ツール」については、令和元年にインカムを導入し使用を継続しているが、現状はナースコールや外線を含むPHSはWi-Fiとは別の通信システムであり、これらを一本化し見守り機器や音声操作での記録アプリも含め、1台の形態端末に機能が集約できれば、使用する職員の手間やストレスが軽減できる。
2)トータルコスト
施設としては、年数をかけて様々なICT機器やロボットの導入・運用に尽力してきた。この積み上がったコストは5年サイクルで換算すると、先に結果で示したとおり、およそ月額100万円であり正規職員2.5名分ほどの人件費に相当する。ここで常勤換算方法にて看護・介護職の員数を集計し、令和6年度と元年度~5年度の5年間の平均値で比較した。
・令和元年度~5年度の平均値 約65.7人
・令和6年度 約62.1人(▲3.6名)
(1) 減少した常勤換算数(約3.6名)> ICT機器コストの人件費換算数(約2.5名分)
人材確保、離職防止に努めてはいるものの、この間で結果的に換算数で3.6人の減少がみられた。この失われた換算数はマンパワーであり、その分の人件費は施設に一旦ストックされる。したがって、ICT機器導入運用コストは、人員の変化(減少)に対し、その人件費の範囲内と言える。
(2) 人件費を基準にみても、仮に月額コスト(約100万円)の全てがマンパワーの補填だとし、その月額コストを令和6年度における看護・介護職の人件費の月額平均(2,300万円程度)と対比しても4%強に留まっており、国が示すテクノロジー活用による夜間帯の人員基準緩和と比較しても割合は高くない。以上より、ICT機器のトータルコストは施設において過大になっていないことが推察できる。
6.おわりに
今回の振り返りを通して、介護業界の深刻な課題である人材不足と正しく向き合うためにも、ICT機器の導入・運用を継続することの必要性をより強く感じた。事務方としては、その負担となるコストを多角的に把握し、人とテクノロジーがバランスよく共存できるよう5年・10年サイクルでの計画・編成を考える必要がある。同時に施設方針を念頭に、これまでの経験で培った機器の導入目的を職員一人一人が正しく理解し使用することも忘れてはいけない。目的は介護現場で働く職員の助けになることであり、使う職員が混乱したり置き去りではいけない。最後に事務方としてコストに注視しながらも、本質を見失わないよう時に俯瞰し、施設の目指す年齢を重ねても長く変わらず働き続けられる職場環境へと導いていきたい。
当施設は岐阜県の西濃に位置する、入所定員150名、通所定員50名の単独型の介護老人保健施設である。超強化型をはじめ、LIFEや生産性向上推進体制に積極的に取り組むなど、国の政策や報酬改定に沿った運営に努めている。
令和元年度の年度当初に施設方針「人とAIの共助」が打ち出され、今日までに様々なICT機器が導入された。現在もその方針は継続しており、導入には私をはじめ事務方も委員として毎回関わっている。介護現場で働く職員は生産性向上に向け、導入されたICT機器の理解に努め、日々業務で活用している。5年を経過した今では、介護現場の人手不足解消や業務負担軽減、サービスの質の維持・向上に無くてはならないものとなっている。
今回は生産性向上に不可欠となったICT機器について、コスト面を中心に事務目線で整理・把握し、俯瞰することで施設の現状を考察したので報告する。
2.期間
令和元年8月~令和7年7月(継続中)
3.方法
1)これまで施設のDX化に向け、導入した機器やシステム、アプリケーションの初期費用やランニングコストをリストアップし、それらを導入目的別に分け、全体を把握し現状を考察する。
2)生産性向上に着目し、現在運用しているICT機器のこれまでの考察も交え、そのコストをマンパワー・人件費と対比し考察する。
4.実践・結果(別図表あり)
1)コスト割合(目的別)
これらのICT機器にかかるコストを目的別に分けてみてみると、全居室(150床)完備した「見守り機器」がおよそ3割を占める結果となった。一方で長い時間をかけて力を入れて取り組んできたケア記録支援に関するものは13.2%、また昼夜問わず24時間常時使用しているインカム「情報共有・連絡ツール」についても5%未満にとどまった。対して「職員安全衛生」とした、職員の動作をサポートし腰痛等を予防するロボットのコストが26.6%となった。
2)トータルコスト
ランニングコストとハードを初めとする初期費用等を5年サイクルとして、その合計を月額換算したところ、その金額はおよそ月額100万円となった。
5.考察
1)コスト割合(目的別)
これらの機器はコスト掛けたらその分だけ効果が望めるものではないことは、これまで導入・運用を通して学習しているが、こうして目的別で機器の種類やコスト、トータルコストを把握し俯瞰することで、今後も続くICT機器活用に向けた取組の中で、導入時の根拠・判断材料となりえると感じた。
例えば、「ケア記録支援」や「情報共有・連絡ツール」はこれまでの運用から生産性向上に代表される業務効率化やスキル向上において効果(アウトプット)を実感できており、これらに課題を感じる場合は、より積極的にICT機器の導入を検討し解決を図れる。
「ケア記録支援」においては、これまでのタブレット記録に加え、今年6月にリリースされた音声操作で記録ができるアプリを即時導入し、運用を開始している。開始して間もないため、生産性向上という観点での成果はまだないが、ハンズフリーでその場で記録ができる強みを活かし、元年度方針「人とAIの共助」に従い、人がテクノロジーを理解し使いこなせれば、生産性が向上すると確信している。
「情報共有・連絡ツール」については、令和元年にインカムを導入し使用を継続しているが、現状はナースコールや外線を含むPHSはWi-Fiとは別の通信システムであり、これらを一本化し見守り機器や音声操作での記録アプリも含め、1台の形態端末に機能が集約できれば、使用する職員の手間やストレスが軽減できる。
2)トータルコスト
施設としては、年数をかけて様々なICT機器やロボットの導入・運用に尽力してきた。この積み上がったコストは5年サイクルで換算すると、先に結果で示したとおり、およそ月額100万円であり正規職員2.5名分ほどの人件費に相当する。ここで常勤換算方法にて看護・介護職の員数を集計し、令和6年度と元年度~5年度の5年間の平均値で比較した。
・令和元年度~5年度の平均値 約65.7人
・令和6年度 約62.1人(▲3.6名)
(1) 減少した常勤換算数(約3.6名)> ICT機器コストの人件費換算数(約2.5名分)
人材確保、離職防止に努めてはいるものの、この間で結果的に換算数で3.6人の減少がみられた。この失われた換算数はマンパワーであり、その分の人件費は施設に一旦ストックされる。したがって、ICT機器導入運用コストは、人員の変化(減少)に対し、その人件費の範囲内と言える。
(2) 人件費を基準にみても、仮に月額コスト(約100万円)の全てがマンパワーの補填だとし、その月額コストを令和6年度における看護・介護職の人件費の月額平均(2,300万円程度)と対比しても4%強に留まっており、国が示すテクノロジー活用による夜間帯の人員基準緩和と比較しても割合は高くない。以上より、ICT機器のトータルコストは施設において過大になっていないことが推察できる。
6.おわりに
今回の振り返りを通して、介護業界の深刻な課題である人材不足と正しく向き合うためにも、ICT機器の導入・運用を継続することの必要性をより強く感じた。事務方としては、その負担となるコストを多角的に把握し、人とテクノロジーがバランスよく共存できるよう5年・10年サイクルでの計画・編成を考える必要がある。同時に施設方針を念頭に、これまでの経験で培った機器の導入目的を職員一人一人が正しく理解し使用することも忘れてはいけない。目的は介護現場で働く職員の助けになることであり、使う職員が混乱したり置き去りではいけない。最後に事務方としてコストに注視しながらも、本質を見失わないよう時に俯瞰し、施設の目指す年齢を重ねても長く変わらず働き続けられる職場環境へと導いていきたい。

