講演情報

[28-O-R006-04]超強化型老健への挑戦在宅復帰支援への取り組みと実践

栃木県 本間 奈実1, 三浦 ミイ子2 (1.老人保健施設白楽園, 2.老人保健施設白楽園)
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【はじめに】
老人保健施設 白楽園は、平成4年4月24日に開設され34年目を迎えました。人口約51万人を有し、近年LRT(次世代型路面電車)が開通した栃木県宇都宮市に位置している。当施設は令和元年8月に在宅強化型を取得。その後、令和4年4月より超強化型老健への転換に挑戦し超強化型を取得。令和7年6月度の在宅療養支援等指標では、在宅復帰率20点、ベッド回転率20点、入所前後訪問指導割合10点、退所前後訪問指導割合10点、居宅サービス5点、リハビリ職員の配置割合5点、支援相談員配置割合5点、要介護4または5の入所者割合3点、喀痰吸引の実施割合3点で81点と超強化型取得後初めての80点越えとなり、現在も超強化型の維持ができている。又超強化型老健の目的は、多職種連携により在宅復帰支援を強化することであり、当施設でも在宅復帰率やベッド回転率の向上に努めている。当施設の取り組みと具体的事例を紹介し、多職種連携の重要性を共有するとともにその活動を報告する。
【目的】
超強化型老健の維持に向けた具体的な取り組みと、在宅復帰を実現した事例を通じて、支援体制とその効果を明らかにすることを目的とする。
【方法】
当施設では、以下の5つの柱に基づいて支援を実施している。
1.多職種連携と役割の明確化
医師、看護師、介護職、リハビリ職、相談員、管理栄養士、ケアマネジャーなどが連携し、専門的視点に基づきカンファレンスを実施。特に入退所時には居宅ケアマネジャーや地域の医療・介護資源との連携を重視し、入所から退所までの継続した支援体制を構築している。
2.リハビリの充実と家族支援
身体機能の改善に加え、自宅環境に即した訓練や介護指導を実施。退所前後の訪問で住環境を確認し、必要に応じて住宅改修や福祉用具の提案を行うなど、包括的な支援を行っている。
3.利用者家族へ在宅復帰の早期意識形成
入所前の面談時に在宅復帰支援の方針を丁寧に説明し、本人・家族と今後の方向性を共有。入所から3か月以内には面談を行い、リハ室、各フロアとも情報を共有。家族に来所して頂き、利用者本人や家族が、どの程度ADLの向上が見られれば在宅に戻れるか、現状報告や成果を報告し、意向を確認しながら在宅にむけた支援を行っている。また、復帰可能性や支援方針を検討する。
4.不安要素への対応と個別支援
本人・家族の不安や困りごとを丁寧に把握し、それに応じた福祉サービスや環境調整を提案。必要に応じて本人も同行した自宅訪問を行い、現実的な在宅生活をイメージできるよう支援する。在宅が困難な場合は、連携しているグループホームや小規模多機能施設(4施設)、その他有料老人ホーム、サ高住などその方のニーズに合わせた施設を選択していただき各施設と交渉することで期間在宅に結びつけている。
5.業務効率化と職員の意識統一
「在宅復帰・在宅療養支援機能に対する評価表」により進捗を可視化。週1回のスタッフ会議で周知徹底し効率的に支援を進める工夫を行っている。また、毎月ベッド回転率を職員全体で共有し、在宅復帰への共通意識を醸成している。
【事例紹介】
A氏80代男性(要介護3)
診断名:アルツハイマー型認知症、高血圧症、腰部脊柱管狭窄症、不眠症、便秘症
既往:過活動膀胱、前立腺肥大症、虫垂炎(手術)、白内障(両眼手術)、膝関節手術
下肢筋力低下によりリハビリ目的に入所された。本人は「自分はできる」と強く思い込んでおり、入所以前は通所リハやショートステイをほとんど利用ししていない。
入所後、時間の経過と共に帰宅願望が増し、他利用者への苛立ちが見られ、いつ帰宅できるのかと職員に詰め寄る様子も見られた。一方、妻は在宅介護に限界を感じていたが、本人に配慮し、本音を言い出せずにいた。この情報を居宅ケアマネジャーが共有してくれたことから、施設では本人と家族双方に寄り添った支援計画を立案した。リハビリ職と相談員が連携して自宅訪問を行い、生活動線や必要な福祉サービスを確認。また、施設内では自宅の砂利道に似た環境での歩行訓練を実施した。これにより、本人は「支援を受けることで在宅生活が維持できる」ことを理解し、福祉サービスの利用に前向きになった。妻も支援体制の整備により在宅生活への安心感を得ることができ、無事に在宅復帰が実現した。
【考察】
この事例から、在宅復帰を妨げるのは身体機能だけでなく、本人や家族の心理的な背景や価値観も大きく影響していることがわかる。特に、自立への強い意識を持つ高齢者に対しては、「支援=自立を失うことではない」と伝えることが重要である。また、家族の「言えない本音」には、第三者が関わることが必要不可欠であり、多職種の連携がその支えとなったのではないかと考える。
本事例では、本人同行の訪問や具体的な訓練により、本人が現実を受け入れ、在宅生活を継続するために必要なサービスを利用した。それにより家族も安心して在宅生活を選択できた。今後もこうした取り組みを積み重ねながら、業務の効率化と職員間の意識共有を図り、超強化型老健としての役割を果たしていきたい。
【結語】
認定取得当初は、現場から「入退所人数が多く大変」との声が上がるなど戸惑いもあった。しかし、超強化型を維持することでハード面の整備(低床ベッド・センサーマット・クッションマット等)が進み、転倒防止と夜間巡視業務の効率化により介護の負担軽減にもつながっている。こうした具体的な改善を通じて現場の理解も進み、ケア品質の向上と働きやすい職場形成へとつながり、現在では施設全体が「超強化型への積極的な挑戦と維持」という目標に向かい、同じ方向を向いて取り組める環境が整ってきている。しかし、今後もさらに多職種間の情報共有や信頼関係の構築を念頭に置きながら、それらを施設全体に浸透させていきたいと考える。