講演情報
[28-O-Q002-07]1日3クール、90分型通所リハの新戦略モデルの創出―実践的有効性と経営・制度的示唆―
兵庫県 ○福島 飛鳥1, 川崎 達也1, 坂口 強1, 奥知 博志2, 柿花 宏信3, 備酒 伸彦3 (1.介護老人保健施設鵠芭, 2.奥知外科医院, 3.神戸学院大学総合リハビリテーション学部)
【はじめに】
本邦における通所リハビリテーション(以下、通所リハ)の提供形態や運営体制は、制度改定や社会構造の変化を背景に見直されつつある。近年の報告では長時間型では通うこと自体が目的化し、活動性の低下や支援内容の画一化が生じやすいとの指摘がある。一方、短時間型では個別リハビリの導入率こそ高いものの、その内容や質にはばらつきがあり、生活目標や自律支援と乖離する例も少なくない。さらに、全国の通所リハ事業所の約半数が赤字との報告もあり、サービスの質と経営の両立は喫緊の課題である。
こうした背景のもと「短時間で専門的な支援を受けたい」「自分の時間を確保しながら通いたい」といった新たなニーズが顕在化しており、高齢者の生活機能をいかに多面的に捉え、持続的に支援していくかが重要視されている。生活機能とは、筋力やバランスといった身体的要素に加え、環境や支援との関係性の中で形成されるものであり、「動けるようになる」ことに加えて、「動きたくなる気持ち」を引き出す関わりが求められている。当事業所では開設当初よりこうした視点を基盤に、その人らしい支援の実践に取り組んできた。
本報告では、1回90分・1日3クールという短時間型通所リハの運用において、複数の専門職による継続的かつ個別性の高い介入を通じて得られた身体機能や生活機能の変化、ならびに継続率や収益の向上といった経営的成果について、2年間の運用実績をもとに今後の展望を報告する。
【方法】
2023年6月~2025年5月の間に当通所リハビリテーションを継続利用した51名(平均年齢78.7±12.9歳、男性23名・女性28名)を対象とし、それぞれの利用開始時を初期評価、終了時を最終評価とした。なお、入院や重度疾患による中断、Mini-Mental State Examination(MMSE)18点未満、評価項目の欠損、3週間以上の利用休止に該当する計27名は対象から除外。
プログラムの主な構成は以下の3点
(1)健康運動指導士によるオーダーメイドの集団運動(20分)
(2)理学療法士または作業療法士による個別リハビリテーション(20分)
(3)健康運動指導士とリハ専門職、介護職の協働によるマシントレーニング(50分)
使用機器はミナト医科学社製WTS-iシリーズ、セノー社製CORDLESS BIKE(BFU・BFR)を中心に9機種。個別カードによる負荷管理とフィードバックにより筋力向上を図った。欠席時の振替利用も推奨し継続性の安定を図った。
身体・生活機能の評価指標は以下の6項目
Short Physical Performance Battery(SPPB):下肢機能評価
Weight Bearing Index(WBI):体重支持指数・下肢筋力
10meter Walk Test(10mWT):歩行速度
Timed Up and Go Test(TUG):歩行や転倒
Frenchay Activities Index(FAI):IADL
Life-Space Assessment(LSA):生活の広がりや活動量
SPPBおよびWBIにはWilcoxon符号付き順位検定、10mWTおよびTUG、LSAとFAIには対応のあるt検定を実施。初期と最終の変化量であるΔFAIおよびΔLSAは、年齢、性別、ΔSPPB・ΔWBI・Δ10mWTを説明変数とした重回帰分析を行い、VIFにより多重共線性を確認。統計解析にはEZR v1.68を用いた。
加えて主観的感想を自由記述し、運用指標の推移として全登録者数、延べ利用日数、月平均利用回数、継続率、月間収益、1回利用あたりの平均単価、要介護度構成の初期・最終比較を全体登録者ベースで集計した。
【結果】
(1)身体・生活機能の変化
SPPB:5.59±2.13点 → 7.16±2.69点(p<0.01)
WBI:0.32±0.13 → 0.37±0.15 (p<0.01)
10mWT:12.13±6.08秒 → 10.43±5.65秒(p<0.01)
TUG:13.49±4.99秒 → 13.11±5.15秒(p=0.65)
FAI:17.65±6.89点 → 20.74±6.75点(p<0.01)
LSA:54.88±31.91点 → 62.60±29.77点(p<0.01)
ΔWBIがΔFAI(β=25.3, p<0.05)、ΔLSA(β=109.0, p<0.001)の双方に対し、有意な関連を示したが、ΔSPPB、Δ10mWT、年齢、性別は有意差はなかった。
(2)主観的評価(抜粋)
「短時間で専門的リハが受けられる」「仲間が励みになる」「自分の時間が作れ、自主トレの習慣がついた」「趣味が再開できた」など肯定的な意見が多数寄せられた。
(3)運用指標の推移
全登録者数:84名 → 177名
延べ利用日数:421日 → 1,117日
月平均利用回数:5.0回 → 6.3回
継続率:93.3% → 93.0%
月間収益:2,561千円 → 6,273千円
1回利用あたりの平均単価:6,085円 → 5,616円
要介護度構成:
初期=要支援1:18.0%、要支援2:39.1%、要介護1~5:42.7%
最終=要支援1:27.7%、要支援2:40.7%、要介護1~5:31.6%
【考察】
本モデルは90分の短時間で、個別性に応じた専門的かつ継続的な支援体制により、身体機能・生活機能の全評価指標で改善を示し、2年間にわたり安定して成果を維持できた点が特筆される。健康運動指導士とリハ職の協働、準個別化された集団運動、振替利用の推奨、役割分担の明確化などの工夫が、収益とアウトカムの向上に寄与した。ΔWBIがΔFAIとΔLSAの有意な関連を示した。先行研究ではWBI0.35以上がIADLの自立に必要とされ、今回WBI0.37を達成したことはIADL改善に繋がったと考えられる。またWBIがLSAに有意に関連しているとの報告もあり、今回も同様の傾向を示した。「動くことが意欲的になった」「自分の時間を確保しながら運動習慣が身についた」等の主観的変化も心理社会的改善を示しており、今後は定量的評価が求められる。収益・登録者数は増加したが、要支援者比率の上昇により平均単価は低下し、身体機能の改善が報酬に反映されにくい制度的課題が明らかとなった。今後は要介護度に加え、生活機能や社会参加に基づく評価が必要である。本モデルは予防的かつ自律志向型の通所リハとして有効で、地域包括ケアにおける新たな標準モデルとなり得る可能性を示した。
【倫理的配慮】
本研究は医療法人社団渾深会倫理審査委員会の承認(承認番号:2025-01)を得て実施した。
