講演情報

[28-O-R006-03]少子高齢社会を支える地域共生モデル~介護施設の枠を超えた多世代交流の実践~

岡山県 宮本 愛 (老人保健施設さくら苑リハビリセンター)
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少子高齢社会を支える地域共生モデル~介護施設の枠を超えた多世代交流の実践~
社会福祉法人岡山中央福祉会 老人保健施設さくら苑リハビリセンター 理学療法士 宮本愛


【目的】
岡山市東区は令和2年国勢調査にて高齢化率28.9%であり、2035年には35%を超えると推計されている。合計特殊出生率は1.3台前半と低く、4区で唯一の人口減少地域でもある。このような少子高齢化の進行により、地域包括ケアの維持には高齢者のみならず、多世代への関与が不可欠である。当施設は、児童から高齢者までを対象とした多世代連携による地域貢献活動を展開してきた。本報告では、交流を通じた地域福祉への効果と、老健施設が地域包括ケアの一翼を担う可能性を明らかにする。

【方法】
1.幅広い世代が交流し、地域の活性化を図る
1)地域と連携し、700人以上が参加するまつりを共同開催、2)地域の夏まつりにて、子供向けブースを出店、3)地域ボランティアとカツサンド350食販売 、4)地域で活動する団体を招待し、利用者との交流を目的とした演奏会を多数開催
2.地域高齢者と交流し、健康寿命向上を図る
健康寿命UPプロジェクトと称して、地域サロンや公民館にて多数活動(7か所以上)
(活動例):健康寿命・栄養・認知症・介護保険や制度に関する講義、運動指導や体操教室、リハビリレクリエーション
3.児童と高齢者が交流し、児童に福祉を伝える
毎年地域の小学4年生を対象に、学校と連携して年間を通じた福祉教育カリキュラムを構築、公的機関との共同授業も実施
5月)福祉講義(地域包括支援センターと共同開催)、6月)高齢者・介護体験、9月)当施設で職場体験、11月)当施設利用者に向けた児童の発表会、2月)1年間の学び発表会、通年)下校時安全パトロール

【結果】
多世代による地域活動を展開した結果、当施設は「身近に相談できる場所」として地域住民の認知を高めた。「健康寿命UPプロジェクト」では、延べ100名以上の要介護認定前高齢者に対し健康づくりの機会を提供し、講義ごとに平均3件の相談が寄せられた。福祉教育では、児童から「福祉の仕事に関心を持った」との声が多数寄せられ、担い手意識の醸成が見られた。さらに、講義前には約53%だった児童の高齢者理解が、講義後には約95%にまで向上し、世代間理解が深まったことが示された。これらの交流活動を通じて、防災力や地域のつながりも強化され、当施設は福祉避難所としての信頼構築にも寄与している。

【考察】
本取り組みを通じ、老健施設が地域における「身近な相談窓口」として機能し始めており、早期相談や予防的支援、医療受診へ連携の役割を果たす可能性が示唆された。また、児童への継続的な福祉教育は、次世代の意識啓発や福祉人材の育成に寄与し、将来的な地域福祉基盤の強化に貢献する。これらの取り組みは教育機関や公的機関との連携により実現しており、「住み慣れた地域で最期まで暮らす」ことを支える新たな地域共生モデルとしての展開が期待される。一方で、現在の活動は施設周辺地域に限定されており、東区全体への展開には至っていない。今後の課題としては、より広範な地域連携の強化と持続可能な支援体制の構築が挙げられる。誰もが支え合いながら安心して暮らせる地域社会の実現に向けて、当施設は今後も多世代交流を深化させつつ、地域包括ケアの中核を担う存在としての役割を継続して果たしていく必要がある。