講演情報

[28-O-Q002-08]LIFEフィードバックデータを用いた自施設の現状分析

京都府 佐藤 明美, 宮脇 洋, 今井 亮 (特定医療法人桃仁会 老人保健施設桃寿苑)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景】
 自施設では主に透析導入後に通院透析が困難であるなどの介護面の問題を有する透析者を受け入れている。我が国の高齢化の進展に伴い、透析導入となる年齢も高齢化が進み、単身世帯や身寄りのない透析者の独居生活や透析治療への通院問題なども増加するなか、高齢透析者への介護や社会支援が問題となっている。自施設においても過去3年間の新規利用者の27%が在宅復帰できずにいる現状がある。
【目的】
 介護施設利用者の背景や身体的な特徴について、科学的介護情報システム(以下LIFE)のLIFEフィードバックデータを用いて自施設と全国平均を比較分析することで自施設の現状と課題を明確にすることを目的とした。
【対象】
 過去LIFEフィードバックデータ抽出期間内(2024年9月~2025年6月)に入所している利用者132名(男性60名、女性72名、透析歴平均値11年)
【方法】
 自施設のLIFEフィードバックデータにある、利用者の年齢、介護度、障害高齢の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度、ADL(平地歩行、椅子とベッド間の移乗)、口腔(歯肉の腫れ・出血の有無)、BMIを抽出し、自施設と全国平均のLIFEフィードバックデータを比較検討した。
【結果】
 自施設のLIFEフィードバックデータから、年齢構成比は80~90歳が多く、平均介護度は4、障害高齢者の日常生活自立度はB群が最も多く、認知症高齢者の日常生活自立度はIIIaが多く占めていた。ADLにおける平地歩行の自立は0%、椅子とベッド間の移乗の自立は27%であった。また、BMIは18.5未満が55.35%を占め、歯肉の腫れ・出血の「あり」は99.53%であった。
 全国平均のLIFEフィードバックデータでは、年齢構成比は90歳以上が多く、平均介護度は4、障害高齢者の日常生活自立度はB群が最も多く、認知症高齢者の日常生活自立度はIIIaが多く占めていた。ADLにおける平地歩行の自立は11%、椅子とベッド間の移乗の自立は33%であった。また、BMIは18.5未満が35%、次いで、18.5%以上21.5%未満は34%であった。歯肉の腫れ・出血の「あり」は89.76%であった。
 今回抽出した自施設と全国のLIFEフィードバックデータの比較結果から、年齢層、ADL、BMI、歯肉の腫れ・出血の有無のすべてにおいて差が生じていた。
 【考察】
 2023年度透析医学会調査データより、全国の透析者の平均年齢は70歳とされ、透析導入後の生存率は5年未満が46%を占め、平均生存率は7年とされている。透析者は糖尿病や骨ミネラル代謝異常、心血管疾患などの合併症をすでに有している状態が多いことから透析者の平均余命は短く、透析導入年齢の高齢化とともにLIFEフィードバックデータの年齢構成比の比較においても表れている。
 また、ADLやBMI、歯肉の腫れ・出血の有無に比較差が生じたことについては、骨ミネラル代謝異常は骨折、骨の変形、筋肉の障害を誘発し、ADLに影響を与える。心肺臓器へは、石灰化への影響を及ぼし、骨のみならず多臓器を脆弱化させる。BMIにおいては、食事制限や食事摂取量の低下だけでなく、歯肉の腫れ・出血などによる慢性的な炎症、アミロイド沈着による炎症などにより、たんぱく質の分解促進や合成抑制などに繋がり全身状態に影響する。また、BMIは体重値から求めるため、水分制限、体重管理を余儀なくされる透析者にとっては、BMIが低値となりやすい傾向にあると考える。高齢透析者においては、低栄養、慢性炎症、動脈硬化、歯周病の慢性的病態を呈しているとされていることから、今回の結果からも入所者の多くを透析者で占める自施設は全国平均と比較し、年齢層、ADL、BMIに差が生じていると推察される。
 このように、自施設の利用者には透析という医学的な側面を有していることと高齢化の社会背景から、単身世帯や身寄りのない透析者の増加や透析治療への通院が困難であるという問題に繋がることから、自施設では透析導入後に在宅サポートの不足や経済面での問題等から在宅復帰への目途が立たず施設入所の継続に至る現状があると考える。 そして、透析者の実態調査からは、「透析者の生活場所において、認知症、日常生活活動度、施設入所には強い関連性が示唆される」と報告されている。自施設のLIFEフィードバックデータ結果からも認知症高齢者の日常生活自立度はIII群に多く、常に介護が必要な状態であることや、ADL、BMI結果を鑑みても、透析者においてはこれらが在宅復帰を妨げる要因のひとつになっていると考える。
【おわりに】
 自施設では、在宅生活が困難な透析者を受け入れ、適切な医学管理のもとに支援を行うことを理念として掲げている。今後も、高齢化社会、多死社会を背景に在宅生活が困難となる透析者の増加が見込まれ、身体状態のアセスメントやケアの多様性が求められる。今回のLIFEフィードバックデータの比較では事業者においてのデータ比較となったが自施設における現状を明らかにすることができた。今後は利用者帳票からデータを抽出し、経時的な状態変化の把握やLIFEを客観的な指標とすることで、早期から在宅復帰へ向けたケアアプローチの検討や終末期の療養環境の整備、利用者の生活の質の向上を目指したLIFEの活用が課題である。